一夜の過ち……え? 違う?

宮野愛理

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昨夜のやり直し?

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 可愛い可愛いと言いながら、リューセントさんの指先が俺の胸元をなで回し始めたのだ。擽ったいとも違うゾワッとする感触に声を上げると、その指はますます怪しく、大胆に動き出す。

「んゃ……っ、あん、やだ……そこ、くすぐっ……」
「アシャンはここが気持ちいいんだよね? ふふ、忘れてしまったアシャンはとても可愛らしいけど、やはりそのままでは悲しいからね。また刻み込むことにしよう」
「え? え? ど、どういう……?」

 身もだえながら問いかけると、リューセントさんはそれはもうにっこりと笑った。

「だからね、昨夜のやり直しをしようじゃないか」
「へ?!」

 当てられたくない部分を、当てられたくない部分でゴリッと……まぁその、先ほども感じていた朝勃ちなブツだ。それが俺のブツをグリグリと刺激してくる。
 しかも刺激をしながら、ブツの裏側あたりを器用に擦りあげてきた。その刺激がもう少し下に動いたら……?

「いや、無理! 入らない! っていうか、このままだと一夜の過ちが過ちじゃなくなるんで!!」
「いちやのあやまち……とは、なんのことだい?」
「え? あ、そっか。こっちにはその言葉がないのか。……えっとつまり、俺とリューセントさんは恋人でも夫婦でもないですよね?」
「そうだね。昨日出会ったばかりで、ご両親へのご挨拶もまだだ」

 なぜここで両親への挨拶? そう思ったけど、そこを突っこんだら負けな気がする。

「俺の知っている言葉で、恋人や夫婦でもない二人が間違って性交してしまうことを〝一夜の過ち〟といいます」
「うん、それで?」
「その時のノリとか流れとか……まぁそういうことで、朝起きたら間違いだって気付くこともありますよね?」

 ふむ、と考え込んだリューセントさんの猛攻が止んだ。これ幸いにと俺は畳みかけるように説明を続ける。

「不幸な事故ってやつです! ね? 今ならそういうことで納められます、だから……」
「君は不幸な事故ってことにしたいの?」
「いっ……!?」

 それまでの笑顔を引っ込めて、真顔になったリューセントさんが俺の乳首を千切るつもりかってくらいにつねってきた。
 涙が出るほど痛い。俺の喉からはヒッヒッと、情けない音が漏れてしまう。

「ちがっ……俺じゃなくって、リューセ、トさ……が、ですぅ!」
「……私?」
「めっちゃ痛かった。千切れるかと思った。……あぁもう! そうですよ! こんな芋な男に欲情したとか、黒歴史以外のなにものでもないでしょう! ここはあなたのためにも不幸な事故で終わらせて、そのまま忘れるほうが良いんですよ!!」

 俺だって、男に掘られた夜なんて黒歴史だ。
 まぁリューセントさんは格好いいし、別の視点で見ればちょっと美人系だし、エッチなお姉さんに悪戯された~くらいに思っておくことが出来る。むしろそうしたい。
 でもこのまま昨夜のやり直しとやらをしたら、それはもう過ちでもなんでもない。確定事項になってしまう。なんのって、そりゃもちろん愛とか恋とか欲とかの。
 こんなイケメンの相手が俺だなんて、背後から刺し殺されてもおかしくない。むしろこの場合は奇声とともに前から襲いかかってくるだろう。

「芋の意味がわからないけれど、それもあまり良い意味ではなさそうだね……」

 ため息を吐きながら、リューセントさんがそれまで俺たちを隠していた掛け布を取り払った。いつの間にか俺の足は大きく広げられていて、その太ももの下に座っているリューセントさんの太ももがある。俺、色々と丸見え。
 俺が見上げている光景は、見ようによっては絶景だろう。鍛え上げられた上半身、綺麗に割れた腹筋の下にはそれはそれはお見事なブツ――リューセントさんに恋心を抱いていたら、胸がキュンキュンしちゃうはず。だってまさに〝雄〟と表現するしかない光景だもの。その下に見える貧相な自分の体が口惜くちおしい。

「過ちにするつもりはないし、不幸になるつもりもない。ようやく巡り会えたんだよ……アシャンじゃなければいらない。アシャンが相手だから、私のここも大きくなっているんだ」

 さっきよりも大きくなったブツが、リューセントさんの熱量と興奮をそのまま伝えてくる。
 恐ろしい予感にジリジリと逃げようとしたけれど、枕元に置かれていたショルダーバッグから取り出された琥珀色の瓶に視線を奪われてしまった。
 とぷんとした、とろみのある液体が瓶の中で揺れている。そのコルク栓を片手で器用に開けたリューセントさんは、液体の半分を自分のブツへと垂らした。
 残りをぐびっと口に含み、その口が強引に俺の口に――?

「んん、ん、ぬ……んーーーー!! ……っぷは、は、え? あまい?」
「回復薬だよ。唇が切れていたのも治っただろう?」
「あ、はい。それに……」

 筋肉痛や倦怠感も薄れている気がする。
 とろみのある液体はハチミツのような味だった。少しの苦味もあって、前世で飲んだ風邪薬のシロップにも近い。甘味に飢えた幼少期を過ごしていたので、これは王都に溢れる甘味に期待が持てる。

「ここもね、少し腫れているみたいだから」
「ひっ!? ……うそ、うそぉ、無理。入らない。こわぃ……やだ、リューセントさん!」

 俺の制止なんてどこ吹く風で、回復薬とやらをまとったブツが俺のあらぬところ……いやもうハッキリと言おう。俺の尻の穴に、リューセントさんの逸物がズブッと入ってきた。
 痛みはない。むしろさっきまでの違和感が薄れていくのは、この回復薬の効果なのだろうか。

「切れてはいなかったけど、これで痛みもないだろう? 昨夜は使うのを忘れていて申し訳なかったね」

 そんな優しいセリフを言うくせに逸物の進行は止まらない。ズブズブと容赦なく埋め込んでくるせいで、俺のセカンドヴァージンはあっけなく散った。
 嘘でしょ。出すモノより大きく見えたのに、出口を入り口にさせて逆流してきた。

「おなか、くるし……」
「うん。ごめん。ちょっと昨夜より大きいかも」

 穴のふちをリューセントさんの指がなぞる。それにも反応してしまって体が震えた。その振動が中を伝い、俺の知らなかった部分を逸物が撫でて嬌声とでもいうかのような声まで上がってしまう。はずい。恥ずかし過ぎる!

「ね? これでもう一夜どころの話じゃなくなったね? 私は後悔しないから、アシャンも存分に気持ちよくなって?」
「リューセントさ……? あ、んんっ……だめ、それしちゃ……ひぁあ!!」

 ゴチュとかドチュ、なんておかしな音が尻のほうから聞こえてくる。逸物が行き来するピストン運動が恐ろしく気持ちいい。
 うわごとのように「うそ、うそぉ」と繰り返す俺に、リューセントさんは「好きだよ、愛している」と何度もキスとともに返してくれた。
 あぁ、マジか。この人そんなに俺が好きなのか。
 理由はわからない。出会い方だって覚えていない。
 でも、その視線がなによりも「愛している」と伝えてくれるから、回復した体力そのままに恥ずかしい声を上げ続けた。
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