あるある設定な異世界に転移しましたが、俺は普通に生きようと思います。

宮野愛理

文字の大きさ
上 下
48 / 57

外堀埋め埋め作戦

しおりを挟む
 さて。揃いに揃った癖の強いメンバーを紹介します。

 まずは、レオルカ・グロリオ・オーベルシュハルト!! 誰って思った? 兄貴のことです。フルネーム、そういえばこんなんだったね。いつも兄貴って言っちゃうから俺も忘れる。あ、最近知ったんだけど、この国って〝姓〟の概念がないんだって。兄貴の場合はオーベルシュハルトの〝王〟レオルカって意味。ついでに国民は〝なんとかかんとか・ノディス・オーベルシュハルト〟で、ノディスが〝民〟って意味になる。だからセルトさんの場合はセルト・ノディス・オーベルシュハルトで、オーベルシュハルトの〝民〟セルト……同姓同名さん、結構いそう。そのあたりは屋号とか、家族の名前もセットになるらしいけど。……って、閑話休題。
 次に、問題発言をしたカーライルさん。あ、フルネームは省略します。
 そしてセルトさん、ジュードさん、ダミアンさん、アデラールさん、レフカさん。後は……

「まぁ。あなたがセルトの番なのね。初めまして、ティグレの妻のシーラと申します。……うふふ、可愛らしい子だわ。レオルカ様とそっくり!」
「けんと、れす。はじめました」

 えーっと……セルトさんのお母さん? 養母? のシーラさんがゲスト参加です。兄貴とそっくりって初めて言われたかもしれない。色が同じなだけだと思うんだけど、それを指摘するのが申し訳なくなるくらいニッコニコしてるから……まぁ、いいか。ティグレさんと並んだらミニマム過ぎない? ってくらい小柄な人。お耳から推測するにウサギさんかな??

「権利だの資格だのを言い出して逃げようとするなら、それはそれで良いでしょうに。シーラさんには悪いですが、出て行くと言うなら止めないのも優しさですよ」

 相変わらずジュードさんは辛辣です。いや、確かにね。本人がそうしたいっていうのを止める権利って、誰にもないんだよ。兄貴も、セルトさんも、シーラさんも、反対は出来ても止めることは出来ない。それはわかってる。

『でもさぁ……止められるなら止めたいじゃん。結局カーライルさん的には何がネックなの? 兄貴を刺したこと? それとも、他の理由??』

 俺の言葉はそのままセルトさんが通訳してくれて、ジュードさんには「お人好しですね」と呆れられた。だって、さぁ……

『兄貴が怒ってて、お前の顔なんて見たくない! って言ってるならまだしもこの状況だと違うよね? ――兄貴的にはどうなの? 別れてもオッケーな感じ?』

 そっと聞いてみたら、無言で首を横に振った。だよね。多分、何も言わないんじゃなくて言えないんだと思う。それは他の人たちもわかってるみたいで、特に急かすようなことは言わなかった。

『だからね、カーライルさんが〝これは結婚しないと駄目だな〟って諦めるくらいのことをしようと思ってさ。――シーラさんとレフカさんに質問なんだけど、こっちの世界ってロマンス小説みたいな物はあります? えーっと、ロマンス……恋? を題材にしたお話って言えば良いのかな。愛する二人が出会ったり別れたりして、最後は結婚するみたいなお話なんですけど』

 あっちで言うならシンデレラとか人魚姫とか。あ、人魚姫は悲恋物だから、ベッタベタなラブロマンスが良いね。ハッピーエンドなやつ。確認してみたら「ある」とのこと。ふむふむ。

『こういうのはありますか?』

 そう言って取り出したのは、あのBL漫画! 内容を知ってるセルトさんがギョッとしてたけど、とりあえず無視します。あのね、これはエッチありきだけど内容もちゃんとしてるからね。まぁBLを知らない人に見せるというのはハードル高いんだけど……こっちでは同性愛も普通にあるから、忌避感は少ないと思うんだ。いや、局部が書かれているのを女性に見せるのはセクハラか。そのあたりは読み飛ばしてね。

「この、まんが? と言うのはないわ。凄いわね。文字はわからないけど、なんとなく内容がわかるもの」
「そうねぇ……ちょっとその、あの部分は困るけど……」

 本当にすみません! もうちょっとライトな朝チュン的な漫画なら良かったんですけど、持ってきたのがそれなので!!
 男性陣にも回し読みされて、なんというか沈黙が痛いです。エロ本じゃないんですよ? いや、マジで。「独り者連中の娯楽に良さそうだな」ってアデラールさん止めて。なんかもの凄いエロ本を出したみたいな気持ちになるから。これ商業BLで十八禁じゃないからね?

「お前……何を考えてんだよ」
『んー? とりあえずエッチは抜きにしてさ、ペンは剣よりも強しってことでブームを巻き起こせないかな? なんて。漫画でも良いし、挿絵多めのロマンス小説でも良いし……読んだ人が〝こんな素敵なお話はあの二人のことなのね! 素敵!〟って思えるようなやつ』

 題して〝外堀埋め埋め作戦〟……なんか地味なタイトルだね。でも出来ると思うんだ。実際、エッチは抜きにして女性陣は読み物として楽しんでるし。

「俺とカーライルの話とか……違う意味で外に出れなくなるだろ」
「名前を変えて、分かる人には分かる程度にすればどうかしら? 多分だけどカーライル……あなた、尾を切ったことの意味も考えているんでしょう?」

 そういえばそんなことも言っていたかも。死んだ人の身元証明、転じて〝自分のことは死んだと思え〟って宣言だっけ?

「しぽ、きる、わるい、だめ?」
「悪くも駄目でもないわ。怪我が原因で切ってしまうこともあるし……」
「それでも……レオルカの隣に立つには、瑕疵かしになるだろう?」

 ふむ。それも良い感じに盛り込むのはどうかな? 例えば、戦争に行く恋人が自分の代わりだと愛する人に贈るとか……死んだ証明じゃないんだよって方向に持って行くのはどうだろう。現代日本では意味がわからなくても、江戸時代には自分の小指を切って送るとかもあったんだから一応通じるんじゃ無いかな? 〝それだけの愛情のしるし〟みたいな。
  ……ちょっとグロいけど。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

処理中です...