4 / 57
旅の仲間というかお荷物
しおりを挟む
そんなこんなで、旅の仲間が加わりました! てってれ~ん!!
水をくれたお兄さんこと、セルトさん。年齢は俺より二つ上の二十歳、狼の獣人だそうだ。二十歳にしては老けてるな~と思ってしまってごめん。まぁその老けっぷりも、基本的に無表情だからなんだよね……代わりに耳がピンとしたり、ヘタッとしたり、そんなとこは表情豊かなんだけど。
そんなセルトさんと、ただいまお馬さんでパッカラパッカラ移動しています。
馬。向こうで本物を間近で見ることはなかったから、元々のサイズ感がよくわからないんだけど……とりあえずデカい。あと、明らかに違うって部分だと牛みたいな二本角が耳の前あたりからニョキッと生えてる。下手に怒らせるとその角でブスッと刺されるんだってさ。
俺のことはセルトさんが言い含めて? 受け入れてもらえたけど。
お名前はレティアちゃん。女の子だけどそこらの雄馬よりも気性が荒くて、ちょっかい出してくるヤツを何匹か屠ってきたらしい……殺してはいないことを祈る。
――ヒュンッ
『⊡≶⊶⋊∐kEM⊪B』
言葉は通じないけど、三日間一緒に過ごしてきてニュアンスはわかった。了承の意味を込めて頷けば、セルトさんがレティアちゃんから降りて森に走って行く。
今のね、セルトさんが背中に持ってた弓を引いた音。素早すぎて、しかも「獲物? どこに?」な距離で打ち落とすから、ボケッと揺られているとこういうことが起きる。旅の仲間っていうか、どっちかというとセルトさんとレティアちゃんの旅に俺が加わっただけかもしれない……
こういう時でもレティアちゃんは暴れずに、同じところで立ち止まってセルトさんを待っているんだ。良いよね、相棒って感じ。俺も役に立てるようになりたいんだけど。
『⊡∇5X∠⊎⊡⊿⊄≴、⊩⋮8⋪⋀⋨≘⊮n⋧?』
「セルトさん、おかえりなさい」
『⊕⋭w≓⊔⋣』
うーん、多分これは「大丈夫だったか? 何もなかったか?」と「ただいま」だな。悲しいことに、俺の立場って〝保護した迷子〟から変わっていない。むしろお荷物かもしれない。
(十八歳って伝えた時、セルトさんめっちゃ驚いてたからなぁ……)
こっちの世界では、というかセルトさんの住む《オーベルシュハルト》って国は、成人年齢が十八歳なんだって。俺のこと、最初は十五、六歳(かそれより下に)見えたらしいよ。下手したら中学生って言われて、俺は涙目です。向こうで童顔って言われたことないんだけど……(そして「わぁ! 異世界あるあるぅ!!」と言ってしまって、セルトさんに微妙な顔をされた)
そんな俺の背後にひょいっと乗り上げてきたセルトさんに、手渡されてた手綱を返す。俺、ほんとに何の役にも立ててないな。
しょぼっとしてたら背後から回った手に唇をトントンとされた。指なり手の甲なりで俺の唇をトントンと叩くのは、何か会話がしたい時の合図だ。俺から会話したい時は、セルトさんに顔を向けて自分の唇を叩いてる。
(相変わらずディープなキッスをしてしか会話出来ないのも不便だよね……っていうか、セルトさんは嫌じゃないのかな? 俺はまぁ、仕方ないかなと思ってはいるけど。それこそ犬に噛まれた~みたいな……結構なイケメンさんだから、そんなん言ったら世の婦女子に怒られるね。腐女子は大歓喜だろうけど)
「んんっ……ふ、は……ぁん、ん……」
問題はちょっと気持ちよくなってきているところかな! 俺が!!
最初はぬるっとしてるなーとしか思わなかったベロが、なんかぞわってするようになったんだよ。むちゅっとすれば良いだけなのに、徐々に時間が長くなってる気がするし。念入りなのは性格なんだろうか……
背後から押さえ込まれる形でチューされてるから逃げ場がないし、逃げるにしても馬上だし。あ、そこ駄目。
「や、あ……ん……ふぁ…………」
舌を上下に吸われるようにされるの、危険。痛くはないけどぞわぞわが! 尾てい骨に!!
