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異世界の端っこでウ○コと叫ぶ
④
しおりを挟む例外的――――それは、特殊な状況下での性交。
魔力を多く持つ男が射精した際、《種》と共に魔力を放出する……らしい。
その放出された魔力が多い場合、精子と卵子が受精するメカニズムをすっ飛ばして子供が出来る……らしい。
男同士はそれが起因となり妊娠する。……らしい。
らしい、らしいばかりで要領を得ないが、理解の範疇を超えているのだから仕方ない。
しかも村にはそこまでの魔力を持った人間はいない為、全てが【言い伝え】でしかない。
だが、残念なことにある程度の信憑性があり、この世界の〈常識〉でもある。
〈常識〉を知らないと言うのは、それだけで異端だ。
更に俺は、家畜を潰せないし、男の身で子供も産んでいる。
でも村の人間は、そんな〈非常識〉な俺と赤ん坊を、そのまままるごと受け入れてくれた。
その代償が〝真実とはかけ離れた妄想〟だとすれば、俺としても受け入れるしかない。不本意だが。
闘技奴隷ってなんだよ? とか。
無理やり襲われたって俺は男なんだが? とか。
腹にあるのは盲腸の痕であって刀傷じゃないから、とか。
腕とこめかみの痍は小学生の時、自転車の片手運転でフェンスに突っ込んでバックリいっただけだから、とか。
色々と言いたいことはあるが……
とりあえず周りの妄想には程々に付き合っておいて、赤ん坊には訂正しておこうと思っている。
将来。―――こいつが、大人になったら。
「チビ。お前、いつになったら大きくなるんだろうなぁ」
もうすぐ五歳の赤ん坊は、何故か殆ど成長していない。
いや、首も座らない赤ん坊の頃からすれば大きくはなった。
首もしっかりしたし、座れるし、ハイハイもしたし、つかまり立ちも経験して、今は自力で歩けるようになった。
それでも五歳児には到底見えない。
せいぜいが、ニ~三歳あたり。
「チビなんて仮名付けたからかねぇ」
名付けのセンスなんてないから、幼名代わりに〈チビ〉と呼ぶようにしただけだ。
どうせ戸籍なんてモンはない。
だったら大人になってから、自分で好きに名前を決めれば良い。
最初は、ただそう思っていた。
「早く大きくなりやがれ」
じゃねぇと、お前が大人になる前に俺が死んでしまう。
それを惜しいと思うくらいには、お前のことを愛してしまったんだ。
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