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ただいま!
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(まぁ悶々としてても眠れるんだけどね)
起きたらセルトさんの尻尾を抱きしめた状態で、しかもそれをいつ抱きしめたのかもわからないくらいに爆睡してた。あ、でも珍しいことにセルトさんも俺を抱きしめた状態で寝てる。野宿なのに。じっと見ていたら、フルッとまぶたが動いた。おぉ。
「…………」
『おはようございます、セルトさん』
「……ケント。良かった」
寝起きでぼぅっとした顔のセルトさんは、それだけ言ってむぎゅっとしてきた。もう抱きしめられてたから、みっちみちで苦しいくらい。ペシペシと腕を叩いて離れるようにお願いしたけど、そのまま暫く離してくれなかった。
「はぁ。……目が覚めて、いなくなっていたらと」
『それでがっちり抱きしめてたんですか?』
「昨夜は満月だったからな。オーベルシュハルトから離れているから大丈夫だと思ったんだが、不安だった」
そういえば満月の夜にって言われてたんだった。もう関係ないと思ってたから忘れてた。道理で寝ようとした時に眩しかった筈だよ。駄目押しにチュッチュとされて「おはよう」とようやく言ってもらえる。俺からもキスを返して、そのキスがちょっと深くなりかけ……たところで、ヤーミルくんが[ゴハーン!!]と叫んだんだけどね。セルトさんはなんて言ってるのかわからないから急な叫びにビックリしてたけど、説明したら笑ってた。
飛竜って基本的にはあんまり食べないんだって。そして食べるのもあの山にしか自生していない苔やキノコとかで、めっちゃ偏食。そりゃオーベルシュハルトでしか生息しないよね……セルトさんが持っていた乾燥キノコをあげてたけど、テンション低め。
「帰るか」
『そうですね』
無言で「これじゃありませんよ食べますけどね」と食べてるヤーミルくんがかわいそ可愛い。
そんなやり取りの後、空腹を覚えたヤーミルくんが爆走してすごい早さで帰ることになってしまった。きっと行きでお腹が減るくらい頑張ったんだろうね。でもお腹が空いててここまでのスピード出せるとか、ポテンシャル凄いね、ヤーミルくん。
結局フラフラになってオーベルシュハルトに到着。前みたいに中庭に着陸したら、ヤーミルくんは鞍とかを外した途端に[ゴハンゴハーン!]って叫びながら飛んでっちゃった。マイペース!
「おかえりなさいませ、ケント様。――セルトも、お疲れ様でした」
「ただま! だみあしゃ!!」
「……色々と聞きたいことはありますが、まずはお風呂に入られますか? お腹も減ってらっしゃるでしょう」
お風呂に入ってる間にご飯を準備すると言われて、俺のお腹からは〝ぐぅうう〟と……ヤーミルくんのことをどうこう言えません。でも大浴場で体を伸ばして、上げ膳据え膳で出されたご飯を食べて、さぁ色々と話そうかなと思ったところで、まさかの尋問タイムです。
「さて。……何から聞きましょうか」
正座はしていないけどセルトさんと二人でソファにピシッと座って、目の前にはダミアンさん。斜め横にはジュードさんとレフカさん。ジュードさんは我関せずでお茶を飲んでる。レフカさんは苦笑中。
「ケントくん、帰らなかったのね。まさかスリダニアに行くなんてびっくりしたわ……それに…………体を繋げちゃったのねぇ」
「わかる、なんで?」
「そうねぇ……定着しちゃってるの。それはあなたにも覚えがあるのではなくて?」
あ、やっぱり。結構な時間が経ってるけど、チュッチュしなくてもセルトさんとだけはちゃんと会話出来てるからね。念押しで満月の夜も過ぎちゃってるし、完全にこの世界に受け入れられたみたい。横でセルトさんがホッとしてる。
「セルト、ジュード。君たちがいて、なぜケント様を説得しなかったのですか」
「私は確認しましたよ? その上でここに残ることを選んだのは彼です」
しれっとそう答えてるけど、そもそもジュードさんがエピーシュの枝を渡してこなければって話でもあるんだよ。あと、なんとかの瓶。あれが部屋にあったせいでセルトさんが暴走して……まぁそれを言ったらもっと大変なことになるから、お口にチャックするけど。それに、そのアクシデントがなかったら帰ったかと聞かれたら、帰らなかったと思いますとしか答えられないし。
「……陛下になんと言うつもりですか」
「あに、かえったらいう。いえ、いわれた。おれ、がんばる」
兄貴に説明する前に、ダミアンさんに説明することになっちゃったけど。っていうか、兄貴に対してよりも大変かもしれない。どうしても片言になっちゃうから、ちゃんと通じているのかわからないんだよ。
「セルトのことを番として受け入れたのですか?」
「ちゅがい。わからない。でも、いっしょ」
「…………」
ダミアンさんに、こいつ本当に大丈夫かって顔をされてしまった。いやでも番って関係がねぇ……オメガバースの世界観とかで見知ってはいるけど、実感が湧いているかと言われたらわからない。そのあたりを説明しようにも、獣人さんには通じないと思うんだよね。彼らは感覚で理解していそうだし。そこが人と獣人のわだかまりになるのかもしれない。
(それに、セルトさんは俺じゃなくても良いみたいだし……って、自分で考えて凹むわ)
