絵本作家は砂糖菓子の夢を見る

宮野愛理

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第十九話《ブライク編》

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 世界の狭間から地球という世界のニンゲンという種族が降りてくる――なんて言い伝えがある。ニンゲンは自分たちと違いほぼ体毛がなく、総じて弱い。だから助けてあげなければならない。その代わりに自分たちへは祝福が訪れる、とも言われている。
 どの程度の頻度で現われるかは定かではないが、ブライクは二十八年生きてきて一度だけニンゲンを見たことがある。幼い頃に住んでいた街で、狐の獣人と手を繋いでいた。とても仲の良さそうな二人だったことを覚えている。

『ねぇ、母さん。あのニンゲンはどうしたの?』
『彼女は自分の世界に戻ったみたいね。ブライク……もしニンゲンと出会ったとしても、好きになっては駄目よ。私たちとニンゲンは違う世界の住人、いつかお別れがくるのを忘れないで』

 伝え聞いた話では、狐獣人とニンゲンは恋仲だったらしい。しかしニンゲンは自分の世界を選んだ。もちろん、そこに至るまでに二人の間では様々な話し合いだってあっただろう。それでもこのフレイウェルで生きると決めることは出来なかったらしい。

(あの狐獣人には祝福が訪れたのだろうか?)

 最近そればかりを考えてしまうのは、人生で二度目となるニンゲンとの遭遇があったからか。いや、そのニンゲンを保護している当事者だからかもしれない。
 そのニンゲンがどこから現われたのかわからない。朝、家のドアを開けたらそこに倒れ込んでいた。ひとまず客室のベッドへと寝かせたが、ニンゲンは三日経っても五日経ってもずっと寝ている。

「ブライクー、とりあえずこれ追加の本ね。ちょっとだけだけどニンゲンのことが書いてあった」
「なぁ、こいつまだ起きないのか?」

 友人であるロッティもリチェルも心配してくれているが、なにせずっと寝ているのだ。ブライクから報告出来ることはない。
 ロッティはニンゲンについて書かれた書物を届けてくれて、言い伝え以上のこまかな情報を知ることが出来た。リチェルは「ずっとだとお前が倒れる」と看病の交代を買って出てくれている。


――――――――――
挟むかどうしようか迷いつつ、ブライクさん編です。
相変わらず小出しなのでもうちょっと続きます。
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