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初夜です
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顔の腫れが治まってから挑んだ前世を含めて初のモデル経験は、思っていたのとちょっと違った。
ルードヴィグくんが飽きる前にまずは彼の顔だけササッと描いたあと、全員で並んだ時の身長や体格の差をサササッと描いて、最後に残り全員の顔を描いて終わり。俺とリューセントさんはちょっとしっかりめに描く時間を設けてくれたけど、半日がかりとかではなかった。全身の図なんて丸と三角と棒でかろうじて「人?」ってレベルだったし。
そんな画家さんの横で、カティさんが鬼気迫る勢いで俺やリューセントさんのデッサンをしてたんだけどね。「びけいかけるへいぼん、とうとい」って聞こえたんだけど、それって何語?
しかし画家さんの描いた簡単なラフだと、服装とかの細かな部分はどうするんだろうか。それを聞いてみたら、こういう時は洋服を作る時に使ったデザイン図から転用するんだそうだ。「そこまで細かい部分をずっと描いていたら日が暮れちゃうからね」と言われて、それもそうかと納得した。
だから正味で一時間ちょっとくらい。その後は待ちに待った立食パーティー! もちろんお仕事をしている全員が一斉に参加とはいかなかったけど、それぞれ交代の時間を作って参加してくれた。
無礼講とは聞いてたけど羽目を外すような人も出ないまま、終始和やかに過ごすことが出来たんだ。もしかしたら、お酒なんかは二次会でとなったのかもしれない。
リューセントさん兄弟を昔から知ってる人が小さい頃の話をしてくれたり、逆に若い人には感謝されたりもしたよ。いやほんとになんで? って話なんだけど、いくら優しい雇用主とは言ってもこんな風に一緒に食事をすることなんてないから、その機会が出来たことが恐れ多くも嬉しいんだって。
でも企画したのはリューセントさんなんだよね。そう話したら、「アシャンさまとの結婚でなければやらなかったんですから、アシャンさまのお陰ですよ。自信を持って!」と励まされてしまった。
「はい、アシャン。これが言ってたやつね。それと回復薬も」
「ティモさん、ありがとうございます」
お腹もくちくなった頃、夕方くらいにパーティーはお開きになった。その後、俺たち主賓はお風呂に入って……となった時にティモさんにこっそりお願いしたもの。いやルクウストさんにお願いするでも良かったんだけど、ちょっと言いにくくってね。
あの宿屋で使った精力剤と潤滑油。それとティモさんのサービスで回復薬が、俺の手の中にある。ついでに媚薬も……俺が飲むつもりはないけどね !? でもちょっと、リューセントさんがエッチくなってる姿が見たいななんて思っていたり。
「あと、伝言。ルクウストさんから〝明日は起こしませんよ〟ってさ。まぁ旦那さまも夕方くらいまで籠もるつもりでいるだろうけど……あ、それだと精力剤が足りなかったかな? アシャン、死なないでね」
「……善処します」
なんだかちょっと不穏なことを言ってから、ティモさんは自室へと帰っていった。
今夜は初夜ってやつだからね。俺だってちょっと気合いを入れるってもんです。昨夜兄ちゃんに「積極的になれ」って言われたし、俺なりにやれるところまではやるつもりだ。
今日は客室じゃなくてリューセントさんの自室――実家を出ても部屋が残ってるって凄いよね――で寝ることになっているから、俺はもうその部屋で待機中。さっきお風呂もいただいて、今は入れ違いでリューセントさんが入ってる。
あ、でもこの瓶を隠す場所がない。タンスを勝手に開けるのは嫌だしな……枕の下で良いか。この枕、フカフカしてるから下に隠してあってもバレなさそう。
「アシャン?」
「ひゃい?!」
どっから見ていましたか? ってタイミングで背後から声を掛けられて、すごい変な声が出てしまった。そんな俺に少し笑ってから、リューセントさんがベッドへと潜りこんだ。
「……あれ?」
「うん? 今日はもう疲れただろう?」
そりゃまぁ疲れましたけど。かと言って、「じゃあ、おやすみなさい」ってここで寝ちゃいけないってことは俺にもわかるよ!?
おいで、と微笑んでくれてるリューセントさんは、たぶん善意で言ってくれてると思う。ちゃんと俺側の掛け布をめくってくれて、〝さぁどうぞ〟ってしてくれてるし。最初はそれにだって「うひゃー!」となってたけど、俺ももうそこまで過剰反応はしませんし……いやあの、ちょっと積極的になろうとしてたのはリューセントさんの補助ありきだったんだよね。俺から押し倒すなんて出来ないから、こう……イイ感じになった時に俺からキスしてみるとか、そんなんを考えてた。
うん。脳内の兄ちゃんが「甘いわ!」って怒ってる。
「……男は度胸!」
「アシャン??」
さっき隠した瓶をグイッと一気飲み。黄色の精力剤は色の割にスッキリしたミント系の味で、ノンアルコールのミントジュレップみたいで美味しいんだ。
ベッドに入ったまま呆気に取られているリューセントさんには赤い瓶を押し付けた。
「……アシャン? これは?」
「飲んでください。今、すぐに」
目の据わった俺の勢いに負けるように、リューセントさんが赤い瓶を飲み干した。赤い瓶、つまり媚薬……飲んですぐには効かないと思うけど、あれこれしてるうちに効いてくるだろう。
瓶を奪い返してベッドボードに置いてから、寝転がっているリューセントさんに跨がった。
「アシャン、えっと……っん」
あれこれ言われる前にまだ状況を掴めていないリューセントさんの唇を塞ぐ。えっとこの後はたしか……といつもの動きを思い出しながら、その腔内へ舌を伸ばした。
ルードヴィグくんが飽きる前にまずは彼の顔だけササッと描いたあと、全員で並んだ時の身長や体格の差をサササッと描いて、最後に残り全員の顔を描いて終わり。俺とリューセントさんはちょっとしっかりめに描く時間を設けてくれたけど、半日がかりとかではなかった。全身の図なんて丸と三角と棒でかろうじて「人?」ってレベルだったし。
そんな画家さんの横で、カティさんが鬼気迫る勢いで俺やリューセントさんのデッサンをしてたんだけどね。「びけいかけるへいぼん、とうとい」って聞こえたんだけど、それって何語?
