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壮行会はまさかの食べ放題
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正装といわれつつ、でもサイズないし~と思っていました。ちゃんとありましたよ。
(ダミアンさんんんんん……!!)
出来る執事は兄貴の昔の服だってちゃんと取っておいて、更に俺のサイズに直してくれるのもお手の物。「お色味が同じですので助かりました」って言われたけど、顔立ちは全く似ていないんですよ?
ちょっと着慣れてきたシャツとズボンだけど、今日はそれにループタイをつけてジレとジャケットを装備。兄貴とか尻尾のある人は、短めのジレにお尻側の裾が長めのジャケットなんだって。切れ込みを深く取って尻尾の邪魔をしないようにするらしいよ。俺は尻尾ないけど、まぁタキシードと思えば……うん、馬子にも衣装ですね。
「似合ってる」
そう言ってくれたセルトさんはこの国の騎士服を装備。貴方のほうが似合っておりますよ! 騎士服のカッチリ感、めっちゃ格好良いですよ!!
もう除隊したからって断ったらしいんだけどね。護衛隊からは除籍してるけど、近衛には在籍してるから良いだろうって押し切られてた。セルトさん、本当はそっちからも降りたいらしいんだ。「自分にはそんな資格は……」って言ってた。こっちに帰ってきた時に顔出しして、暫く離してもらえないくらい慕われてるんだから良いんじゃないかなぁ……なんて思ってしまう。でもカーライルさんのあれこれがあるから、本人的には難しいんだろうね。ほんと、兄貴にはカーライルさんを奪還してもらわないと!
(俺、それを見届けられないけど……)
代わりにセルトさんに一発ぶん殴ってもら……いや、駄目だな。一発で終わらない可能性がある。兄貴も何発も入れそうだし、ダミアンさんは……にっこりしながらエグいのをやりそう。駄目だ。この国で出会った人、皆さん脳筋っぽい。
「どうした?」
「ない、なにも……えと、いく、ますか?」
「そうだな。一緒に行こう。今夜は立食と聞いているが、俺の傍を離れないでくれ」
そう言って腰に手を回されてしまった。ちょっと気恥ずかしいけど、おてて繋いでじゃなくて良かった。ついでに少し切なくなった気持ちも霧散したので、壮行会のおこなわれる大広間へれっつごー!!
『でっか……!!』
大広間、思った以上にでっかかった。
俺がこのお城で歩いてるところなんてほんの一角で、全部見て回った訳じゃないけどさ……こんな場所があったなんて全く知らなかった。建築とかに詳しくないからあれっぽいとは言えないんだけど、とりあえず舞踏会とか開けそうな広さはある。でも少しシンプルかな? 既に来ている人たちも、あれ……ベルサイユっぽさはない。男性は騎士服やクラシカルな礼服っぽい感じだし、女性はちょっと豪勢なワンピースって感じ。お尻の部分だけモコッとなってるのはなんでだろ。
キョロキョロと見回していたら、「おせーわ。お前ら、早く食わないと無くなるぞ」と言いながら兄貴が登場。あの、すみません……なんでマント付きの礼服を着てお皿いっぱいに食い物持ってるの?!
『兄貴、もうちょっと抑えなよ!』
「あん?」
『お皿に山盛りって食いしん坊みたいじゃん!! っていうか、開会の挨拶とかあるんじゃないの?!』
こういう時って参加者が集まったところで満を持して王様が登場して、皆のうんちゃらかんちゃらを願って~みたいなこと言って、「乾杯!」ってするんじゃないの??
よく見たら周りの人たちも普通に食べてる……たまに兄貴のとこに挨拶に来るくらいで、それも短い時間で後はおしゃべり三割、モグモグ七割。えぇえ……食べるのが基本?
