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託された物の意味
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キスしてる理由を知らないアデラールさんが何か言っていたけど、俺が泣き止むまでチュッチュしていたら途中で何も言わなくなった。ご、ごめんなさい。バカップルみたいなことしてますけど、これしないとセルトさんと会話出来ないんですよ!
「悪かった……」
「ひっく……こわいセルトさん、きらい」
「……すまない」
「はぁ……よくわからないけど、止めてくれて良かったよ。僕だと単純に腕力で競り負けるから」
「アデラールも、悪かった。頭に血が上っていた……」
涙と鼻水でびしょびしょだったけど、セルトさんが抱きしめてくれてるから遠慮なく服で拭わせてもらお。あとで「うわ……」ってなっても知らない。それだけの恐怖を与えた責任を取ってもらおう。あと、今になって足の力が抜けてきたから、思いっきり体重を掛けてやる。うん。全然、びくともしてないですね……筋肉ぅ。
「まぁ番の涙には負けるよね。うちの親父もお袋が泣くのには弱いもん。まぁ僕もだけどさ――とりあえず、責任持ってケントくん泣き止ませてね。俺はヤーミルの状態を確認してるから」
「あ、アデラールさん! カーライルさんから荷物を預かってるんです!!」
「? ……ケントくん、何か言った?」
「え? だから、荷物……」
そだそだ。それも伝えておかないと。なのに、言われたアデラールさんには伝わらなかったらしい。方向的に自分へ向けて言われてる、というのは理解してるみたいだけど。やっぱりチューし合わないと会話出来ないのは確定なのかな。でもこの状態でアデラールさんともチューするのは……どうしたら良いのか悩んでいたら、セルトさんが「……大丈夫だ」と呟いた。
「アデラール。その、俺とケントはキスをすると言葉が一時的に通じるんだ」
「は? えーっともしかして、今のキスで何言ってるかわかったとか、そういうこと?」
「あぁ。カーライルから、何か荷物を預かっているらしい」
まだカーライルさんの名前を呼ぶのは苦しそうだったけど、さっきみたいな状態にはならなかった。なんであんなに豹変したんだろう。そこに鍵があるような気がするけど、セルトさんから言い出すのを待ったほうが良いのかな。それとも「すごい怖かった!」て脅したら話してくれるかな? でもそういうのとはちょっと違うんだよね。
「前足の、帰巣珠のところ。セルトさんに渡すようにって……中身は知らないです」
「……アデラール。帰巣珠を確認してくれ」
結構大きな荷物だったから、薄暗くなってきても直ぐに確認出来たらしい。「うわ、カーライルの匂いするな」って軽口を叩きながら開けたアデラールさんだったけど、中身を確認した途端に口元に手を当てた。
「……ケントくん、カーライルに他に何か言われた?」
「他に? セルトさんに〝幸せになれ〟と、あとその荷物を渡すようにっていうことと……あ、あとレオルカさんに〝すまない〟って伝言ももらったんだった! セルトさん、レオルカさんって誰ですか?」
ついでにこれも渡されたよと、首に引っかけていた鱗ペンダントも見せた。暗くてちょっと色が見えにくいのが残念。
「陛下に……――あぁ、そういえば言っていなかったな。レオルカと言うのは陛下の名前だ。レオルカ・グロリオ・オーベルシュハルト」
「あ、そうだったんだ。そういえば黒髪黒目は王家にしか産まれないって言ってましたもんね。やっぱり俺の髪色を見て、カーライルさんは〝レオルカ〟って言ったのかな」
「多分、そうだろう。――アデラール、さっきからどうした?」
なるほどね。王様に悪いことしちゃって逃げて……? そんな悪いことするような人に見えなかったけどな。さっきのセルトさんの感じだと、それこそ王様を殺してくらいのことをしていそうだったけど……王様、行方不明だったけど生きてるんだよね? それなら会いに行って謝れば? と思うんだけど、もっと複雑なんだろうか。うーん。
『ん? そういえば荷物の中身ってなんだったんですか??』
アデラールさんの持ってた荷物、セルトさんものぞき込んだら動かなくなっちゃった。そんなにヤバいものだったのかな~と見に行くと、なんかふさふさした物が入ってた。
赤くて、ふさふさしてて、一抱えくらいあって……暗くなってきてわかりにくいけど、似た色を今日見た気がする。カーライルさんの赤色。
『あ、しっぽ……?』
ハロウィンの時、仮装で見たりしたサイズ感。そういえばカーライルさんのお尻に尻尾って生えてなかったね。今気付いた。でもなんで尻尾? それをセルトさんに預ける意味は??
