絵本作家は砂糖菓子の夢を見る

宮野愛理

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第二十二話《ブライク編》

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「はい。二人とも、いつものココア。サトーは紅茶と珈琲のどちらが良いかな?」

 ブライクは自分の身長が威圧感を与えることがわかっているから、片膝をついてベッドの中のサトーに声を掛けた。

「……じゃ、じゃあ、紅茶を」
「はい。熱いから気を付けてね」
「あ、ありがとうございます……」

 砂糖とミルクはいらないらしい。カップを両手で持ってふぅふぅと冷ましている姿は幼いが、実際の年齢はどのくらいなのだろうか。と、思っているとリチェルが「サトー、ブライクよりも年上だって」と教えてくれた。
 そんなロッティとリチェルは客室に置いてある椅子に腰掛け、テーブルを囲んでいる。ブライクも、あまり近くに居続けるのはサトーの負担になるだろうと思い二人の横に腰掛けた。

「……ニンゲンというのは、わかりにくいものだな」
「獣人もよくわかりませんけど……」

 お互いの常識が違うというのはなんとも難しい。しかし、しばらくサトーがこちらで暮らすのなら擦り合わせをしていかなければならない。
 ブライクは心中で「参った」と呟いた。口が達者というわけではないし、どちらかと言えば無口なほうである。その点で言うならロッティやリチェルが適任だろう。だが彼らの家は全体的に小さく作られているので、サトーが長く暮らすのは難しい。
 では別の……と近所の住人を思い描いて、なんとも言えない気持ちになった。問題があるような人たちではない。羊獣人のリリーアは子育てが落ち着いて余裕があるだろうし、虎獣人のオルクは見た目こそ物騒だが心根は優しい。いや、ブライクも人のことをとやかく言えるような風貌でもないけれども。

「でね? たぶん、サトーはしばらくこっちで暮らすことになると思うんだ」
「はぁ……そうなんです、ね?」
「うん。向こうの体調が落ち着かないと駄目だと思う。調べた限りだと自分で願ってどうこうは難しいみたいで、時間の進み方も違うんだって。だから安心ってわけでもないんだけど……」
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