『なんか……椅子のない食べ放題みたい』
「そんなモンだぞ? どっかからの賓客とかがいるならもうちっと格式張ったやつにするけど、身内だけならこんなモン」
士気を上げるなら、好き勝手に美味しい物を食べて飲んでってしたほうが上がるだろって言われちゃった。いや、そうかもしれないけどさ。フランクだね。
「ケント、とりあえずこれだけ持ってきた。あちらで食べよう。――陛下も、こちらでは邪魔になりますから」
『え? ……あ、美味しそう』
「二人きりで食いてぇって顔に書いてあるぞ、セルト。行くけどな」
アペタイザーで良いんだっけ? お皿に綺麗に盛り付けて、セルトさんが渡してくれた。カナッペみたいなやつと、チーズと野菜を混ぜたサラダみたいなのと、煮こごりみたいなやつ。所々に置かれてるバーテーブルへ三人で移動して、兄貴は給仕の人に飲み物を頼んでる。そっか。立食だけど、飲み物も飲みたければこういうところが必要なんだ。お皿とフォークで両手が塞がっちゃうもんね。
『セルトさんは食べないの?』
「あー……一応な、護衛って意識があるから遠慮してんだよ。――セルト、気にせずに食え。この後ティグレが来たら食う暇なんてなくなるぞ」
『セルトさんのお父さんって騒がしい人なの?』
「それは見てのお楽しみ。お前も、今のうちに食えるだけ食っとけ」
もしかして、兄貴が食いしん坊盛りをしてるのもそれのせいなのかな? これ以上聞いたところで教えてくれなさそうだから、セルトさんの持ってきてくれた前菜を摘まむ。あ、このカナッペ美味しい。プチって潰れたのは魚卵じゃなくて木の実かな……あとでこれも名前を教えてもらわないと。でも勉強抜きで食べるご飯って格別だぁ。美味しい。
お代わりはセルトさんが取りに行ってくれて(ちゃんと兄貴の分も)、それをあーでもないこーでもないって言いながら食べていると、出入り口のところで「わっ」と声が上がった。
「ん。来たな。……健翔、覚悟を決めろ」
『え? どういう………………うひょぉ?!』
どういうこと? って聞こうとしたら、ドカドカドカって勢いでこっちへ歩いてきた人に高い高いをされて、変な声が出てしまった。え? 誰? いや前情報からしてティグレさんだと思うんだけど、その前に〝高い高い〟が高い高い!!
(ダミアンさんんんんん……!!)
出来る執事は兄貴の昔の服だってちゃんと取っておいて、更に俺のサイズに直してくれるのもお手の物。「お色味が同じですので助かりました」って言われたけど、顔立ちは全く似ていないんですよ?
ちょっと着慣れてきたシャツとズボンだけど、今日はそれにループタイをつけてジレとジャケットを装備。兄貴とか尻尾のある人は、短めのジレにお尻側の裾が長めのジャケットなんだって。切れ込みを深く取って尻尾の邪魔をしないようにするらしいよ。俺は尻尾ないけど、まぁタキシードと思えば……うん、馬子にも衣装ですね。
「似合ってる」
そう言ってくれたセルトさんはこの国の騎士服を装備。貴方のほうが似合っておりますよ! 騎士服のカッチリ感、めっちゃ格好良いですよ!!
もう除隊したからって断ったらしいんだけどね。護衛隊からは除籍してるけど、近衛には在籍してるから良いだろうって押し切られてた。セルトさん、本当はそっちからも降りたいらしいんだ。「自分にはそんな資格は……」って言ってた。こっちに帰ってきた時に顔出しして、暫く離してもらえないくらい慕われてるんだから良いんじゃないかなぁ……なんて思ってしまう。でもカーライルさんのあれこれがあるから、本人的には難しいんだろうね。ほんと、兄貴にはカーライルさんを奪還してもらわないと!
(俺、それを見届けられないけど……)
代わりにセルトさんに一発ぶん殴ってもら……いや、駄目だな。一発で終わらない可能性がある。兄貴も何発も入れそうだし、ダミアンさんは……にっこりしながらエグいのをやりそう。駄目だ。この国で出会った人、皆さん脳筋っぽい。
「どうした?」
「ない、なにも……えと、いく、ますか?」
「そうだな。一緒に行こう。今夜は立食と聞いているが、俺の傍を離れないでくれ」
そう言って腰に手を回されてしまった。ちょっと気恥ずかしいけど、おてて繋いでじゃなくて良かった。ついでに少し切なくなった気持ちも霧散したので、壮行会のおこなわれる大広間へれっつごー!!
