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少年Aは今日も同じことを言う。

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「ようこそ!ここはペティット村です!」

魔王が世界を征服してかれこれ380年。
世界を救うために勇者は世界を奔走し、今日も目の前に現れる。
話しかけた勇者は素通り、街のお店をぐるりと回って最後の身支度をする。
剣、盾、鎧、道具、素敵な装備は揃えられましたか?
新たな勇者は魔王討伐の道を目指す。
この勇者はどこまで行くのだろう。
次の村まで?四天王を倒すまで?魔王を倒すまで?
でもこの村は最後の四天王が必ず焼き払うから最後まではいられないね。
そうなると、きっとまた新しい僕が生まれるんだろうな。


物心ついた時から世界は闇に染まっていた。
紫色の曇天、荒廃した大地、溢れ返った魔物……それでも世界に広がる街には人間が細々と住んでいた。
16歳の誕生日、僕は生まれ育った国の王様から旅に出るよう言われた。

「このままでは我々人間は死に絶えてしまう。勇者よ、世界を旅し魔王を倒せ」

神託、啓示、断る理由はない。
何もわからない僕はその言葉を真っ直ぐに受け止め、武器を手に握るしかなかった。
そして国を出て、たくさんの街や村を巡って道具を揃えながら魔物と戦う日々。
人々の困りごとを聞きながら歩む日々。
これこそが勇者、そして最後に魔王を倒す存在なのだと思った。

「ようこそ!ここはペティット村です!」

次の行き先を教えてくれないから、新しい街に来た時はこの存在がとても助かるんだ。
そう思っていたのにね。
僕は何も知らなかった。
負けた勇者がどうなるかなんて。
まさか同じ言葉しか話せず、ずっと村の入口に立たされるなんて思っても見ないだろう?
しかもまさか、勇者が一番最初に立ち寄る村だなんてさ。
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