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旅の仲間というかお荷物
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そんなこんなで、旅の仲間が加わりました! てってれ~ん!!
水をくれたお兄さんこと、セルトさん。年齢は俺より二つ上の二十歳、狼の獣人だそうだ。二十歳にしては老けてるな~と思ってしまってごめん。まぁその老けっぷりも、基本的に無表情だからなんだよね……代わりに耳がピンとしたり、ヘタッとしたり、そんなとこは表情豊かなんだけど。
そんなセルトさんと、ただいまお馬さんでパッカラパッカラ移動しています。
馬。向こうで本物を間近で見ることはなかったから、元々のサイズ感がよくわからないんだけど……とりあえずデカい。あと、明らかに違うって部分だと牛みたいな二本角が耳の前あたりからニョキッと生えてる。下手に怒らせるとその角でブスッと刺されるんだってさ。
俺のことはセルトさんが言い含めて? 受け入れてもらえたけど。
お名前はレティアちゃん。女の子だけどそこらの雄馬よりも気性が荒くて、ちょっかい出してくるヤツを何匹か屠ってきたらしい……殺してはいないことを祈る。
――ヒュンッ
『⊡≶⊶⋊∐kEM⊪B』
言葉は通じないけど、三日間一緒に過ごしてきてニュアンスはわかった。了承の意味を込めて頷けば、セルトさんがレティアちゃんから降りて森に走って行く。
今のね、セルトさんが背中に持ってた弓を引いた音。素早すぎて、しかも「獲物? どこに?」な距離で打ち落とすから、ボケッと揺られているとこういうことが起きる。旅の仲間っていうか、どっちかというとセルトさんとレティアちゃんの旅に俺が加わっただけかもしれない……
こういう時でもレティアちゃんは暴れずに、同じところで立ち止まってセルトさんを待っているんだ。良いよね、相棒って感じ。俺も役に立てるようになりたいんだけど。
『⊡∇5X∠⊎⊡⊿⊄≴、⊩⋮8⋪⋀⋨≘⊮n⋧?』
「セルトさん、おかえりなさい」
『⊕⋭w≓⊔⋣』
うーん、多分これは「大丈夫だったか? 何もなかったか?」と「ただいま」だな。悲しいことに、俺の立場って〝保護した迷子〟から変わっていない。むしろお荷物かもしれない。
(十八歳って伝えた時、セルトさんめっちゃ驚いてたからなぁ……)
こっちの世界では、というかセルトさんの住む《オーベルシュハルト》って国は、成人年齢が十八歳なんだって。俺のこと、最初は十五、六歳(かそれより下に)見えたらしいよ。下手したら中学生って言われて、俺は涙目です。向こうで童顔って言われたことないんだけど……(そして「わぁ! 異世界あるあるぅ!!」と言ってしまって、セルトさんに微妙な顔をされた)
そんな俺の背後にひょいっと乗り上げてきたセルトさんに、手渡されてた手綱を返す。俺、ほんとに何の役にも立ててないな。
しょぼっとしてたら背後から回った手に唇をトントンとされた。指なり手の甲なりで俺の唇をトントンと叩くのは、何か会話がしたい時の合図だ。俺から会話したい時は、セルトさんに顔を向けて自分の唇を叩いてる。
(相変わらずディープなキッスをしてしか会話出来ないのも不便だよね……っていうか、セルトさんは嫌じゃないのかな? 俺はまぁ、仕方ないかなと思ってはいるけど。それこそ犬に噛まれた~みたいな……結構なイケメンさんだから、そんなん言ったら世の婦女子に怒られるね。腐女子は大歓喜だろうけど)
「んんっ……ふ、は……ぁん、ん……」
問題はちょっと気持ちよくなってきているところかな! 俺が!!
最初はぬるっとしてるなーとしか思わなかったベロが、なんかぞわってするようになったんだよ。むちゅっとすれば良いだけなのに、徐々に時間が長くなってる気がするし。念入りなのは性格なんだろうか……
背後から押さえ込まれる形でチューされてるから逃げ場がないし、逃げるにしても馬上だし。あ、そこ駄目。
「や、あ……ん……ふぁ…………」
舌を上下に吸われるようにされるの、危険。痛くはないけどぞわぞわが! 尾てい骨に!!
ちゅぷっと音を立てながらセルトさんが離れてくれたけど、俺のライフはゼロです。軟体動物みたいになった俺は、そのままセルトさんの胸に背中を預ける。すると、めくれ上がっていたマントを目深に被らされた。
「この先、少し森に入ったところに水辺がある。今夜はそこで休むとしよう」
「ふぁい……」
このマントもセルトさんの持ち物。めっちゃでっかいから、俺だと頭から被っても膝あたりまで隠れる。むしろ毛布に近い。雨とか降ってきた時にはセルトさんも頭から被るらしいけど、もうちょっと丈は短くなるらしいよ! 身長差!!
なんでそんな物を頭から被っているかというと、日除けの意味もあるけど主に顔を隠すため。顔というか、頭――黒髪で黒目ってやっぱり珍しいらしい。正確には〝オーベルシュハルトの王家でしか産まれない〟んだそうな。しかし俺がその王家の落とし胤じゃないことは間違いない。セルトさんもそこは理解している。
ただねぇ……どこの世界でも悪いことを考える人たちはいるそうで、そういう人たちに変に利用されるよりは国で保護したほうが良いだろう、というのがセルトさんの考え。性奴隷エンドも男娼エンドも嫌だけどさ、犯罪エンドも嫌ですよ。その場合、もしかしたらセルトさんと敵対するかもしれないし……
そんなの嫌だよね、やっぱり。
水をくれたお兄さんこと、セルトさん。年齢は俺より二つ上の二十歳、狼の獣人だそうだ。二十歳にしては老けてるな~と思ってしまってごめん。まぁその老けっぷりも、基本的に無表情だからなんだよね……代わりに耳がピンとしたり、ヘタッとしたり、そんなとこは表情豊かなんだけど。
そんなセルトさんと、ただいまお馬さんでパッカラパッカラ移動しています。
馬。向こうで本物を間近で見ることはなかったから、元々のサイズ感がよくわからないんだけど……とりあえずデカい。あと、明らかに違うって部分だと牛みたいな二本角が耳の前あたりからニョキッと生えてる。下手に怒らせるとその角でブスッと刺されるんだってさ。
俺のことはセルトさんが言い含めて? 受け入れてもらえたけど。
お名前はレティアちゃん。女の子だけどそこらの雄馬よりも気性が荒くて、ちょっかい出してくるヤツを何匹か屠ってきたらしい……殺してはいないことを祈る。
――ヒュンッ
『⊡≶⊶⋊∐kEM⊪B』
言葉は通じないけど、三日間一緒に過ごしてきてニュアンスはわかった。了承の意味を込めて頷けば、セルトさんがレティアちゃんから降りて森に走って行く。
今のね、セルトさんが背中に持ってた弓を引いた音。素早すぎて、しかも「獲物? どこに?」な距離で打ち落とすから、ボケッと揺られているとこういうことが起きる。旅の仲間っていうか、どっちかというとセルトさんとレティアちゃんの旅に俺が加わっただけかもしれない……
こういう時でもレティアちゃんは暴れずに、同じところで立ち止まってセルトさんを待っているんだ。良いよね、相棒って感じ。俺も役に立てるようになりたいんだけど。
『⊡∇5X∠⊎⊡⊿⊄≴、⊩⋮8⋪⋀⋨≘⊮n⋧?』
「セルトさん、おかえりなさい」
『⊕⋭w≓⊔⋣』
うーん、多分これは「大丈夫だったか? 何もなかったか?」と「ただいま」だな。悲しいことに、俺の立場って〝保護した迷子〟から変わっていない。むしろお荷物かもしれない。
(十八歳って伝えた時、セルトさんめっちゃ驚いてたからなぁ……)
こっちの世界では、というかセルトさんの住む《オーベルシュハルト》って国は、成人年齢が十八歳なんだって。俺のこと、最初は十五、六歳(かそれより下に)見えたらしいよ。下手したら中学生って言われて、俺は涙目です。向こうで童顔って言われたことないんだけど……(そして「わぁ! 異世界あるあるぅ!!」と言ってしまって、セルトさんに微妙な顔をされた)
そんな俺の背後にひょいっと乗り上げてきたセルトさんに、手渡されてた手綱を返す。俺、ほんとに何の役にも立ててないな。
しょぼっとしてたら背後から回った手に唇をトントンとされた。指なり手の甲なりで俺の唇をトントンと叩くのは、何か会話がしたい時の合図だ。俺から会話したい時は、セルトさんに顔を向けて自分の唇を叩いてる。
(相変わらずディープなキッスをしてしか会話出来ないのも不便だよね……っていうか、セルトさんは嫌じゃないのかな? 俺はまぁ、仕方ないかなと思ってはいるけど。それこそ犬に噛まれた~みたいな……結構なイケメンさんだから、そんなん言ったら世の婦女子に怒られるね。腐女子は大歓喜だろうけど)
「んんっ……ふ、は……ぁん、ん……」
問題はちょっと気持ちよくなってきているところかな! 俺が!!
最初はぬるっとしてるなーとしか思わなかったベロが、なんかぞわってするようになったんだよ。むちゅっとすれば良いだけなのに、徐々に時間が長くなってる気がするし。念入りなのは性格なんだろうか……
背後から押さえ込まれる形でチューされてるから逃げ場がないし、逃げるにしても馬上だし。あ、そこ駄目。
「や、あ……ん……ふぁ…………」
舌を上下に吸われるようにされるの、危険。痛くはないけどぞわぞわが! 尾てい骨に!!
ちゅぷっと音を立てながらセルトさんが離れてくれたけど、俺のライフはゼロです。軟体動物みたいになった俺は、そのままセルトさんの胸に背中を預ける。すると、めくれ上がっていたマントを目深に被らされた。
「この先、少し森に入ったところに水辺がある。今夜はそこで休むとしよう」
「ふぁい……」
このマントもセルトさんの持ち物。めっちゃでっかいから、俺だと頭から被っても膝あたりまで隠れる。むしろ毛布に近い。雨とか降ってきた時にはセルトさんも頭から被るらしいけど、もうちょっと丈は短くなるらしいよ! 身長差!!
なんでそんな物を頭から被っているかというと、日除けの意味もあるけど主に顔を隠すため。顔というか、頭――黒髪で黒目ってやっぱり珍しいらしい。正確には〝オーベルシュハルトの王家でしか産まれない〟んだそうな。しかし俺がその王家の落とし胤じゃないことは間違いない。セルトさんもそこは理解している。
ただねぇ……どこの世界でも悪いことを考える人たちはいるそうで、そういう人たちに変に利用されるよりは国で保護したほうが良いだろう、というのがセルトさんの考え。性奴隷エンドも男娼エンドも嫌だけどさ、犯罪エンドも嫌ですよ。その場合、もしかしたらセルトさんと敵対するかもしれないし……
そんなの嫌だよね、やっぱり。
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