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まさかのダブル?!
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本当に〝ようやく〟なんだよ。戦争になりかけだったスリダニアの復興とか、諸々が終わるまでに一年以上掛かったから……その間、俺はずっとお話を書いてた。疲れた。
『結婚式、晴れて良かったですね』
兄貴は「する必要ないだろ」なんて言ってたけど、ジュードさんとダミアンさんにぶった切られてた。そりゃあんだけ本が売れたんだから、やらないで済む訳がないよね。色んな国から問い合わせがあったらしく、そっちの対処も大変だったみたい。
式はこの国に昔からある大聖堂。あんまり大きくはないので、参列は国内の主要な人と兄貴と親等が近い人のみ。レフカさんやジュードさんとかね。他国の人はまた別に準備している晩餐会に呼んでるんだって。俺も晩餐会では王様の弟として挨拶しなきゃならないらしいけど……俺なんてただの一般人ですよ? なんて、それ言ったら「あんだけ本の世界で目立っておきながら、何言ってんだ」と怒られた。地球でいうところの〝ベストセラー作家〟な俺です。この国の所属ですよ~王様の弟ですよ~と言わないと、後々面倒になると言われてしまいました。
(でもこの格好はやり過ぎじゃないかな)
家族枠だから多少はちゃんとした服になるのはわかる。多少ならね。でも今日俺が着てるのは、もうちょっとゴテゴテしくてしかも兄貴と同じ白ベースの一式。確か、花嫁さん以外が白い服を着るのってタブーじゃなかったっけ??
兄貴は差し色が淡いピンク、俺は薄い水色ってくらいの違いしかありません。それで参列者の一番前に座ってるんだよ? 後ろからはほぼ見えない……と思いたいけど、近い人からはチラホラと見られている気がする。あ、黒い髪だからかな? それなら良いんだけど。一応、本を作る流れで知り合った人には「異世界出身の弟です」なんて挨拶はしているんだけどね……
「始まるぞ」
隣に座っているセルトさんは髪もばっちり決めた騎士服姿。イケメン度がアップしています。こうやって見るとカーライルさんと似てる。強いて言うならカーライルさんが垂れ目、セルトさんが切れ長の目って感じかな。
兄貴とカーライルさんには座る前に挨拶してきたんだ。カーライルさんはザンバラに切っていた髪を整えて、少し襟足を長くした髪型。あれは兄貴も惚れ直すんじゃないでしょうか。初対面の時はあんなにオッサンぽかったのに、詐欺だってちょびっと思ったけどね。
なんて思い返していたら曲が流れ始めた。聞き慣れた結婚行進曲じゃないけど、この大聖堂のイメージに合うような荘厳な曲。こっちではヴァージンロードを親と……ってしきたりはなくて、新郎と新婦(この場合は新郎ズ?)が一緒に歩くんだって。
(あ、来た!)
さっき見たまんまの姿だけど、背景と相まってめっちゃ格好良い。悔しいことに兄貴も格好良い。素直に賛美するのは釈然としないけど仕方ない。どっちも男だからベールはなくて、顔が丸見えっていうのもあるかも。方々から拍手と共に「おめでとう」って言葉を掛けられて、それにはにかむように笑うとか……完全にエンドロールじゃん。お話の中での〝めでたしめでたし〟じゃん。
(なのになんで俺を見てニヤって笑うの??)
ちょっと不穏。
その意味を考えている内に、二人は祭壇の前に辿り着いた。こっちには神父さん? 牧師さん? はいなくて、祭壇とその先のステンドグラスに描かれたオーヘル神とエールピオス神への祈りなんだって。その後に参列者に向き直ってお辞儀と所信表明、と言えば良いのかな?
