神命迷宮 -東京Dead End-

雪鐘

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41.変わらない未来

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6月の末、やっと分倍河原さんが帰って来た。
篠崎の用事を終えて戻ってきたにしては遅すぎる。
謎の噂の話はどんどん膨れ上がって、術士の皆はその噂に振り回されるように次第に疲れが見えてきていた。
そんな中で、帰ってきた分倍河原さんは口を開いた。

「お前ら待たせたな。だが篠崎での用が終わったからといって、そのまま帰って来た訳じゃないぞ。
向こうと連携してこっちでもある程度調査をしつつ、噂の動きを観測することを既に決めている。元々噂については俺も正也も九州の地で既に聞いていたんだ。その時は根も葉もない噂だと思ったが、どうやら事実確認と本格的な調査が必要になるらしい。
妖の行動傾向調査と出来れば鷲埜芽わしのめとももう一度話をせにゃならんなと感じている。これから忙しくなるだろう、相手は未曾有の危機とまでは言えんが妖が絡んでいる、気を引き締めろ」
「「はい!」」

分倍河原さんの言葉はいつもより重たくて、何かを憂いているようにも見えた。
宗家の分倍河原さんそんなに心配するような事が起こっているのだと、皆もその言葉で表情を変えた。
何処にも不安だとか心配だとか、嫌がったりとかなくて、皆が覚悟を持った目をしている。
今までそこそこ戦いながらも楽しんでいたような空気は消えて、皆まるで戦士みたいな、兵みたいな、そんな表情になった。
ちょっと、正也君にも似てるかも。
……私は余裕のないこの雰囲気の方が、不安だ…。



7月に入りました。
妖の数は未だに上昇傾向です。
学校なんてもう頭にないくらい仕事が多くて、毎日術士の力が切れちゃいます。
皆も疲れてます。
こんなので大丈夫?私達、生きていける?
口には出さないけどそんな疑問ばかり頭に浮かんじゃう。
こんなのじゃ駄目なのに…。
鷲埜芽わしのめさんには連絡取れなくなってたみたいだし、やっぱり不安が大きいな…。
ごめんね、私…怖いよ。
妖じゃなくて、皆が。
あんなに楽しかった日常が、仲間に入れてもらえた場所が、皆で頑張っていこうって言えた空間が崩れていっちゃうの。
皆必死になって戦うけど、私もそうだけど、何でだろう…誰かが欠けちゃう不安すらあるんだ。
嫌だよ…誰も欠けて欲しくない。
今までの毎日に戻りたい。
ただ皆で妖退治をしながら楽しんでたあの頃に戻りたい。
……無理な願いなのは分かってる。
だから今はせめて…皆の無事を祈らせて…。
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