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38.さようなら
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5月10日。
明日でゴールデンウィークが終わる頃、珍しく術士事務所に居たら突然分倍河原さんが事務所にやってきた。
「正也悪ぃ、流石に駄目だ」
「何が?」
「師隼から連絡があった。『急いで正也を返せ』って」
「……口調的に、以前から言われてそう」
「良く分かったな。これで3回目だ」
「……」「……」「……」
分倍河原さんの衝撃発言により、丁度事務所に居た私と快斗さんと正也さんで黙り込む。
いつもの事と言えばいつもの事だけど、快斗さんは頭を抱えていた。
「……それで、師隼はなんて?」
「こっちででかい案件抱えてる。正也の力も必要になるから早く返せ…って言われた。よし、今から篠崎に帰るか!」
「はっ!?」「帰っちゃうの!?」
分倍河原さんはいつも唐突だ。
帰らせるのも大切だけど、こんなにもあっさりと返しちゃうの!?
「えっと……うす」
応援で連れられてる身だから仕方ないけど、正也君は驚いた表情で小さく返事を返す。
なんだか可哀想にしか見えない。
---
それから4時間程しただろうか。
正也君は本当に分倍河原さんに連れられて帰ってしまった。
確か岐阜の方面だった気がするし、高速とか使って5時間……まだ着けそうにないか。
「……正也の飯食ってるとこ、もっと見たかったな」
静かな空間で突然聞こえたのは、快斗さんの独り言。
それがあまりにも面白くて、私は笑ってしまった。
「突然どうしたの?確かにあんなに食べてるの面白かったけど」
「いや、なんだか今になって帰ったんだなぁってしみじみ思っちゃってさ。ちょっとだけって分かってても、やっぱ寂しいモンは寂しいよ」
「そう、だね…。2か月近く居たもんねぇ…」
殆ど駆けずり回る毎日だった。
私だけじゃなくって、快斗さんや優香ちゃんも倒れたりなんだりしてたのに正也君はあんまりそんな素振りは見えなくて、実際見てて思ったけどすごく強い人だった。
居てくれるだけでも心強いし、戦いに慣れてる人だった。
たった1ヶ月半なのに、こんなにもあっさりいなくなっちゃうなんて……――
「――やべぇ、ただいま!!!」
エレベーターが開いて大きな声で一言。
それは熊のように大きな咆哮のような声だった。
そんな声を出せる人は一人しか知らない。
当然我らの主である、分倍河原朔だった。
その後ろには、何処か疲れた顔の正也君がいる。
「え」「え?」
流石にこの状況は飲み込めない。
だってこの4時間、この部屋はずっと正也君の喪失感に浸っていたのだから。
明日でゴールデンウィークが終わる頃、珍しく術士事務所に居たら突然分倍河原さんが事務所にやってきた。
「正也悪ぃ、流石に駄目だ」
「何が?」
「師隼から連絡があった。『急いで正也を返せ』って」
「……口調的に、以前から言われてそう」
「良く分かったな。これで3回目だ」
「……」「……」「……」
分倍河原さんの衝撃発言により、丁度事務所に居た私と快斗さんと正也さんで黙り込む。
いつもの事と言えばいつもの事だけど、快斗さんは頭を抱えていた。
「……それで、師隼はなんて?」
「こっちででかい案件抱えてる。正也の力も必要になるから早く返せ…って言われた。よし、今から篠崎に帰るか!」
「はっ!?」「帰っちゃうの!?」
分倍河原さんはいつも唐突だ。
帰らせるのも大切だけど、こんなにもあっさりと返しちゃうの!?
「えっと……うす」
応援で連れられてる身だから仕方ないけど、正也君は驚いた表情で小さく返事を返す。
なんだか可哀想にしか見えない。
---
それから4時間程しただろうか。
正也君は本当に分倍河原さんに連れられて帰ってしまった。
確か岐阜の方面だった気がするし、高速とか使って5時間……まだ着けそうにないか。
「……正也の飯食ってるとこ、もっと見たかったな」
静かな空間で突然聞こえたのは、快斗さんの独り言。
それがあまりにも面白くて、私は笑ってしまった。
「突然どうしたの?確かにあんなに食べてるの面白かったけど」
「いや、なんだか今になって帰ったんだなぁってしみじみ思っちゃってさ。ちょっとだけって分かってても、やっぱ寂しいモンは寂しいよ」
「そう、だね…。2か月近く居たもんねぇ…」
殆ど駆けずり回る毎日だった。
私だけじゃなくって、快斗さんや優香ちゃんも倒れたりなんだりしてたのに正也君はあんまりそんな素振りは見えなくて、実際見てて思ったけどすごく強い人だった。
居てくれるだけでも心強いし、戦いに慣れてる人だった。
たった1ヶ月半なのに、こんなにもあっさりいなくなっちゃうなんて……――
「――やべぇ、ただいま!!!」
エレベーターが開いて大きな声で一言。
それは熊のように大きな咆哮のような声だった。
そんな声を出せる人は一人しか知らない。
当然我らの主である、分倍河原朔だった。
その後ろには、何処か疲れた顔の正也君がいる。
「え」「え?」
流石にこの状況は飲み込めない。
だってこの4時間、この部屋はずっと正也君の喪失感に浸っていたのだから。
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