オッサンですがTS転生してしまったので異世界生活を楽しもうと思います。

ゆさま

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ガノタの鼓動

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 目的の村に到着し、入口の門番をしている人に冒険者であることを伝えると、二人の門番のうち一人が村長さんを呼びに行った。少し待つと、やせ細った小柄なお爺さんが入口まで来た。

「私がこのパサド村の村長です。あなた方がゴブリン討伐依頼を受けた冒険者……? 若い娘さん二人とは……」

 顔をしかめる村長さん。それもそうだよな。リンゼと俺は飛び切りの美少女だから、まともに戦えるなんて思えんわな……。俺は力を示すために、村の外の適当な空き地に向かってビームライフルを撃った。着弾地点はごっそりと抉れて、巻き上げられた土や小石の破片がパラパラと地面に落ちる。

「これは私の魔法のごく一部です。ゴブリンごとき、何匹いても私たちの敵ではありませんよ」

 俺がニッコリ微笑むと、村長さんは目を丸くして呆然としているようだった。

「……あ、ああ。すいませんでした! あなたがたのような見目麗しい若い女性が、これほど強力な魔法を扱えるとは思ってもみなかったもので……」

 村長さんはペコペコ頭を下げる。見た目で舐めらるのは仕方ないので気にしない。だが、俺たちは力を認められたのか、村長さんの家まで案内された。中に入ると、数人の村人が座って待っていて、俺達も勧められるまま席に着く。

「奴らは日が暮れるとやってきます。それも数日おきに……」

 とりあえず、彼等から話を聞くことにした。ゴブリンどもは陽動役と略奪役の複数のグループに分かれて動いているので、戦える者を分散させる必要があるとのことだ。村に男衆はいるが、戦いに慣れている者はそれほど多くはないので、対策に苦慮しているという。そこで、俺達には村の男衆と手分けして、ゴブリン対策に当たって欲しいとお願いされた。うーん、殲滅任務だと思って来たんだけどなぁ……。

 俺のニュータイプとファンネルを使えば、20やそこらのゴブリンごとき、ここに座ったままでも殲滅できるだろう。だがそれでは、やる気になっているリンゼに悪い。ここは村長さんのお願いを素直に聞いて、村の南東部の防衛を任されることにした。



 * * *



 村の若い男二人に案内されて、村の南東部に来た。ゴブリンが現れるまでやることもなく暇だが、近くに人がいる為、リンゼとイチャつくわけにもいかない。倒木に腰かけリンゼと話し込んでいると、少し離れた所にいる男二人からチラチラと視線を感じる。まぁ、気持ちは分かる。俺達のようなとてつもない美少女がいれば、前世の俺ならイヤらしい目でガン見していたことだろう。

 減るもんでもないし、ちょっといいもの見せてやるか。俺は閉じている脚を少し緩めて隙を作ってみた。すると男二人から、今まで以上に刺さるような視線が、俺のミニスカートの裾に集中するのを感じた。

 彼らの今夜のオカズは、俺のライトグリーンのパンツだろうな。そう思うとなぜか背筋にゾクゾク走るものがあった。

「ちょっとバランセ、パンツ見られてるよ。脚閉じなさい」

 リンゼに小声で注意されて、俺は慌てて脚を閉じる。リンゼは機嫌が悪そうに「ホントにバランセは無防備なんだから」と膨れるので、俺はアイテムボックスから串焼きを二本取り出して、一本をリンゼに差し出す。

「お腹空いてない? 食べよ」

「もう、仕方ないなぁ……」

 まだ何か言いたそうだったが、串焼きを受け取ってかぶりつくリンゼ。カワイイ。

 俺も串焼きに食いつく。アイテムボックスに入れておいた串焼きは、焼き立てと変わらず熱々だった。入れている物は時間が経過しないのか。このスキルも相当チートスキルだよな。

 そうこうしているうちに、陽が暮れて辺りは暗くなってきた。そろそろかなぁ……?

