箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~

ゆさま

文字の大きさ
上 下
9 / 119
ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?

9.中ボス戦

しおりを挟む
 桜花さんに一通り刀の振り方の基本を教わったところで、お腹が空いてきたのでそろそろ昼食にしようと聞いてみた。

「そうね。私もお腹が空いてきたかも」

 辺りを見回すと、近くに座るのに丁度いいサイズの岩があったので、俺は「あそこに座ろうか」と、その岩を指差した後、その岩の端っこに座った。

 すると桜花さんは俺と肩が触れそうなほど近くに座った。俺の顔の真横に桜花さんの顔がある。心拍数が上がり体温も上がっていくような気がした。

「柳津君、顔赤いよ。熱でもあるんじゃない?」

「そ、そうかな? 別になんともないよ」

 好きな女の子が間近に座ったからだよ。などと言えるわけもなく笑顔を作って誤魔化した。

 俺はおにぎりとお茶をアイテムストレージから取り出して食べた。桜花さんはサンドイッチと紅茶を買ってきていた。

 食事中、桜花さんの剣術に対する熱のこもった話を聞く。教室では凛としたクールな印象だったが実は熱い人物のようだ。

 フレンド登録もしておいた。これで連絡がつくようになった。フレンドリストには鳴海久奈と桜花結月の二人の女の子の名前がある。
 現実世界の俺のスマホには、女の子の電話番号などあるわけも無かったが、この世界では二人の美少女と通話もできるしチャットもできるんだ。

 体の奥底の方からジーンと何かがこみ上げてくる。あぁ、幸せだ……。


 その後二人で山岳地帯を進んでいくとモンスターが現れたので、先ほど桜花さんに指導された事を意識して刀を振るいモンスターを倒した。その様子を桜花さんはしっかりと見てくれていたようだ。

「教わったことを忠実にやろうとして動きが硬くなってるよ。少しリラックスしてやってみて」

 桜花さんが笑顔で俺の肩をポンと叩く。桜花さんの笑顔が眩しい、また触られちゃった。自分の心臓の音がやかましいくらいに聞こえている。
 それにしても、最初よりも口調が親しみのある感じに変わってきている……気がするだけかな?

 しばらく進むと開けた場所があり、奥に大きな扉が見えた。扉の前には、高さ2mくらいの岩の人形が立っていた。

 あれが中ボスか。アシストによる強さ判定は、やや強い。……やってみるか。

「柳津君、まずは私が切り込んでみるね」

「了解。無理しないでね?」

「分かってる、負ける気はしない」

 桜花さんは、刀を鞘におさめて腰を下げ構える。そして勢いよく岩人形に突進する。

 この世界の強さは、素の身体能力と魂力の比例だと音声アシストが言ってたな。
 幼いころから鍛錬していた桜花さんは、素の力で俺とは大きく差があるのだろう。圧倒的なスピードでモンスターに迫る。

 岩人形も見た目のイメージに反して、それなりに素早い。両腕をブンブン振り回し桜花さんを攻撃する。

 桜花さんはすべての攻撃を紙一重でかわし、抜刀し岩人形を切り刻み、納刀し間合いを取る。

 何度かそれを繰り返すとついに岩人形が倒れた。

「これでとどめよ」と桜花さんが刀を振り上げたその時、岩人形は数発の石のつぶてを放った。

 あれは、魔法なのか!?
 
 瞬時に反応した桜花さんは、つぶての多くを刀で叩き落したが、防ぎきれずに頭と腹に命中して、吹っ飛ばされてしまった。

 俺は思わず大声で、桜花さんの名を呼んだ。そして岩人形に向かって手のひらを向け「火炎」と叫ぶ。岩人形は、俺の手のひらから放たれた炎に包まれ消滅した。

 音声アシストが聞こえる。

「ロックドールを倒しました10000Cr獲得。魂力が120増化しました」

 今はそんなことよりも桜花さんの安否だ。倒れている桜花さんに駆け寄り、上半身を抱き起こし声をかける。

「桜花さん大丈夫? ケガしてない?」

「イタタ、あれ? 別にたいして痛くない……かな?」

 桜花さんは不思議そうに首をかしげている。

 俺は桜花さんを観察したが、特ににどこもケガをしていないようだった。でもHPは半分以上減ってる。そういえば最初の説明でHPは生命力ではなく、体を覆う防御フィールドの耐久値と言っていたな。

 俺はインターフェースを操作し、HP回復アイテムを使用して桜花さんのHPを回復させた。

「アリガト、ゴメンちょっと油断した」

「でも、よかったよ桜花さんの綺麗な顔がケガしなくて」

 俺はつい本音をポロリと漏らしてしまった。

 すると桜花さんは一瞬目を見開いた後、下を向いてしまった。しまった、また本音を口にしてしまった。慌てて俺は話題を変える。

「今日はもう帰ろうか。桜花さん立てる?」

「え、ええ……」

 ゲートに向かって歩きながら先ほどの事を思い出す。腕には桜花さんの体温と柔らかな感触が残っている。
 間近で桜花さんの顔を見つめてしまった。綺麗だった、可愛かった、まつ毛長かった。自分の心臓が高速で動いているのを感じる。

 ふいに桜花さんが声を掛けてきた。

「柳津君てさぁ、教室で私の事を見ていることがよくあったよね?」

 うぐっ、バレていたのか。俺はギョッとして桜花さんを見る。

「あ、別に怒っているわけじゃないよ。ただ、他の男子達は、……胸とか脚とかをジロジロ見てたけど、柳津君は私の髪を見ていたの? そういう視線って結構わかるんだよね」

「えと、それはそのー、なんというか……」 

 俺が返答に困ってうつむいていると、スッと近づき少しかがむような姿勢で俺に視線を合わせてきた。ヤバい可愛い。そしてまた、俺はぽろっと言葉を漏らしてしまった。

「似てたんだ」

「誰に?」

「中学の時好きだった子に」

「付き合ってたの?」

「いや、卒業式の日に告白してフられた」

「フフッそうなんだ。その子は見る目ないね」

「えっ、なんて?」

「何でもない」

 桜花さんは何故か機嫌が良さそうに、ニコニコと笑っている。その時、鳴海さんから着信があった。

「柳津君、今どこにいるの? 夜は一緒に食べよー」

「分かった。もうすぐセンターに戻れるから戻ったら連絡するよ」

 今度はきちんと通話終了になっていることを確認して、視界のインターフェースから桜花さんに視線を移すと「友達から?」と聞かれた。

「ああ、夜は一緒に食べようって誘い」

「私も一緒に行ってもいい?」

 俺がなんとなく言葉に詰まっていると、桜花さんは若干上目使いで顔を寄せてくる。

「ダメなの?」

「もちろん、いいよ」

 今度は即答してしまった。俺は桜花さんの顔を間近で見て、再び心臓が高速で動いているのを感じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

処理中です...