神命迷宮 -東京Dead End-

雪鐘

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31.会えちゃった!?

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虎型の妖が霧散して、男の人が先が鋭くて重たそうな槍を片付ける。
自分の背と同じくらいの槍を軽々と扱える程がっしりとした体をしてて、一目で絶対強い人だって分かった。
私達4人はそれくらい突然現れた土を扱う術士に驚いていたし、じっと見ていたし、言葉を失ってた。
誰もが動けなくなってる状況で、最初に声を掛けたのは男の人の方だ。

「……皆、ここの術士?」
「……え?あ、うん、そう…」

驚きながらもこくこくと何度も頷きながら答えるのは快斗さんだ。
丸めた背中をやっと真っ直ぐにして目の前に来たけど、本当におっきい…私、肩越えてないかも…!
それくらいに大きな人はやけにだるそうに口を開く。

「んー…この辺り、何処か食べるところってある…?お腹空いた…」

男の人はお腹を押さえて身を屈ませてる……けど、食べるところ、めっちゃある。
寧ろ通りにいっぱい見えてる。
見えてない訳じゃ…ないよね?うん??

「……快斗、俺も腹減った。いつものとこ連れてけよ」
「えっ!?あ、ああ、あそこ?よ、よし!皆で行こうぜ」

お腹を空かせた人の前で機転を利かせて(?)明澄さんが言い出し、快斗さんが話に乗る。
あそこって…多分皆で行ってるファミレスだよね?
背の高い大きな人を連れて快斗さんと明澄さん、私と優香ちゃんと三鈴君の6人で向かう事にした。



***
「いらっしゃいませー。……6名様ですか?」
「うん、そう。席空いてる?」
「大丈夫です。こちらへどうぞ」

店員さんの案内で席に座り、快斗さんは早速空腹のお兄さんにメニューを見せる。
でもお兄さんはじっと眺めては周りを見渡して、少し元気のない顔をして…どうしたんだろ?

「んー…今は手持ちがないから控えめにしたいんだけど…どうしよう…」

ぼそりと聞こえたその言葉。
あ、これ絶対沢山食べる人だ。
あんなに強い術士なんだからそれもそう…なのかな?

「気にしなくていいっすよ。この会計全部うちの上が払う事になってるんで領収書準備してもらいます」

ずい、と声を掛けたのは三鈴君。
なんだけど。
え、ご飯って分倍河原さんが出してくれるの…?

「えっ、そうだったの?」
「逆に聞く。お前らは今までどうしてたんだ?」
「めっちゃ普通に自分達で食ってた。まじかお前」
「逆に何でお前らが知らねぇんだよ…!」

三鈴君にすごく驚かれちゃった。
明澄さんもすごい顔して見られちゃったし、多分知ってたんだろうなぁ…。
そんなこんなで注文する事になったんだけど現在時刻は夜8時頃、夕食には丁度かと皆で1~2皿頼んだんだけど……空腹のお兄さんはすごかった。

「すげぇ…」
「めっちゃ食い続けてる…」
「お腹いっぱいにならないんだねぇ…」

そう口にしたのは順に明澄さん、三鈴君、優香ちゃん。
皆揃ってその食べっぷりには驚きしかない。
だってハンバーグプレート、スパゲッティ、ローストビーフサラダ、ガーリックライス、グラタン頼んでるんだよ?
全部無表情で食べ続けられると…ちょっと言葉が出てこない。
そんな気持ちで見てると、お兄さんは突然手を止めて言葉を溢した。

「……ごめん、ずっと食べてて」
「寧ろじっくり見ててゴメン」
「めっちゃ食うなって感心してた」
「こんなに食べる人テレビや動画でしか見た事ないからびっくり!」

これはもう、皆口々にそう言うしかないんだと思う。
だって他に何も言えないもん。

「そ、それだけお腹空いてたんだよね?大丈夫?」

私の心配にお兄さんは最後の一口を食べ切り、大きく頷いた。

「……だいぶ落ち着いた。ありがと。……あ、自己紹介…俺、置野正也。篠崎から応援でここまで来た」
「「「「「……え?」」」」」」

初めてじゃないかな。私達5人で同じ言葉で声が揃うの。
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