『セルトさ……?』
これどういう意味ですか? って聞こうとしたら、セルトさんが泣いてた。さっきの俺みたいな泣き顔じゃなくて、ただただ呆然と……よく見ればアデラールさんも苦悶の表情だった。よくわからないけど、楽しいことじゃない雰囲気ってことはわかる。
切り落とした尻尾を送る意味。
二人の認識と俺の認識に大きな乖離があるような気がして……ゴクリと唾を飲み込んだ音がやけに響いた。
「悪かった……」
「ひっく……こわいセルトさん、きらい」
「……すまない」
「はぁ……よくわからないけど、止めてくれて良かったよ。僕だと単純に腕力で競り負けるから」
「アデラールも、悪かった。頭に血が上っていた……」
涙と鼻水でびしょびしょだったけど、セルトさんが抱きしめてくれてるから遠慮なく服で拭わせてもらお。あとで「うわ……」ってなっても知らない。それだけの恐怖を与えた責任を取ってもらおう。あと、今になって足の力が抜けてきたから、思いっきり体重を掛けてやる。うん。全然、びくともしてないですね……筋肉ぅ。
「まぁ番の涙には負けるよね。うちの親父もお袋が泣くのには弱いもん。まぁ僕もだけどさ――とりあえず、責任持ってケントくん泣き止ませてね。俺はヤーミルの状態を確認してるから」
「あ、アデラールさん! カーライルさんから荷物を預かってるんです!!」
「? ……ケントくん、何か言った?」
「え? だから、荷物……」
そだそだ。それも伝えておかないと。なのに、言われたアデラールさんには伝わらなかったらしい。方向的に自分へ向けて言われてる、というのは理解してるみたいだけど。やっぱりチューし合わないと会話出来ないのは確定なのかな。でもこの状態でアデラールさんともチューするのは……どうしたら良いのか悩んでいたら、セルトさんが「……大丈夫だ」と呟いた。
「アデラール。その、俺とケントはキスをすると言葉が一時的に通じるんだ」
「は? えーっともしかして、今のキスで何言ってるかわかったとか、そういうこと?」
「あぁ。カーライルから、何か荷物を預かっているらしい」
まだカーライルさんの名前を呼ぶのは苦しそうだったけど、さっきみたいな状態にはならなかった。なんであんなに豹変したんだろう。そこに鍵があるような気がするけど、セルトさんから言い出すのを待ったほうが良いのかな。それとも「すごい怖かった!」て脅したら話してくれるかな? でもそういうのとはちょっと違うんだよね。
「前足の、帰巣珠のところ。セルトさんに渡すようにって……中身は知らないです」
「……アデラール。帰巣珠を確認してくれ」
結構大きな荷物だったから、薄暗くなってきても直ぐに確認出来たらしい。「うわ、カーライルの匂いするな」って軽口を叩きながら開けたアデラールさんだったけど、中身を確認した途端に口元に手を当てた。
「……ケントくん、カーライルに他に何か言われた?」
「他に? セルトさんに〝幸せになれ〟と、あとその荷物を渡すようにっていうことと……あ、あとレオルカさんに〝すまない〟って伝言ももらったんだった! セルトさん、レオルカさんって誰ですか?」
ついでにこれも渡されたよと、首に引っかけていた鱗ペンダントも見せた。暗くてちょっと色が見えにくいのが残念。
「陛下に……――あぁ、そういえば言っていなかったな。レオルカと言うのは陛下の名前だ。レオルカ・グロリオ・オーベルシュハルト」
「あ、そうだったんだ。そういえば黒髪黒目は王家にしか産まれないって言ってましたもんね。やっぱり俺の髪色を見て、カーライルさんは〝レオルカ〟って言ったのかな」
「多分、そうだろう。――アデラール、さっきからどうした?」
なるほどね。王様に悪いことしちゃって逃げて……? そんな悪いことするような人に見えなかったけどな。さっきのセルトさんの感じだと、それこそ王様を殺してくらいのことをしていそうだったけど……王様、行方不明だったけど生きてるんだよね? それなら会いに行って謝れば? と思うんだけど、もっと複雑なんだろうか。うーん。
『ん? そういえば荷物の中身ってなんだったんですか??』
アデラールさんの持ってた荷物、セルトさんものぞき込んだら動かなくなっちゃった。そんなにヤバいものだったのかな~と見に行くと、なんかふさふさした物が入ってた。
赤くて、ふさふさしてて、一抱えくらいあって……暗くなってきてわかりにくいけど、似た色を今日見た気がする。カーライルさんの赤色。
『あ、しっぽ……?』
ハロウィンの時、仮装で見たりしたサイズ感。そういえばカーライルさんのお尻に尻尾って生えてなかったね。今気付いた。でもなんで尻尾? それをセルトさんに預ける意味は??
『セルトさ……?』
これどういう意味ですか? って聞こうとしたら、セルトさんが泣いてた。さっきの俺みたいな泣き顔じゃなくて、ただただ呆然と……よく見ればアデラールさんも苦悶の表情だった。よくわからないけど、楽しいことじゃない雰囲気ってことはわかる。
切り落とした尻尾を送る意味。
二人の認識と俺の認識に大きな乖離があるような気がして……ゴクリと唾を飲み込んだ音がやけに響いた。
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