異世界転移と同時に赤ん坊を産んだ俺の話

宮野愛理

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チビの正体と自分の役割

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 途中で朝食を挟みつつ、三人で色々な話をした。……と言うより、俺が全くこの世界のことを知らないので、それを改めて教えて貰う勉強の場になった。

 俺の長年の夢であったバーナー調理が、魔法を使えると簡単に出来たのがまず最初の驚きだ。
 昨夜の残りのトマトスープにパンを投入し、チーズを載せたら指先一つで〝ボッ〟である。
 その〝ボッ〟だけでチーズがこんがりと焼けていた。……魔法って凄い。

 世界や種族ごとの生活の違いについても教えてもらった。

 人族、魔族、竜族、森族、土族、獣族――この世界にはこれだけの種族がいる。
 ファンタジー映画でよく出てくるエルフは森族、ドワーフは土族と呼ばれ、どちらもそれぞれに国を持っている。森族の国は緑豊からしいが、土族は地底や鉱山の生活ではないらしい。
 獣族は耳と尻尾が生えていて、国は特になし。部族や村単位で世界中に散らばっているそうで、チビが言うには首長国連邦のような扱いらしい。
 レオニダスの話にも出てきた竜族は、爪が長かったり目が爬虫類っぽかったり……そして卵生。でも一部を除いて竜に変身することはない。こちらはちゃんとした国がある。
 寿命は人族と獣族があちらの人間と同じか少し短いくらい。
 逆に、他の種族は余裕で三百年、四百年と生きる。
 竜族や森族に至っては千年近く生きる者もいるそうで、その分人口が少ない。

 竜族〈アーディトリア竜皇国〉
 森族〈ノルニーマ共和国〉
 土族〈サクパラジ王国〉
 魔族〈ヴェルクトリ魔王国〉

 この四つの国名はとりあえず覚えておけと言われた。何故かと言うと、国として長く保っているからだ。
 長命な種族の国だから、そりゃあ長生きな国家だろう。
 人族の国は大小様々ですぐに増えたり減ったりするので、長命な種族はあまり覚えていないらしい。「必要になった時に覚える程度ですね」とバイラムに言われた。


「魔族の国は王国なのか? それとも、魔王国なのか?」
「正式名称は〈魔王国〉ですが、種族名なので省略されることが多いです」

 会話の中では「魔族の国」「竜族の国」で通じるが、折角覚えるならちゃんと正式名称で覚えた方が良いとのこと。
 後で困らないようにと言われたが、現段階で耳慣れない国名ばかりのため覚えるのは時間が掛かりそうだ。

 世界地図……――ざっくりとした国の位置も教えて貰った。
 大きな大陸が一つだけ。
 その中心とされる国は竜族のアーディトリア竜皇国。
 ヴェルクトリ魔王国はその左側の海に面した地域――そこをテーブルの左端と仮定すると、今いる村は真逆の右端に位置していた。

「向こうと同じで、こっちも地面は球体なんだけどね。……この村の山ってさ、向こうに行くとすっごい高くなるんだ。エベレストも真っ青レベル。それが海に向かってストーンっと崖になっててね、ヴェルクトリからの山登りは無理」

 近くても遠い場所らしい。
 どうにかして道を作る必要性も特に見当たらず、こんなところに村があることすらバイラムは知らなかった。
 今回は魔王の魔力を感知して、とりあえず一番近くて場所のわかっているこの村が所属している王都へと転移。そこからは空を飛んで来たらしい。

「空を飛べるって驚きはあるけど、場所がわからないとワープは出来ないのか――……魔法って万能じゃないんだな」
「世界中をくまなく旅するような物好きなら別だけど、いくら長生きでもそんなことする気にならないよ。地球でだって、四大陸制覇とか言ってもただ決まった場所に行くだけじゃん」
「そりゃそうだ」

 行くとしても、王都とか首都とか、そういう場所で事足りる。
 この村って本当に僻地だったんだな……そんなところで俺とチビが生活出来ていたって、物凄い幸運だったのかもしれない。

 ついでとして教えてくれたこの国の名前は〈カーマティア王国〉で、王都の名前は〈サラレイヤ〉――……多分、直ぐ忘れるな。
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