神命迷宮 -東京Dead End-

雪鐘

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34.えっ、嘘でしょ?

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「お、正也!悪いな、自力で来てもらって!」
「オッサンが来いやぁ!!」

皆の予想通り、分倍河原さんは最上階の自分の机で既にくつろいでいた。
そんなだから真っ先にツッコミを入れたのは快斗さんだった。

「……只今戻りまし…た?」
「うん、戻った訳じゃねーよな。寧ろオッサンが自分でここへ案内しろ」

快斗さんはつくづく面倒見が良い人だなって思う。
首を傾げる置野さんにうんうんと頷きながら毒づいている。

「悪ぃ悪ぃ。わざわざあんがとな、快斗。ところで…今は快斗と光だけか?」

頭を掻いてガハハ笑いをする分倍河原さんだけど…そうなんです。
一緒にエレベーターには乗ったけど三鈴君と優香ちゃんは「疲れたから休むぅ…」と言って事務所で降り、「俺は用事あるから」と明澄さんは研究所の方へ降りて行った。
「皆どこか行くの?」って置野さんが不思議がってたので、多分後で案内する事になるんだろうな。
寧ろ置野さんはこれからどこで寝泊りするんだろう。

「おー、レミィとラムさんは事務所、明澄は研究所に行ったよ」
「そうか。……ところでお前ら、

何度も頷く分倍河原さん。
だけど次の瞬間、じっと奥底を覗くような目が自分を見ていた。
正確には、私と快斗さんだ。
その質問の意味は……一体何だろう。

「えっ?何、が…ですか?」
「おいおい、分かるだろう?お前らはんじゃないのか?」

訳も分からず聞き返すと分倍河原さんの視線は一瞬だけ隣へ流れた。
私の隣と言えば……私と快斗さんに挟まれている、置野さんだ。

「――あっ、えと…とっても強かったです…!大きな妖が一瞬で居なくなっちゃって…」
「……一目で強い術士だって分かりました。体格も大きいし、これぐらいにならないとダメなんすかねぇ?」

私と快斗さんの答えに分倍河原さんは目を丸くする。
そしてくすくすと小さく震えながら笑い出して、不思議そうな表情で口を開いた。

「何を言ってるんだ?そいつはまだ16、お前らの年下だぞ」

一瞬何を言われたか分からなかった。
思わず二人で置野さんをじっと見て、声を上げてしまった。

「……えっ!?」「そ、そうなの!?」
「えっと……そう」

背も大きくって体もしっかりしてて、分倍河原さんとあまり変わらないくらいなのに16?
まだ高校生??
突き付けられた現実は大きくて、驚きが止まらない。
まず見た目じゃ分からなかったけど年下だったんだ…多分180cmはあるし全然分からなかった…!

「めっちゃ驚かれてんな、お前…」
「……そうっすね」
「いや、だって…めっちゃでかいし…背とか」

あんぐりと口を開けて置野さんを指差す快斗さん。
ちょっと失礼だけど同じことを思ってたみたいでつい頷いてしまった。

「応援に行く前はまだそこまでじゃなかったぞ。どれぐらいだっけ?」
「170…?今は180超えたとこ…?」
「俺が193、目線の高さから考えたらそんなもんだな、うん。本当はすぐ篠崎に返すつもりだったんだが段々離れちまった。でもおかげで十分と言えるほど育っただろ」
「そ、育っただろって…」

分倍河原さんはにかっと笑顔を見せる。
こんな時は突飛な事を言う時だ。
私は応援要請の分倍河原さんを思い出していた。

「今丁度正也が居るんだ。今はお前らだけだが全員に言うぞ。今の内に正也にしっかりしごいて貰え」

これが分倍河原さんの思い付きなのは分かってた。
やっぱり…そうなるよね…。
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