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違う世界でもトイレはトイレ

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 ユアンはヨハンナと連れ立って自宅へと戻って行った。
 これから畑の手伝いだろう。そろそろ暖かくなってきたので、抜くのが面倒な雑草がワサワサと生えてくる時期でもある。
 子供たちはそれを見送った後、「フルチンのアラン兄ちゃん、バイバイ」と言いながら公民館へと入っていった。
 チビはまだ俺の肩の上だ。
 今日の仕事が決まるまではこのままにしておこう。
 連れて行けそうなら連れて行くし、無理なら公民館でお留守番となる。

「……はぁ。もう、なんで今さらあんなこと言うんだよ、オンラ」

 あの当時も周りの子供たちは「フルチンだ、フルチンアランだ」と笑っていたが、今になって下の世代に言われると堪えるらしい。

「あいつら、しばらくは言い続けるぜ? ――もうパンツ穿いてるのに」
「うーん。ちょうど思い出したのと、お前が俺に丸投げしたのが気に食わなかったからだな」
「……何それ?」
「ユアンが大人になったぞ」
「えっ! マジで?! って、何でオンラが知って……あ、あー……そういうことかぁ」

 理由に思い至ったようで、バツが悪い顔でこちらを伺っている。
 別にアランに対して本気で怒っている訳ではない。ただ――

「その時の心構え、お前からもちょっとは教えてやれよ。俺から〈水で簡単に流せば良い〉と言うのと、お前から言うのと、ユアンはどっちの方が気が楽だ?」
「……」
「お前としては〝やったぜー〟くらいのことでも、ユアンは違うだろう。それは俺なんかより、幼馴染のお前の方が知ってるよな? ――ってことで、ユアンには家族にバレずに夢精しないで済む方法を教えてやってくれ」
「えー?」
「だって俺はチビと二人暮らしだし。親や兄弟と一緒で困ることないし」
「オンラ、もしかしてチビの前で……」
「する訳ないだろう。おかしなことを言うな」

 元々淡白だったのとプラスして、年齢のせいかそういった欲求は落ち着いている。
 人肌恋しいと言うのもチビを抱いて寝ていたら関係ない。
 それに、一人暮らしを始めてからは夢精をしたとしても洗うのも干すのも自分である。向こうにいた時から元々気にしていなかった。

「上の連中にからかわれたらユアンは落ち込むぞ? アランの方が先輩なんだからどうにかしろ。ついでに、失敗したらこれからも〈フルチンアラン〉と呼び続けるからな」

 責任重大だなぁ、と笑う俺に対してアランは若干顔色が悪かったが、それでもなんとか頷いた。

 別に本気で呼び続けるつもりはない。
 肝っ玉母ちゃんへとレベルアップしている女性陣は耳に入っても気にもしないが、お年頃の女性陣女の子は繊細だ。
 子供たちがウ○コだチンコだと言うのと、俺が言うのとでは意味が変わってくる。
 セクハラされたと泣かれたくない。――この世界に〈セクハラ〉という言葉があるのかは知らないが。
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