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第二十一話《ブライク編》
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「二人とも! こっち来てー!!」
隣の部屋からリチェルの大きな声が聞こえブライクとロッティは顔を見合わせる。バタバタと客室へ戻ると、ニンゲンがぼんやりと目を開いたところだった。
「……ゆめ?」
「お、起きたな? 夢じゃないぞー」
「リチェル、ちょっと声を抑えて。ごめんね、もし動けるようなら起き上がれる?」
ロッティとリチェルが彼の背中を支えて上半身をゆっくりと起き上がらせる。倒れ込まないように固定のクッションを当ててやると、ニンゲンは小さく息を吐いた。
「今から状況を説明するね。僕はロッティ、そして彼がリチェル。ここの家主は、そこに立ってるブライク。きみの名前を聞きたいんだけど、全部は言わなくて良い。呼ばれやすい名前を教えてくれるかな?」
まだぼんやりしている彼の様子をうかがいながら、一番冷静に話せるロッティが説明を始める。
その際に念を押したのが名前を全て言わないこと。ブライクも文献で知ったのだが、ニンゲンには長い名前があるらしい。フレイウェルでは〝真の名〟とされていて、それをこちらで名乗ると向こうの世界に帰ることが出来なくなる。彼がそれを望むなら良いが、今の段階では危険なはずだ。
「えっと、佐藤……と言います」
「わかった。サトーだね。じゃあそう呼ばせてもらう。色々と混乱してると思うから、まずは温かいお茶でもどう?」
「甘いのがいいか? 甘くないのがいいか? 出すのはブライクだけどな! ボクは甘いやつがいい!」
それまで静かにしていたリチェルの我慢が限界になったらしい。ロッティが「あー、もう」と呆れているのを見て、サトーが目を丸くしていた。
思わず笑ってしまいながらブライクはキッチンへと戻り、人数分の飲み物を用意する。リチェルとロッティはココアで良いだろう。サトーは……と考えて紅茶と珈琲の両方を淹れておいた。どちらを選んでも片方は自分が飲めば良いし、これだったら砂糖を入れたりミルクを入れたりと調整が出来る。
客室からはリチェルの元気な声とロッティのそれを諫める声。控えめに聞こえる笑い声はサトーだろう。
隣の部屋からリチェルの大きな声が聞こえブライクとロッティは顔を見合わせる。バタバタと客室へ戻ると、ニンゲンがぼんやりと目を開いたところだった。
「……ゆめ?」
「お、起きたな? 夢じゃないぞー」
「リチェル、ちょっと声を抑えて。ごめんね、もし動けるようなら起き上がれる?」
ロッティとリチェルが彼の背中を支えて上半身をゆっくりと起き上がらせる。倒れ込まないように固定のクッションを当ててやると、ニンゲンは小さく息を吐いた。
「今から状況を説明するね。僕はロッティ、そして彼がリチェル。ここの家主は、そこに立ってるブライク。きみの名前を聞きたいんだけど、全部は言わなくて良い。呼ばれやすい名前を教えてくれるかな?」
まだぼんやりしている彼の様子をうかがいながら、一番冷静に話せるロッティが説明を始める。
その際に念を押したのが名前を全て言わないこと。ブライクも文献で知ったのだが、ニンゲンには長い名前があるらしい。フレイウェルでは〝真の名〟とされていて、それをこちらで名乗ると向こうの世界に帰ることが出来なくなる。彼がそれを望むなら良いが、今の段階では危険なはずだ。
「えっと、佐藤……と言います」
「わかった。サトーだね。じゃあそう呼ばせてもらう。色々と混乱してると思うから、まずは温かいお茶でもどう?」
「甘いのがいいか? 甘くないのがいいか? 出すのはブライクだけどな! ボクは甘いやつがいい!」
それまで静かにしていたリチェルの我慢が限界になったらしい。ロッティが「あー、もう」と呆れているのを見て、サトーが目を丸くしていた。
思わず笑ってしまいながらブライクはキッチンへと戻り、人数分の飲み物を用意する。リチェルとロッティはココアで良いだろう。サトーは……と考えて紅茶と珈琲の両方を淹れておいた。どちらを選んでも片方は自分が飲めば良いし、これだったら砂糖を入れたりミルクを入れたりと調整が出来る。
客室からはリチェルの元気な声とロッティのそれを諫める声。控えめに聞こえる笑い声はサトーだろう。
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