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チビの正体と自分の役割

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 この世界の一部の子供は、親の精液を飲んで成長するのかぁ、とか。
 あれだけクールな息子が喋るようになったら結構チャラい系だったなぁ、とか。
 息子の癖に俺のことを呼び捨てにするのは、今からでも訂正した方が良いのかなぁ? とか。
 十七歳ってことは、いつ仕込まれてたんだろう? とか。

 色々と聞きたいことも言いたいことも山ほどあったが、脳の許容量をオーバーしていた。漫画なら頭から煙が出ている気がする。
 寝て起きたら「全部夢だった」なんてことにならないだろうか。
 無理か。


「とりあえず――服を貸してやるから着ろ。もう二度寝する元気もねぇわ……頭いてぇ……」

 ちょうど良いことに、チビのプレゼントを作った時に成人用パンツも作ってある。
 古布だが新品だ。
 上着とズボンは俺のを渡してやると、ムカつくことにブカブカとはならなかった。

 パッと見は俺の方が筋肉があるが、チビは元々の肩幅が違う。
 こいつは日本人体型ではなく西洋人体型だ。ちっこい時はそこまでわからなかったが……身長はそこまで変わらないのに、横に並び立ったら腰の位置も違う筈。
 男は二十歳過ぎまで伸びるのもいるから、この先は違いがもっと顕著になるだろう。

「なに?」
「……いや、お前って本当に俺の子なのかなーと」

 あの時、本当はウ○コをしただけじゃないのか?
 村人全員で俺を騙す理由は考えつかないが、村ぐるみのドッキリだとしたら?
 そう考えていると、チビは呆れたように溜息を吐いた。

「腹から産まれた子をその人の実子と言うなら、俺は尚志の子だよ。父親は……うーん、血縁上は居ないけど、強いて言うなら世界とか? もしくは神様?」
「意味がわからん」
「説明は出来るけど長くなる。……聞きたい?」
「聞く。――でもその前に顔洗ってくるわ。お前は出てくるなよ、濡れタオルで我慢しろ」

 日差しの入り方としては朝五時頃だが、早朝と言えども誰が見ているかわからない。
 チビの溜息に釣られる訳ではないが、俺の方が溜息を吐きたかった。
 俺の子だけど父親はいない……――俺は学がないから詳しく知らないが、どっかの宗教でそんなのがいなかっただろうか。

 それならチビは神様になるのか?
 それとも神様の子として、どっかに担ぎ上げられるのか?
 どこに? 誰に?
 もし――俺の手に余るような話ならどうしたら良いのだろうか。

 不安に思いながら家のドアを開けると、目の前に綺羅きらびやかな襟が見えた。

「ん?」

 レオニダスの着ているようなシャツにジャケット、ネクタイ……だが金の掛かり方は全く違う。
 こいつの着ている洋服の方が明らかに高い。
 ボタンだってキラキラしている。
 仰ぎ見れば、これまた映画俳優のようにキラキラとした渋いオッサンだった。

「……誰だ?」
「我が主君の魔力をこの屋敷から感知いたしました。中に入れて頂いても宜しいでしょうか」
「いや、だから……――って、勝手に入るな!」

 よろしいかどうかを聞いた癖に、俺を押し退けてズカズカと敷居をまたいできた。
 これはアレだ。
 チンピラが「○○さんいるんでしょー?」と言いながら押し入ってくるアレだ。
 もしくは脱税を調べに来た税務局か、逮捕令状を持った警察……どれも向こうでお世話になったことはないので、ドラマや映画でしか見たことはないのだが。

 チビを逃がすか、それとも包丁を持ち出すか。
 しかし髪の色が人族とは違う。
 茶、金、黒から外れた夜空のような紺色――つまり魔族だろう。下手に抵抗をして魔法なんてモンを使われたら手も足も出ない。


 しかし……――どうしようかと悩んだ一瞬に、その男は土間に片膝をついた。

「陛下。お迎えが遅くなり申し訳ありませんでした」

 そう言って頭を下げた先には、居間に座ったチビがいた。
 土間と居間の間には高さがあるので、完全に見下ろしている格好だ。十代の子供が、五十代に見えるオッサンを――……

 ――チビ、お前は一体なんなんだ。
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