そのあたりは兄貴に愚痴ろう。愚痴ったら最後、めっちゃ怒られると思うけど。
起きたらセルトさんの尻尾を抱きしめた状態で、しかもそれをいつ抱きしめたのかもわからないくらいに爆睡してた。あ、でも珍しいことにセルトさんも俺を抱きしめた状態で寝てる。野宿なのに。じっと見ていたら、フルッとまぶたが動いた。おぉ。
「…………」
『おはようございます、セルトさん』
「……ケント。良かった」
寝起きでぼぅっとした顔のセルトさんは、それだけ言ってむぎゅっとしてきた。もう抱きしめられてたから、みっちみちで苦しいくらい。ペシペシと腕を叩いて離れるようにお願いしたけど、そのまま暫く離してくれなかった。
「はぁ。……目が覚めて、いなくなっていたらと」
『それでがっちり抱きしめてたんですか?』
「昨夜は満月だったからな。オーベルシュハルトから離れているから大丈夫だと思ったんだが、不安だった」
そういえば満月の夜にって言われてたんだった。もう関係ないと思ってたから忘れてた。道理で寝ようとした時に眩しかった筈だよ。駄目押しにチュッチュとされて「おはよう」とようやく言ってもらえる。俺からもキスを返して、そのキスがちょっと深くなりかけ……たところで、ヤーミルくんが[ゴハーン!!]と叫んだんだけどね。セルトさんはなんて言ってるのかわからないから急な叫びにビックリしてたけど、説明したら笑ってた。
飛竜って基本的にはあんまり食べないんだって。そして食べるのもあの山にしか自生していない苔やキノコとかで、めっちゃ偏食。そりゃオーベルシュハルトでしか生息しないよね……セルトさんが持っていた乾燥キノコをあげてたけど、テンション低め。
「帰るか」
『そうですね』
無言で「これじゃありませんよ食べますけどね」と食べてるヤーミルくんがかわいそ可愛い。
そんなやり取りの後、空腹を覚えたヤーミルくんが爆走してすごい早さで帰ることになってしまった。きっと行きでお腹が減るくらい頑張ったんだろうね。でもお腹が空いててここまでのスピード出せるとか、ポテンシャル凄いね、ヤーミルくん。
結局フラフラになってオーベルシュハルトに到着。前みたいに中庭に着陸したら、ヤーミルくんは鞍とかを外した途端に[ゴハンゴハーン!]って叫びながら飛んでっちゃった。マイペース!
「おかえりなさいませ、ケント様。――セルトも、お疲れ様でした」
「ただま! だみあしゃ!!」
「……色々と聞きたいことはありますが、まずはお風呂に入られますか? お腹も減ってらっしゃるでしょう」
お風呂に入ってる間にご飯を準備すると言われて、俺のお腹からは〝ぐぅうう〟と……ヤーミルくんのことをどうこう言えません。でも大浴場で体を伸ばして、上げ膳据え膳で出されたご飯を食べて、さぁ色々と話そうかなと思ったところで、まさかの尋問タイムです。
「さて。……何から聞きましょうか」
正座はしていないけどセルトさんと二人でソファにピシッと座って、目の前にはダミアンさん。斜め横にはジュードさんとレフカさん。ジュードさんは我関せずでお茶を飲んでる。レフカさんは苦笑中。
「ケントくん、帰らなかったのね。まさかスリダニアに行くなんてびっくりしたわ……それに…………体を繋げちゃったのねぇ」
「わかる、なんで?」
「そうねぇ……定着しちゃってるの。それはあなたにも覚えがあるのではなくて?」
あ、やっぱり。結構な時間が経ってるけど、チュッチュしなくてもセルトさんとだけはちゃんと会話出来てるからね。念押しで満月の夜も過ぎちゃってるし、完全にこの世界に受け入れられたみたい。横でセルトさんがホッとしてる。
「セルト、ジュード。君たちがいて、なぜケント様を説得しなかったのですか」
「私は確認しましたよ? その上でここに残ることを選んだのは彼です」
しれっとそう答えてるけど、そもそもジュードさんがエピーシュの枝を渡してこなければって話でもあるんだよ。あと、なんとかの瓶。あれが部屋にあったせいでセルトさんが暴走して……まぁそれを言ったらもっと大変なことになるから、お口にチャックするけど。それに、そのアクシデントがなかったら帰ったかと聞かれたら、帰らなかったと思いますとしか答えられないし。
「……陛下になんと言うつもりですか」
「あに、かえったらいう。いえ、いわれた。おれ、がんばる」
兄貴に説明する前に、ダミアンさんに説明することになっちゃったけど。っていうか、兄貴に対してよりも大変かもしれない。どうしても片言になっちゃうから、ちゃんと通じているのかわからないんだよ。
「セルトのことを番として受け入れたのですか?」
「ちゅがい。わからない。でも、いっしょ」
「…………」
ダミアンさんに、こいつ本当に大丈夫かって顔をされてしまった。いやでも番って関係がねぇ……オメガバースの世界観とかで見知ってはいるけど、実感が湧いているかと言われたらわからない。そのあたりを説明しようにも、獣人さんには通じないと思うんだよね。彼らは感覚で理解していそうだし。そこが人と獣人のわだかまりになるのかもしれない。
(それに、セルトさんは俺じゃなくても良いみたいだし……って、自分で考えて凹むわ)
そのあたりは兄貴に愚痴ろう。愚痴ったら最後、めっちゃ怒られると思うけど。
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