「私レオルカと、番であるカーライルは今日この日を以て婚姻を結ぶ。皆から見れば心配なことも多かっただろう。そしてこれからも心配をかけるかもしれない。だが、私たち二人は互いを思いやる気持ちを忘れずに、未来に向けて歩き続けることをここに誓おう」
ワッと拍手や歓声が響いた。それに深々とお辞儀をした二人は、微笑みながら抱き合った。誓いのキスはしないんだねーなんて思っていたら、カーライルさんがほっぺにチュッとして兄貴がペシリと頬を叩くなんて光景が……ごちそうさまです。
「……さて。この場でもう一組、婚姻を結ぶ二人を紹介したいと思う。――セルト、健翔。前へ!」
『へ?!』
急に呼ばれた名前にビックリしてたら、セルトさんが立ち上がる。それにつられるようにして俺も一緒に前へと出てしまうと、そこかしこからまた拍手が……一番大きな拍手をしてるのはティグレさんだけど。え?
「セルトのことは皆も知っているな? 隣のこいつは健翔、セルトの番だ。まぁ色々と手伝いをしていた者は見知っていると思うが……あちらの世界での俺の弟でもある。――健翔、挨拶を」
「え? あ……よろし、ねがうです。けんとれす」
「まぁこのように言葉は拙い。なので情報を統一する。セルトが他国で見つけてきた先祖返りだ。〝人目を避けて生活していたため、言葉が不自由である〟明日以降、他国からの客人が増えてもそのように伝えるように。そして、この国で保護すると共に、セルトを夫として据える。異論のある者は! ……ないな。ではここに、二人の婚姻が結ばれたことを宣言する!」
目を白黒させてる俺を置いて、話がドンドンと進んでいく。えーっと? 兄貴の弟としてってのは聞いていたけど、それとセルトさんとの結婚はイコールなの??
「ケント」
『セルトさん……え? あの、良いんですか、これで』
「良いことが続くのは良いということか……?」
『えー……』
ざっくり過ぎませんかね? かと言って反対意見も出ないし、なんだかこのまま収まりそう??
ティグレさんがめっちゃ泣いてるのが視界に入ってきて、俺も泣きたいと思いながら遠い目をしてしまった。結婚するなんて実感ないよ!!
『結婚式、晴れて良かったですね』
兄貴は「する必要ないだろ」なんて言ってたけど、ジュードさんとダミアンさんにぶった切られてた。そりゃあんだけ本が売れたんだから、やらないで済む訳がないよね。色んな国から問い合わせがあったらしく、そっちの対処も大変だったみたい。
式はこの国に昔からある大聖堂。あんまり大きくはないので、参列は国内の主要な人と兄貴と親等が近い人のみ。レフカさんやジュードさんとかね。他国の人はまた別に準備している晩餐会に呼んでるんだって。俺も晩餐会では王様の弟として挨拶しなきゃならないらしいけど……俺なんてただの一般人ですよ? なんて、それ言ったら「あんだけ本の世界で目立っておきながら、何言ってんだ」と怒られた。地球でいうところの〝ベストセラー作家〟な俺です。この国の所属ですよ~王様の弟ですよ~と言わないと、後々面倒になると言われてしまいました。
(でもこの格好はやり過ぎじゃないかな)
家族枠だから多少はちゃんとした服になるのはわかる。多少ならね。でも今日俺が着てるのは、もうちょっとゴテゴテしくてしかも兄貴と同じ白ベースの一式。確か、花嫁さん以外が白い服を着るのってタブーじゃなかったっけ??