 その時、ピキーンと俺の頭の中で閃いた。この嫌な感じ……、ゴブリンどもめ現れたな。

 ゴブリンどもは、村を包囲するように迫っているのが分かる。数はかなり多く、20どころではない。それにプレッシャーの大きい奴も混じっているな……。事前情報よりも敵の戦力は多いようだ。俺にとっては誤差の範囲だが。

「リンゼ、ゴブリンたちが来たよ。約二分後にそこの塀を乗り越えてくる三匹を任せる。私は村を包囲している奴らを蹴散らすね」

 俺のガノタ系魔法による『ゼロ』の予測を伝えると、リンゼは顔を引き締めて「了解!」と返す。そして俺は「いけ! ファンネルたちっ!」と叫んだ。だって叫びたかったし。すると、10基発生した三角錐の物体が次々と大空に舞い、村を包囲しているゴブリンめがけて飛んでいく。俺は意識を集中させて、頭の中に浮かぶ敵の姿を、片っ端から撃ち殺していった。

 一方で、リンゼは『天駆』と『地膂』をうまく使って長い剣を振り回し、三匹のゴブリンを難なく倒していた。えらいえらい。

「リンゼ、怪我してない?」

「平気だって! バランセは心配性なんだから!」

 そりゃ心配だよ。俺のリンゼにかすり傷一つでもつけやがったら、この世界のゴブリンの巣穴すべてにアトミックバズーカぶち込んで回るからな。

 それはさておき、村を包囲している多数のゴブリンは俺のファンネルであらかた倒した。ん? 二匹だけ生き残っているな。それも段違いにプレッシャーの大きな奴が。ファンネルの攻撃を躱し続けるとは、どれほどなのか興味が湧いたので、俺はファンネルをひっこめた。

 その二匹は猛烈な速度でこっちに向かっているのを感じる。ホブやシャーマンよりもはるかに強いプレッシャーの持ち主だ。俺の存在に気が付いて潰しに来たのか。いいだろう相手になってやる。

「リンゼ、30秒後そこの塀を破壊して、上位種が二匹ここに来る。悪いけど下がって見ててくれる?」

「え! 上位種!?」 

「大丈夫、楽勝だよ。リンゼにだって指一本触れさせない」

「分かった。バランセ! 無茶しないでね!」

 リンゼはそう言って、俺の後方にある建物まで下がる。俺はプレッシャーが近づくのを感じながら、塀の方を見ていた。

 『ゼロ』の予測通り、30秒後に雄叫びと共に塀は破壊され、身長3mはある筋肉ムキムキなゴブリンが姿を見せた。手には一丁前に巨大な戦斧を持っている。ロードとかチャンピオンとかだろうか? 見るからに強そうだ。

 俺の姿を見た二匹の上位種はニターッと笑うと、一匹は戦斧の先端を地面に降ろし、見物を決め込んだようだ。俺が可憐な美少女だからって油断してるな? こちらとしては同時に来ても構わないのだが。

 もう一匹は巨大な戦斧を両手で構えて、俺に切りかかってきた。俺は手でピストルを形作ってゴブリンに向け、ビームライフルを撃つ。するとゴブリンはビームライフルを戦斧で弾いた。ほう、やるな。続いて二発目、またも戦斧で弾くが衝撃に耐えきれず体勢が崩れる。三発目、胴体に命中し悲鳴を上げる。ふーん、直撃しても死なないのか。四発目、同じところに命中。貫通して穴が開いた。ここまでか。

 一匹が魔石に変わると、見物していた方は空を仰いで大声で吠えた。ああうるさい。ゴブリンは地面を蹴って急接近すると戦斧を横薙ぎに振る。だがそれも見えている。俺が冷静にビームシールドで受けてやると、ゴブリンは巨大な戦斧を軽々と振り回して俺に連撃を浴びせる。俺は、そのすべてをビームシールドで捌いてやった。

 どうやらこいつは、俺にビームライフルを撃たせないようにしているつもりのようだ。だが甘いな。俺はどこに斧を打ち込まれるのか完璧に先読みできるうえに、ビームシールドはこいつの斧ではびくともしない。俺がその気になればいつでも撃てる。

 勢いよく振り下ろされる戦斧を、ビームシールドで受けると同時にビームライフルを撃ち込む。ゴブリンは殺気を感知したのか、素早く戦斧でビームライフルを防ぎ、同時に後ろに跳んで衝撃を逃がす。こいつ、かなりできるな……。だがここまでだ。

 俺は指先をゴブリンに向け、バスターライフルをイメージして、心の中でトリガーを引いた。

 キュゥゥゥと光が俺の指先に収束した後、轟音が響き閃光が一直線に突き抜ける。

 おおっ、なんて威力だ。出力を30%に抑えておいて良かった。それでもここから見える範囲の射線は幅20mほど森と地面が抉れて消滅していた。筋肉ムキムキゴブリンは魔石になって地面に転がっている。