しかし画家さんの描いた簡単なラフだと、服装とかの細かな部分はどうするんだろうか。それを聞いてみたら、こういう時は洋服を作る時に使ったデザイン図から転用するんだそうだ。「そこまで細かい部分をずっと描いていたら日が暮れちゃうからね」と言われて、それもそうかと納得した。
だから正味で一時間ちょっとくらい。その後は待ちに待った立食パーティー! もちろんお仕事をしている全員が一斉に参加とはいかなかったけど、それぞれ交代の時間を作って参加してくれた。
無礼講とは聞いてたけど羽目を外すような人も出ないまま、終始和やかに過ごすことが出来たんだ。もしかしたら、お酒なんかは二次会でとなったのかもしれない。
リューセントさん兄弟を昔から知ってる人が小さい頃の話をしてくれたり、逆に若い人には感謝されたりもしたよ。いやほんとになんで? って話なんだけど、いくら優しい雇用主とは言ってもこんな風に一緒に食事をすることなんてないから、その機会が出来たことが恐れ多くも嬉しいんだって。
でも企画したのはリューセントさんなんだよね。そう話したら、「アシャンさまとの結婚でなければやらなかったんですから、アシャンさまのお陰ですよ。自信を持って!」と励まされてしまった。
「はい、アシャン。これが言ってたやつね。それと回復薬も」
「ティモさん、ありがとうございます」
お腹もくちくなった頃、夕方くらいにパーティーはお開きになった。その後、俺たち主賓はお風呂に入って……となった時にティモさんにこっそりお願いしたもの。いやルクウストさんにお願いするでも良かったんだけど、ちょっと言いにくくってね。
あの宿屋で使った精力剤と潤滑油。それとティモさんのサービスで回復薬が、俺の手の中にある。ついでに媚薬も……俺が飲むつもりはないけどね !? でもちょっと、リューセントさんがエッチくなってる姿が見たいななんて思っていたり。
「あと、伝言。ルクウストさんから〝明日は起こしませんよ〟ってさ。まぁ旦那さまも夕方くらいまで籠もるつもりでいるだろうけど……あ、それだと精力剤が足りなかったかな? アシャン、死なないでね」
「……善処します」
なんだかちょっと不穏なことを言ってから、ティモさんは自室へと帰っていった。
今夜は初夜ってやつだからね。俺だってちょっと気合いを入れるってもんです。昨夜兄ちゃんに「積極的になれ」って言われたし、俺なりにやれるところまではやるつもりだ。
今日は客室じゃなくてリューセントさんの自室――実家を出ても部屋が残ってるって凄いよね――で寝ることになっているから、俺はもうその部屋で待機中。さっきお風呂もいただいて、今は入れ違いでリューセントさんが入ってる。
あ、でもこの瓶を隠す場所がない。タンスを勝手に開けるのは嫌だしな……枕の下で良いか。この枕、フカフカしてるから下に隠してあってもバレなさそう。
「アシャン?」
「ひゃい?!」
どっから見ていましたか? ってタイミングで背後から声を掛けられて、すごい変な声が出てしまった。そんな俺に少し笑ってから、リューセントさんがベッドへと潜りこんだ。
「……あれ?」
「うん? 今日はもう疲れただろう?」
そりゃまぁ疲れましたけど。かと言って、「じゃあ、おやすみなさい」ってここで寝ちゃいけないってことは俺にもわかるよ!?
おいで、と微笑んでくれてるリューセントさんは、たぶん善意で言ってくれてると思う。ちゃんと俺側の掛け布をめくってくれて、〝さぁどうぞ〟ってしてくれてるし。最初はそれにだって「うひゃー!」となってたけど、俺ももうそこまで過剰反応はしませんし……いやあの、ちょっと積極的になろうとしてたのはリューセントさんの補助ありきだったんだよね。俺から押し倒すなんて出来ないから、こう……イイ感じになった時に俺からキスしてみるとか、そんなんを考えてた。
うん。脳内の兄ちゃんが「甘いわ!」って怒ってる。
「……男は度胸!」
「アシャン??」
さっき隠した瓶をグイッと一気飲み。黄色の精力剤は色の割にスッキリしたミント系の味で、ノンアルコールのミントジュレップみたいで美味しいんだ。
ベッドに入ったまま呆気に取られているリューセントさんには赤い瓶を押し付けた。
「……アシャン? これは?」
「飲んでください。今、すぐに」
目の据わった俺の勢いに負けるように、リューセントさんが赤い瓶を飲み干した。赤い瓶、つまり媚薬……飲んですぐには効かないと思うけど、あれこれしてるうちに効いてくるだろう。
瓶を奪い返してベッドボードに置いてから、寝転がっているリューセントさんに跨がった。
「アシャン、えっと……っん」
あれこれ言われる前にまだ状況を掴めていないリューセントさんの唇を塞ぐ。えっとこの後はたしか……といつもの動きを思い出しながら、その腔内へ舌を伸ばした。
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