絵本作家は砂糖菓子の夢を見る

宮野愛理

文字の大きさ
上 下
23 / 35

第二十三話《ブライク編》

しおりを挟む
 ロッティが聞き出したサトーの最後の記憶は、自室から出たところで途切れているらしい。一人暮らしなので運良く見つけてもらえていれば病院などで処置をしてもらっているだろうが、こちらからその状況を確認するすべがない。

「まぁ……死んだら、その時はその時ってことですよ」
「そういうのよくない! ボクは悲しいぞ?! まだ、サトーと会ってからちょびっとしか経ってないけど!! ロッティも、ブライクも、悲しいよな?!」
「そうだね。まずは心を元気にするところから始めようか? 私も微力ながらお手伝いするから」

 ポロリと、自然にその言葉が出て来てブライクは驚いた。先ほどまであれこれと考えていたのに……。

「うんうん。そうだね。ブライク、よろしく!」
「ボクたちもちょくちょく遊びに来るから、よろしくな!」

 訂正をする前にロッティやリチェルが外堀を埋めてしまい、「他の誰かに預けて」なんて言える雰囲気がなくなった。むしろ「お前はこんな状態のニンゲンを外に放り出すのか?」というかのような圧力も感じる。

「えぇっと……サトー、一応聞いておきたいんだけれど……私は怖くないかい?」

 突拍子もないことを聞いた自覚はある。それでもブライクは確認をしておきたかった。
 サトーを軽々と持ち上げられる膂力――というかロッティやリチェルを含めた三人分だって抱き上げられるだろう――は、一緒に過ごすに当たって恐怖を感じるかもしれない。顔だって子供受けしない。実際、ロッティの甥っ子に泣かれたことがある。
 このあたりは大型獣人に対する風当たりは強くないが、忌避される土地もあると聞く。そう考えるとロッティやリチェルは随分と特殊かもしれない、とまとまりなく考えているとサトーから「あの……」と声を掛けられた。

「さっき、俺がここに現われてからずっと看病してくださったのはブライクさんだと伺いました。……なんとなく、覚えているんです。たまに頭を撫でてくれた優しい大きな手のことを。だから……ブライクさんのお邪魔じゃなければ、俺はここにいたいです」

 駄目ですか? と重ねて言われて、ブライクは否やを唱えることが出来なくなった。しかしそれは決して悲観的な意味合いではなく、どちらかと言えば歓喜に近い。

「駄目……ではない。その、よろしく、たのむ……」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
しおりを挟む
――匿名での感想や絵文字も受付中です――
wavebox
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

処理中です...