ちゅぷっと音を立てながらセルトさんが離れてくれたけど、俺のライフはゼロです。軟体動物みたいになった俺は、そのままセルトさんの胸に背中を預ける。すると、めくれ上がっていたマントを目深に被らされた。
「この先、少し森に入ったところに水辺がある。今夜はそこで休むとしよう」
「ふぁい……」
このマントもセルトさんの持ち物。めっちゃでっかいから、俺だと頭から被っても膝あたりまで隠れる。むしろ毛布に近い。雨とか降ってきた時にはセルトさんも頭から被るらしいけど、もうちょっと丈は短くなるらしいよ! 身長差!!
なんでそんな物を頭から被っているかというと、日除けの意味もあるけど主に顔を隠すため。顔というか、頭――黒髪で黒目ってやっぱり珍しいらしい。正確には〝オーベルシュハルトの王家でしか産まれない〟んだそうな。しかし俺がその王家の落とし胤じゃないことは間違いない。セルトさんもそこは理解している。
ただねぇ……どこの世界でも悪いことを考える人たちはいるそうで、そういう人たちに変に利用されるよりは国で保護したほうが良いだろう、というのがセルトさんの考え。性奴隷エンドも男娼エンドも嫌だけどさ、犯罪エンドも嫌ですよ。その場合、もしかしたらセルトさんと敵対するかもしれないし……
そんなの嫌だよね、やっぱり。
水をくれたお兄さんこと、セルトさん。年齢は俺より二つ上の二十歳、狼の獣人だそうだ。二十歳にしては老けてるな~と思ってしまってごめん。まぁその老けっぷりも、基本的に無表情だからなんだよね……代わりに耳がピンとしたり、ヘタッとしたり、そんなとこは表情豊かなんだけど。
そんなセルトさんと、ただいまお馬さんでパッカラパッカラ移動しています。
馬。向こうで本物を間近で見ることはなかったから、元々のサイズ感がよくわからないんだけど……とりあえずデカい。あと、明らかに違うって部分だと牛みたいな二本角が耳の前あたりからニョキッと生えてる。下手に怒らせるとその角でブスッと刺されるんだってさ。
俺のことはセルトさんが言い含めて? 受け入れてもらえたけど。
お名前はレティアちゃん。女の子だけどそこらの雄馬よりも気性が荒くて、ちょっかい出してくるヤツを何匹か屠ってきたらしい……殺してはいないことを祈る。
――ヒュンッ
『⊡≶⊶⋊∐kEM⊪B』
言葉は通じないけど、三日間一緒に過ごしてきてニュアンスはわかった。了承の意味を込めて頷けば、セルトさんがレティアちゃんから降りて森に走って行く。
今のね、セルトさんが背中に持ってた弓を引いた音。素早すぎて、しかも「獲物? どこに?」な距離で打ち落とすから、ボケッと揺られているとこういうことが起きる。旅の仲間っていうか、どっちかというとセルトさんとレティアちゃんの旅に俺が加わっただけかもしれない……
こういう時でもレティアちゃんは暴れずに、同じところで立ち止まってセルトさんを待っているんだ。良いよね、相棒って感じ。俺も役に立てるようになりたいんだけど。
『⊡∇5X∠⊎⊡⊿⊄≴、⊩⋮8⋪⋀⋨≘⊮n⋧?』
「セルトさん、おかえりなさい」
『⊕⋭w≓⊔⋣』
うーん、多分これは「大丈夫だったか? 何もなかったか?」と「ただいま」だな。悲しいことに、俺の立場って〝保護した迷子〟から変わっていない。むしろお荷物かもしれない。
(十八歳って伝えた時、セルトさんめっちゃ驚いてたからなぁ……)
こっちの世界では、というかセルトさんの住む《オーベルシュハルト》って国は、成人年齢が十八歳なんだって。俺のこと、最初は十五、六歳(かそれより下に)見えたらしいよ。下手したら中学生って言われて、俺は涙目です。向こうで童顔って言われたことないんだけど……(そして「わぁ! 異世界あるあるぅ!!」と言ってしまって、セルトさんに微妙な顔をされた)
そんな俺の背後にひょいっと乗り上げてきたセルトさんに、手渡されてた手綱を返す。俺、ほんとに何の役にも立ててないな。
しょぼっとしてたら背後から回った手に唇をトントンとされた。指なり手の甲なりで俺の唇をトントンと叩くのは、何か会話がしたい時の合図だ。俺から会話したい時は、セルトさんに顔を向けて自分の唇を叩いてる。
(相変わらずディープなキッスをしてしか会話出来ないのも不便だよね……っていうか、セルトさんは嫌じゃないのかな? 俺はまぁ、仕方ないかなと思ってはいるけど。それこそ犬に噛まれた~みたいな……結構なイケメンさんだから、そんなん言ったら世の婦女子に怒られるね。腐女子は大歓喜だろうけど)
「んんっ……ふ、は……ぁん、ん……」
問題はちょっと気持ちよくなってきているところかな! 俺が!!