「バランセ凄い!!」 

 離れて見ていたリンゼが、後ろから俺に抱き着く。おっぱいの柔らかさと温もりに癒されるが、俺は油断せずに周囲の気配を探ってみる。ふむ、周囲にゴブリンの気配はもう無いな。

 魔石を拾ってアイテムボックスに収納し終わると、村人たちが大勢来て歓声を上げた。村人に囲まれて口々に褒められるので少々照れくさい。村長さんは俺の前まで来て深々と頭を下げた。

「偉大なる魔女バランセ様。この度は村を救って頂きありがとうございました」

 ちょ、偉大な魔女ってなんだよ? 戸惑う俺に構う事もなく、村長さんは網に入れられた沢山の魔石を俺に差し出す。どうやら俺がファンネルで殺したゴブリンの魔石を、村人たちが回収してきてくれたみたいだ。

「冒険者ギルトに依頼していたゴブリンの数を、はるかに上回るゴブリンの大群でした。そのうえ危険な上位種までいて……。本来なら、追加報酬を支払わなければいけない所なのですが、この村に蓄えは無く、我々も困窮しています。なので、後日改めて追加分をお支払いすることをお許しください」

 冷や汗をかいて俺の顔色を窺う村長さん。俺としては魔石もたっぷり手に入ったことだし、村人から搾り取るのも悪い気がする。

「追加はいりませんよ。そうだ、私が壊した塀と相殺という事にしましょう。村の復旧に注力してください」

 俺がニッコリ微笑んで言うと、村長さんはホッと胸をなでおろした。まぁ塀を壊したのはゴブリンだけどな。

 その日は村長さんの家に泊めてもらった。一応リンゼと二人きりの部屋を貸してもらえたが、別々のベッドに横になった。キスなんてしようものなら、一気に燃え上がって止められなくなるのは二人とも良く分かっている。村長さんの家で大声出してイチャつくわけにはいかないので、ここは我慢だ。

 翌朝、村人総出で見送られ、俺達は帰路につく。

 それにしても、この村に来たのが俺じゃなかったら、あの村滅んでいたんじゃないか。さすがにそれはうぬぼれすぎか。俺くらいの強さの冒険者はもしかしたらゴロゴロいるかもしれんし。

 なにはともあれ依頼完了だ。冒険者ギルドで達成報告して美味しいもの食べよう!



 * * *



 依頼達成報告をするため冒険者ギルド二階に来た。いつもとはちょっと違う雰囲気で、俺に頭を下げて迎える受付のお姉さん。

「おかえりなさいませ。大魔女バランセ様」

 受付のお姉さんまでそんなこと言ってる? 面食らった俺は「なんですか? それ?」と溢した。

「パサドの村の村長さんから、魔映鏡で報告が届いていますよ」

 想定していたよりもはるかに多くのゴブリンが攻めてきた事、上位種がいた事、俺が使い魔を使ってゴブリンどもを蹴散らしたこと、上位種を閃光の魔法で倒したことなどが既にギルドに報告されていた。なんて便利な世の中だ……。

 魔映鏡には俺の活躍を盛りに盛った報告が書かれている。あの村長さんめ……。

 俺は苦笑いしつつ、魔石をカウンターの上にゴロゴロ取り出す。多数の通常のゴブリンと、数個のホブとシャーマンの魔石に混じって大きな魔石が二つ。その大きな魔石を見て、受付のお姉さんはさらに驚いて声をあげた。

「ヴァラー二匹も一人で倒したんですか!?」

「ヴァラー?」

「ヴァラーとはゴブリンの上位種でも危険度が高く、単体の推奨討伐レベルは60以上とされています。ベテランでも二体同時に相手するのはかなり厳しい相手のはずです。これだけでも信じられない戦果ですが、これほどのゴブリンの大群を、たった二人で全滅させるなんて」

 あの程度で危険度が高いのか。これならキングとか出ても余裕かもな。でも依頼内容は20匹ぐらいで、上位種はいないって依頼書にはあったんだったよな……。

「へー。でもそんな強いのがいるなんて、依頼書には無かったですよね? 数も50匹ぐらいはいたし」
 
「申し訳ありません! これは異常な事態です。本来この規模のゴブリンの大群の対処は冒険者ではなく、国の騎士団、もしくは勇者パーティーの管轄になります。上に報告し対策を急ぎます」

 ちょっと青ざめて謝る受付のお姉さん。責めているつもりは無かったんだよ……なんか悪かったなぁ。

 俺達は依頼達成報酬と魔石の報酬を受け取って、冒険者ギルドを後にした。

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