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いつかの嘘と、答え合わせ
②
しおりを挟む建物の外観は建築系魔法使いさんたちにお願いして、俺は内装のほうを細々と設計した。
魔族の国だが、孤児院にいる子供は様々だ。人族獣族が多く、魔族が数人、全体としては二十人に満たないほど。託児所や保育所も兼任だった頃は倍の人数だったというから、レネさんを筆頭にしたスタッフには頭が下がる。
魔法ありきの家だと人族や獣族は生活が出来ない。だからそれも組み込んだ。俺自身、魔法を使えないサポートありきの生活をしているから、魔族や森族が気付かないことでも気付くことが出来る。水回りとかな。普段エルメーアがやってくれていることを魔族の子供たちがしてくれるようにすれば、自ずと役割分担なんかも生まれていくだろう。
「おうち! 出来た!」
「オンラ、もう良い? 入って大丈夫?」
「良いぞー、もし何か落ちてたら触らずに俺やレネさんに教えてくれ。危ない物の可能性があるからな」
そう声を掛ければ「はーい」と良い返事をして子供たちが探検に入って行った。微笑ましいな。
「しかし早い……」
着工から竣工まで、内装に凝ったとはいえ一週間だ。この世界に地鎮祭はなく上棟式もない。土地と建材があれば三日で家が建つと言われて、目を剥いたのが記憶に新しい。
「人族の国や村じゃ無理だけどね」
「あ、チビ。仕事は終わったのか?」
「うん。終わったのにまだ帰ってきてなかったから、迎えにきた」
今日は比較的早くに仕事が落ち着いたらしい。転移で来たまんま背後からべったりとくっつかれているが、最近はこっちに掛かりきりだったから仕方ない。いや、仕方なくはないのか?
「お疲れ様です、陛下。こちらは一段落しましたのでヒサシさんはお返ししますね」
「え? まだまだこっちに来る気満々なんだが……」
「次に来る時は俺の休みの時! 尚志はちょっと休憩!!」
でもまだ気になることはある。実際に使ってみて出てくる不便さもあるだろうし、子供たちの反応も知りたい。
そんなことを考えていたら、室内の探検に出ていた子供たちが帰ってきて「あー!」と声を上げた。
「チビ兄ちゃんがいる!」
元々、チビの休みの日には顔を出していた孤児院だ。子供たちもチビの顔を知っている。偽名は俺のせいで〝チビ〟となっているが……立場まで把握しているのはレネさん含めたスタッフだけだし、ここに来る時にはチビも髪や目の色を変えている。だからそういう意味では安心なのだが、違う意味では危険だ。
「遊ぼうぜ!」
「今日はオンラだけだと思った!!」
見つかったら最後、体力オバケの子供たちと耐久レースが始まる。かけっこだったり鬼ごっこだったりとその時々で内容は変わるが、子供たちが満足するまで終わらないのは変わらない。
俺はどちらかというと幼児に懐かれているようで、体力勝負の遊びはチビの役目みたいになっているのだ。
「今日は無理! 尚志、帰るよ!!」
「あ、ちょっ……」
そのままの体勢で、逃げるように転移させられた。せめてレネさんへの挨拶だけはさせてくれ。
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