神命迷宮 -東京Dead End-

雪鐘

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3.焦り

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「そうだ師隼、ついでなんだが…新しく来たこの子の様子見てやってくれるか?」
「ふえ??」

突然分倍河原さんの視線がこっちに向いた。
何の話をしていたのか途中から聞いていなかった私はびっくりして変な声を上げてしまった。
うぅ、ちょっと恥ずかしい…。

「彼女を?…ここの登録術士にするのか?」
「ああ、この地はまだまだ数が足りん。この前も一人ですごく頑張っててな、胆力はあると思ってる。それに…のも、こっちの仕事だろう?」

にかっ、と笑う分倍河原さんの笑みに神宮寺さんは小さく頷く。
そして青色の目が私の視線と合った。

「……そうだな。君の名前を教えてくれるかな?」
「あ…えっと…く、雲間光です…よ、よろしくお願いします…!」
「ふふ、私がこの地に居るのは数日限り、世話になるのはそこの熊みたいな男だ。緊張はしなくていい。そのまま立って貰えれば問題ない」
「あ、はい…」

神宮寺さんは微笑むととても優しそうな人だなと感じる。
見た目からは神秘的というか、空気が冷たいというか、こっちが緊張してしまうような空気を感じるけど本当に見た目だけ。
世話人って言ってたけど、この人達は何をする人達なのだろう。

「……ふむ、君もまた面白い力を持っているね。…いや、うちはずっと変わり映えのない術士を囲っているからそんなものなのかもしれないが…君は雲を操るのかい?」
「えっ!?」

ふっと零れる様な笑みを浮かべる神宮寺さんに隠していた事を見抜かれたように言われて、心臓がどきりとした。
この世界、物を浮かせたり動物が言ってる事を理解したり人形と会話するだけで『不思議』とか『超能力』とか言われてしまう世界である。
それなのに自分が持ってしまった変な力を簡単に見抜かれてしまって、犯行がバレた犯人のように挙動不審になってしまいそうだ。
いや、もうなってるかもしれない。
変な汗が出てきて体が熱くなってきた。
ああどうしよう、バレちゃった。
変な事言われる。もしかして捕まって変な実験でもするのかな?
怖い。
だけど自分が想像してる次の言葉とは正反対の言葉が、くすりと笑った声と共に神宮寺さんの口から零れた。

「ふむ。……君は…そもそも術士が何なのか、君が何と戦ってきたのかを知らないね?」
「えっと……え?」
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