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第二十七話
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季節は晩夏から初秋へと切り替わって、朝晩の気温差にしんどさを感じることが増えてきた。そして、そんな季節的な疲れとは別に佐藤は悶々とした日々を過ごしている。
フレイウェルへ行けなくなった。
たった一ヶ月。されど一ヶ月。最近は頻度が下がっていたとはいえ、ここまで期間が空くことはなかった。ブライクやロッティの話では、精神が完全に回復した場合は行けなくなると聞いている。ただそれがどのくらいの間隔なのか誰にもわからない。判断が出来ないまま日付だけが過ぎていく。
しかも時間の流れが違うから、こちらで一ヶ月だとしてもあちらでは翌日なんて可能性もある。
(ついでに、松本とも変な感じだし……)
あの一緒に寝た日の翌朝、佐藤が声を掛ける前に松本は振り返らずに帰っていった。寝る前までは散歩だ買い物だと息巻いていたのが嘘のように……そしてそのまま、連絡が来ない。
(俺、なにかしたかな……?)
寝相が悪いとか、いびきが酷いとか、そんな言葉を過去に言われたことはない。この二年ほどの間に変わった可能性はなきにしもあらずだが、その程度の話ならば松本は「お前さー」と指摘してくる男だ。なにも言わずに帰って行くなど考えられない。
しかし、だからといって佐藤から連絡をするのも難しい。いつも松本からの連絡に応対するだけだったから、会話の糸口が思いつかなかった。
(横川さんにも返信をしないと……)
急ぎの回答が必要な内容ではないが、佐藤には前科があるため三日以上空いてしまうと余計な心配をさせてしまう。ただボンヤリとベッドに寝転がっていた体を無理矢理起き上がらせて、パソコンを起動させる。スマートフォンでも返信が出来るのに、わざわざパソコン前に座るのは少しでも頭を働かせるためだった。
いつまで経っても業務的な内容しか書けず、横川に「もう少しフランクでも大丈夫ですよ?」と言われたのはいつだったか……さすがに時候の挨拶を入れることまではしないが、それでも四角張った文面で返信する。
フレイウェルへ行けなくなった。
たった一ヶ月。されど一ヶ月。最近は頻度が下がっていたとはいえ、ここまで期間が空くことはなかった。ブライクやロッティの話では、精神が完全に回復した場合は行けなくなると聞いている。ただそれがどのくらいの間隔なのか誰にもわからない。判断が出来ないまま日付だけが過ぎていく。
しかも時間の流れが違うから、こちらで一ヶ月だとしてもあちらでは翌日なんて可能性もある。
(ついでに、松本とも変な感じだし……)
あの一緒に寝た日の翌朝、佐藤が声を掛ける前に松本は振り返らずに帰っていった。寝る前までは散歩だ買い物だと息巻いていたのが嘘のように……そしてそのまま、連絡が来ない。
(俺、なにかしたかな……?)
寝相が悪いとか、いびきが酷いとか、そんな言葉を過去に言われたことはない。この二年ほどの間に変わった可能性はなきにしもあらずだが、その程度の話ならば松本は「お前さー」と指摘してくる男だ。なにも言わずに帰って行くなど考えられない。
しかし、だからといって佐藤から連絡をするのも難しい。いつも松本からの連絡に応対するだけだったから、会話の糸口が思いつかなかった。
(横川さんにも返信をしないと……)
急ぎの回答が必要な内容ではないが、佐藤には前科があるため三日以上空いてしまうと余計な心配をさせてしまう。ただボンヤリとベッドに寝転がっていた体を無理矢理起き上がらせて、パソコンを起動させる。スマートフォンでも返信が出来るのに、わざわざパソコン前に座るのは少しでも頭を働かせるためだった。
いつまで経っても業務的な内容しか書けず、横川に「もう少しフランクでも大丈夫ですよ?」と言われたのはいつだったか……さすがに時候の挨拶を入れることまではしないが、それでも四角張った文面で返信する。
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