兄貴は差し色が淡いピンク、俺は薄い水色ってくらいの違いしかありません。それで参列者の一番前に座ってるんだよ? 後ろからはほぼ見えない……と思いたいけど、近い人からはチラホラと見られている気がする。あ、黒い髪だからかな? それなら良いんだけど。一応、本を作る流れで知り合った人には「異世界出身の弟です」なんて挨拶はしているんだけどね……
「始まるぞ」
隣に座っているセルトさんは髪もばっちり決めた騎士服姿。イケメン度がアップしています。こうやって見るとカーライルさんと似てる。強いて言うならカーライルさんが垂れ目、セルトさんが切れ長の目って感じかな。
兄貴とカーライルさんには座る前に挨拶してきたんだ。カーライルさんはザンバラに切っていた髪を整えて、少し襟足を長くした髪型。あれは兄貴も惚れ直すんじゃないでしょうか。初対面の時はあんなにオッサンぽかったのに、詐欺だってちょびっと思ったけどね。
なんて思い返していたら曲が流れ始めた。聞き慣れた結婚行進曲じゃないけど、この大聖堂のイメージに合うような荘厳な曲。こっちではヴァージンロードを親と……ってしきたりはなくて、新郎と新婦(この場合は新郎ズ?)が一緒に歩くんだって。
(あ、来た!)
さっき見たまんまの姿だけど、背景と相まってめっちゃ格好良い。悔しいことに兄貴も格好良い。素直に賛美するのは釈然としないけど仕方ない。どっちも男だからベールはなくて、顔が丸見えっていうのもあるかも。方々から拍手と共に「おめでとう」って言葉を掛けられて、それにはにかむように笑うとか……完全にエンドロールじゃん。お話の中での〝めでたしめでたし〟じゃん。
(なのになんで俺を見てニヤって笑うの??)
ちょっと不穏。
その意味を考えている内に、二人は祭壇の前に辿り着いた。こっちには神父さん? 牧師さん? はいなくて、祭壇とその先のステンドグラスに描かれたオーヘル神とエールピオス神への祈りなんだって。その後に参列者に向き直ってお辞儀と所信表明、と言えば良いのかな?
「私レオルカと、番であるカーライルは今日この日を以て婚姻を結ぶ。皆から見れば心配なことも多かっただろう。そしてこれからも心配をかけるかもしれない。だが、私たち二人は互いを思いやる気持ちを忘れずに、未来に向けて歩き続けることをここに誓おう」
ワッと拍手や歓声が響いた。それに深々とお辞儀をした二人は、微笑みながら抱き合った。誓いのキスはしないんだねーなんて思っていたら、カーライルさんがほっぺにチュッとして兄貴がペシリと頬を叩くなんて光景が……ごちそうさまです。
「……さて。この場でもう一組、婚姻を結ぶ二人を紹介したいと思う。――セルト、健翔。前へ!」
『へ?!』
急に呼ばれた名前にビックリしてたら、セルトさんが立ち上がる。それにつられるようにして俺も一緒に前へと出てしまうと、そこかしこからまた拍手が……一番大きな拍手をしてるのはティグレさんだけど。え?
「セルトのことは皆も知っているな? 隣のこいつは健翔、セルトの番だ。まぁ色々と手伝いをしていた者は見知っていると思うが……あちらの世界での俺の弟でもある。――健翔、挨拶を」
「え? あ……よろし、ねがうです。けんとれす」
「まぁこのように言葉は拙い。なので情報を統一する。セルトが他国で見つけてきた先祖返りだ。〝人目を避けて生活していたため、言葉が不自由である〟明日以降、他国からの客人が増えてもそのように伝えるように。そして、この国で保護すると共に、セルトを夫として据える。異論のある者は! ……ないな。ではここに、二人の婚姻が結ばれたことを宣言する!」
目を白黒させてる俺を置いて、話がドンドンと進んでいく。えーっと? 兄貴の弟としてってのは聞いていたけど、それとセルトさんとの結婚はイコールなの??
「ケント」
『セルトさん……え? あの、良いんですか、これで』
「良いことが続くのは良いということか……?」
『えー……』
ざっくり過ぎませんかね? かと言って反対意見も出ないし、なんだかこのまま収まりそう??
ティグレさんがめっちゃ泣いてるのが視界に入ってきて、俺も泣きたいと思いながら遠い目をしてしまった。結婚するなんて実感ないよ!!
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