絵本作家は砂糖菓子の夢を見る

宮野愛理

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第十七話

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「……本当に寝るのか?」
「あ? 別に裸で寝るわけじゃないんだから、良いだろ別に」
「いやあの……体勢がおかしくないか??」

 佐藤が利用しているのは普通のシングルベッドだ。壁に沿って配置されているが、その壁のほうへと押し込められている。枕は松本に取られてしまって、代わりに佐藤の頭の下には松本の腕があった。しかも壁を向きたいのに松本のほうを向くように寝かしつけられていて、佐藤の目の前には松本の喉仏がある。

「これ、腕枕ってやつだろう?」
「そうだな」
「なんで?」
「なんでだろうな?」

 答えになっていない、と言ったところで松本には響かない。逆に「もう深夜だから早く寝ろ」と頭まで撫でられ――その頭は当の松本に、しっかりとドライヤーで乾かしてもらっている――恥ずかしいやら口惜しいやら。

(明日、叩きだそう)

 そう思いながら佐藤が目を閉じると、いつものモヤが目の前に現われた。二日連続なんて最近はなかったことで、少し浮かれてしまった。

「ブライクさん!」

 ブライクも連日のことに驚きで目を見開いていた後、急に慌てだす。

「サトー? ど、どうした? また倒れたのか?!」
「あ、違います。今日はちゃんと寝て……いや、ちゃんと? なのかなぁ??」

 三十を超えた男が二人、向き合って寝ているのは果たして〝ちゃんと〟なのだろうか。
 そう考えて首を傾げていると、佐藤の様子が気になったブライクに根掘り葉掘りと状況を聞かれてしまう。

「それは少しおかしくないか? そのマツモトはきみの友人と言っていた気がするんだが……」

 ブライクに「恋仲のようだ」とまで言われてしまい、佐藤は顔を横に振った。

「違います! ただの友人です!!」

 そこは大いに否定させてもらいたい。そんな必死さをどう受け止めたのか、ブライクが少し考え込んだ後……。

「え! ちょ、ブライクさん?!」

 何も言わずに、佐藤の膝裏に腕を回してその体を一気に引き上げる。
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