最初はぬるっとしてるなーとしか思わなかったベロが、なんかぞわってするようになったんだよ。むちゅっとすれば良いだけなのに、徐々に時間が長くなってる気がするし。念入りなのは性格なんだろうか……
背後から押さえ込まれる形でチューされてるから逃げ場がないし、逃げるにしても馬上だし。あ、そこ駄目。
「や、あ……ん……ふぁ…………」
舌を上下に吸われるようにされるの、危険。痛くはないけどぞわぞわが! 尾てい骨に!!
ちゅぷっと音を立てながらセルトさんが離れてくれたけど、俺のライフはゼロです。軟体動物みたいになった俺は、そのままセルトさんの胸に背中を預ける。すると、めくれ上がっていたマントを目深に被らされた。
「この先、少し森に入ったところに水辺がある。今夜はそこで休むとしよう」
「ふぁい……」
このマントもセルトさんの持ち物。めっちゃでっかいから、俺だと頭から被っても膝あたりまで隠れる。むしろ毛布に近い。雨とか降ってきた時にはセルトさんも頭から被るらしいけど、もうちょっと丈は短くなるらしいよ! 身長差!!
なんでそんな物を頭から被っているかというと、日除けの意味もあるけど主に顔を隠すため。顔というか、頭――黒髪で黒目ってやっぱり珍しいらしい。正確には〝オーベルシュハルトの王家でしか産まれない〟んだそうな。しかし俺がその王家の落とし胤じゃないことは間違いない。セルトさんもそこは理解している。
ただねぇ……どこの世界でも悪いことを考える人たちはいるそうで、そういう人たちに変に利用されるよりは国で保護したほうが良いだろう、というのがセルトさんの考え。性奴隷エンドも男娼エンドも嫌だけどさ、犯罪エンドも嫌ですよ。その場合、もしかしたらセルトさんと敵対するかもしれないし……
そんなの嫌だよね、やっぱり。
13
お気に入りに追加
657
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
【完結】売れ残りのΩですが隠していた××をαの上司に見られてから妙に優しくされててつらい。
天城
BL
ディランは売れ残りのΩだ。貴族のΩは十代には嫁入り先が決まるが、儚さの欠片もない逞しい身体のせいか完全に婚期を逃していた。
しかもディランの身体には秘密がある。陥没乳首なのである。恥ずかしくて大浴場にもいけないディランは、結婚は諦めていた。
しかしαの上司である騎士団長のエリオットに事故で陥没乳首を見られてから、彼はとても優しく接してくれる。始めは気まずかったものの、穏やかで壮年の色気たっぷりのエリオットの声を聞いていると、落ち着かないようなむずがゆいような、不思議な感じがするのだった。
【攻】騎士団長のα・巨体でマッチョの美形(黒髪黒目の40代)×【受】売れ残りΩ副団長・細マッチョ(陥没乳首の30代・銀髪紫目・無自覚美形)色事に慣れない陥没乳首Ωを、あの手この手で囲い込み、執拗な乳首フェラで籠絡させる独占欲つよつよαによる捕獲作戦。全3話+番外2話
異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!
鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。
この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。
界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。
そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。
【完結】聖女として召喚された挙句、仏頂面のイケメン騎士に溺愛される!?俺はオトコだ!!
りゆき
BL
トラウマ超絶美形スパダリ✕平凡青年との王道ラブロマンス!?
「聖女召喚に成功したぞ!!」
は!? ここはどこだ?
見知らぬ大広間に見知らぬ人々。
着ている服装も見慣れぬ服装ばかり。様々な髪色に瞳の色。明らかに日本人ではないと分かる人々。
そんな人々が声高らかに叫ぶ言葉。
せいじょ? せ、い、じょ? ん?
ワァァァ!! と歓声が上がっていたかと思えば、その歓声は徐々に怪訝な表情と声へと変わった。
「…………せ、い、じょ?」
俺の台詞だ。
聖女ってなんだよ!
俺はオトコだー!!
聖女として間違えて召喚されてしまった俺。
どうすりゃ良いんだと、そのまま王宮で飼い殺し状態だが、
なんだか護衛騎士の超絶美形の男と仲良くなってきたと思ったら妙な方向に……
トラウマ持ち?の超絶美形スパダリ✕平凡青年との王道ラブロマンス!?
※全30話。毎日3回更新します。
※R18回に印は入れておりませんのでご注意ください。
※こちらの作品はムーンライトノベルズにて完結済。
【完結】転生じぃちゃん助けた子犬に喰われる!?
湊未来
BL
『ななな、なんで頭にウサギの耳が生えているんだぁぁぁ!!!!』
時の神の気まぐれなお遊びに巻き込まれた哀れな男が、獣人国アルスター王国で、絶叫という名の産声をあげ誕生した。
名を『ユリアス・ラパン』と言う。
生を全うし天へと召された爺さんが、何の因果か、過去の記憶を残したまま、兎獣人へと転生してしまった。
過去の記憶を武器にやりたい放題。無意識に、周りの肉食獣人をも魅了していくからさぁ大変!
果たして、兎獣人に輪廻転生してしまった爺さんは、第二の人生を平和に、のほほんと過ごす事が出来るのだろうか?
兎獣人に異様な執着を見せる狼獣人✖️爺さんの記憶を残したまま輪廻転生してしまった兎獣人のハートフルBLコメディ。時々、シリアス。
※BLは初投稿です。温かな目でご覧頂けると幸いです。
※R-18は出てきません。未遂はあるので、保険でR-15つけておきます。
※男性が妊娠する世界観ですが、そう言った描写は出てきません。
激レア能力の所持がバレたら監禁なので、バレないように生きたいと思います
森野いつき
BL
■BL大賞に応募中。よかったら投票お願いします。
突然異世界へ転移した20代社畜の鈴木晶馬(すずき しょうま)は、転移先でダンジョンの攻略を余儀なくされる。
戸惑いながらも、鈴木は無理ゲーダンジョンを運良く攻略し、報酬として能力をいくつか手に入れる。
しかし手に入れた能力のひとつは、世界が求めているとんでもない能力のひとつだった。
・総愛され気味
・誰endになるか言及できません。
・どんでん返し系かも
・甘いえろはない(後半)
BLゲームのお助けキャラに転生し壁を満喫していましたが、今回は俺も狙われています。
mana.
BL
目が覚めたらやり込んでいたゲームの世界だった。
…と、いうのが流行っているのは知っていた。
うんうん、俺もハマっていたからね。
でもまさか自分もそうなるとは思わなかったよ。
リーマン腐男子がBLゲームの異世界に転生し、何度も人生をやり直しながら主人公の幼馴染兼お助けキャラとして腐男子の壁生活を漫喫していたが、前回のバッドエンドをきっかけで今回の人生に異変が起きる。
*****************
一気に書き上げた作品なのでツッコミどころ満載ですが、目を瞑ってやって下さいませ。
今回もR18シーンは☆を入れております。
写真は前に撮った写真です。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる