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いつかの嘘と、答え合わせ
⑥
しおりを挟む最後にぎゅぎゅぎゅっと抱きしめられて、チビの背中をギブアップのつもりで叩いたら解放された。鯖折りにされなかったから良いけれど。そんなやり取りの後、チビの案内で三人のいる部屋へと向かう。
廊下を出て暫く……というか、結構な距離を歩いてからその部屋へと辿り着いた。ここまで離さなくても良かったんじゃないだろうか。
「面会されますか?」
「アロイス……まさかずっとここにいたのか?」
「逃亡防止のためです。中にはバイラム様も控えてますよ?」
ドアの前で番人になっていたのはチビの侍従であるアロイスだった。そして、それを命じたのは確実にチビだ。思わず半眼になって横を睨むと、チビがそっと顔を逸らす。
怒られると思っているならやらなければ良いのに……と思っても、今はそれを言う時じゃないだろう。
しかしアロイスに断ってドアを開けてもらい見えた光景に、相変わらず顔を背けているチビの頭をひっぱたいた。
「お前は! いくらなんでも限度ってもんがあるだろう!! バイラムも、これを是としないでくれ!! 教育に良くない!!」
「……そう言われると思ってはいたんですが。お止めできず申し訳ございません」
シギ、レオニダス、デーメル、三人が三人とも縄でぐるぐる巻きにされて床に転がっていた。ここまでして、更にバイラムを監視につけて、アロイスをドア番にさせるとか……。
「チビ! とりあえず早く三人の縄を解きなさい!!」
「はぁーい」
「あと、アロイス! お茶かなんか持ってきて!!」
「かしこまりました」
どこで子育てを間違えたんだろう。
縛り上げられて体が凝り固まった体を、シギたちが解しているのを見ながら途方に暮れる。色々と説明をしなければなんて気負いは消え去ったけれど、それで良いのかどうか判断がつかん。
「三人とも、本当に申し訳ない。色々と説明するから……落ち着いたらそこのソファーに座ってくれ」
「いや、うん。……さっきこの人に少し説明されたけどな。とりあえず何聞いても驚かねぇし、怒らねぇし、言いふらさねぇから。……殺すのだけは勘弁」
「殺させないから!!」
記憶を消すかもって話が何故そうなったのか。バイラムを見ると首を振られたから、それもチビが何かしたんだろう。
落ち着いた三人がソファーに腰掛けたのを見て、俺もその向かいに座る。
「おい、チビ。離れなさい」
「やだ」
三人掛けのソファーなのにぴったりとくっつくようにチビが座り、少々狭い。ついでに肩に腕を回されて囲い込まれた。狭い。
「噂で緑髪の王が立ったとは聞いていましたが……本当にチビくんだったんですね。あぁこれは村あたりまでは浸透していません。シギさんも知らなかったことですし。私は相変わらず家業を手伝っているので、漏れ聞こえてきただけですから」
「俺は単純に、オンラに会おうって思っただけ。チビもデカくなってるかなーとは思ってたけど、まさかここまででっかくなってるとは……つか睨むなよ。こえぇよ」
「歓迎されると思っていたなら一度死んでみる?」
寝言は寝て言えとばかりに吐き捨てたチビの膝を軽く叩く。この部屋の人間、誰も気にしていないし密着度合いにどうこう言うのは諦めよう。
「そこのおっさんがオンラの夫じゃないってのはわかったけど、もうあれこれについては三年前に踏ん切り付けたっての!」
「私ももう……というか結婚しましたから、一応まだ新婚の身で余所に目を向けるなんて出来ません」
「新婚じゃなくなっても余所に目を向けさせるつもりはありませんよ??」
圧を感じさせる笑顔でデーメルがレオニダスの手を握っている。痛い! と叫んでいるから、かなりの力を込めているようだ。
「えーっと……?」
「知らない人間と家の繋がりだけで結婚しても色々と無理でしょう、そう言い含めて丸め込みました」
「それは……おめでとうございます」
「ありがとうございます」
あの頃のレオニダスも言っていたが、家業を継ぐ立場でもない三男坊だから同性同士でも問題はなかったんだろう。少し掘り下げて聞いてみると「末永く頼む!」くらいの勢いでご両親が承諾したらしい……デーメル、どれだけ外堀を埋めていたんだ。これは結構長いこと拗らせていたな?
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