『でっか……!!』
大広間、思った以上にでっかかった。
俺がこのお城で歩いてるところなんてほんの一角で、全部見て回った訳じゃないけどさ……こんな場所があったなんて全く知らなかった。建築とかに詳しくないからあれっぽいとは言えないんだけど、とりあえず舞踏会とか開けそうな広さはある。でも少しシンプルかな? 既に来ている人たちも、あれ……ベルサイユっぽさはない。男性は騎士服やクラシカルな礼服っぽい感じだし、女性はちょっと豪勢なワンピースって感じ。お尻の部分だけモコッとなってるのはなんでだろ。
キョロキョロと見回していたら、「おせーわ。お前ら、早く食わないと無くなるぞ」と言いながら兄貴が登場。あの、すみません……なんでマント付きの礼服を着てお皿いっぱいに食い物持ってるの?!
『兄貴、もうちょっと抑えなよ!』
「あん?」
『お皿に山盛りって食いしん坊みたいじゃん!! っていうか、開会の挨拶とかあるんじゃないの?!』
こういう時って参加者が集まったところで満を持して王様が登場して、皆のうんちゃらかんちゃらを願って~みたいなこと言って、「乾杯!」ってするんじゃないの??
よく見たら周りの人たちも普通に食べてる……たまに兄貴のとこに挨拶に来るくらいで、それも短い時間で後はおしゃべり三割、モグモグ七割。えぇえ……食べるのが基本?
『なんか……椅子のない食べ放題みたい』
「そんなモンだぞ? どっかからの賓客とかがいるならもうちっと格式張ったやつにするけど、身内だけならこんなモン」
士気を上げるなら、好き勝手に美味しい物を食べて飲んでってしたほうが上がるだろって言われちゃった。いや、そうかもしれないけどさ。フランクだね。
「ケント、とりあえずこれだけ持ってきた。あちらで食べよう。――陛下も、こちらでは邪魔になりますから」
『え? ……あ、美味しそう』
「二人きりで食いてぇって顔に書いてあるぞ、セルト。行くけどな」
アペタイザーで良いんだっけ? お皿に綺麗に盛り付けて、セルトさんが渡してくれた。カナッペみたいなやつと、チーズと野菜を混ぜたサラダみたいなのと、煮こごりみたいなやつ。所々に置かれてるバーテーブルへ三人で移動して、兄貴は給仕の人に飲み物を頼んでる。そっか。立食だけど、飲み物も飲みたければこういうところが必要なんだ。お皿とフォークで両手が塞がっちゃうもんね。
『セルトさんは食べないの?』
「あー……一応な、護衛って意識があるから遠慮してんだよ。――セルト、気にせずに食え。この後ティグレが来たら食う暇なんてなくなるぞ」
『セルトさんのお父さんって騒がしい人なの?』
「それは見てのお楽しみ。お前も、今のうちに食えるだけ食っとけ」
もしかして、兄貴が食いしん坊盛りをしてるのもそれのせいなのかな? これ以上聞いたところで教えてくれなさそうだから、セルトさんの持ってきてくれた前菜を摘まむ。あ、このカナッペ美味しい。プチって潰れたのは魚卵じゃなくて木の実かな……あとでこれも名前を教えてもらわないと。でも勉強抜きで食べるご飯って格別だぁ。美味しい。
お代わりはセルトさんが取りに行ってくれて(ちゃんと兄貴の分も)、それをあーでもないこーでもないって言いながら食べていると、出入り口のところで「わっ」と声が上がった。
「ん。来たな。……健翔、覚悟を決めろ」
『え? どういう………………うひょぉ?!』
どういうこと? って聞こうとしたら、ドカドカドカって勢いでこっちへ歩いてきた人に高い高いをされて、変な声が出てしまった。え? 誰? いや前情報からしてティグレさんだと思うんだけど、その前に〝高い高い〟が高い高い!!
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