絵本作家は砂糖菓子の夢を見る

宮野愛理

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第十六話

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「腹が減らないから仕方ない、とか思ってそうだな。今からそれじゃ何年後かにまたぶっ倒れるからな?! 引き籠もってないでたまには外に出ろ!」
「……はぁい」

 買い物に出ることはある、と佐藤が言い訳しても怒られるだけだろう。なにせ食べているメインが携行食やカップ麺だ。あとはレトルト食品。

「ってことで、明日は一緒に外に出るぞ」
「は?!」
「だってこれから帰るの面倒くせぇもん。前に泊まってた時のやつ、捨てちまった?」
「いや、一式残してあるけど……客用布団の準備出来てないよ」

 前に泊まった時は佐藤が倒れる前の話だ。そういえばそれより前はちょくちょくと会っていたような気がする。読んだ本や仕事のことをあれこれと話して、そのまま松本が泊まっていくこともあった。
 あれから客用布団を使用していないから、ちょっと怖いことになっているかもしれない。

「お前のベッドで良いじゃん」
「えぇえ?」
「狭くても気にしねぇよ? てか、これも経験だと思え。あれこれ書くとしたら、少しは他人の温度にも慣れておけって」

 そう言って松本は手早く弁当の空き容器を片付け、そのまま風呂場へと向かっていってしまう。もうこうなったら諦めるしかない。風呂上がりの人間をたたき出すようなことは佐藤には出来ないし、相手が「同じベッドで構わない」と言っているのだから本当に狭くても構わないのだろう。

「……こっちの部屋にベッドにもなるソファーでも置くか?」

 ダイニングテーブルと椅子を捨てることになるが、代わりにセンターテーブルを買えば良い。いやでもそうなるとラグも必要になる……と考えていたら、思いのほか時間が経っていたらしい。浴室の松本から「佐藤ー、着替え出してくれー」と声が掛かった。

(まったく、手が掛かる!)

 着替え一式が少々湿気っていても文句を言われる筋合いはない。そう思いながら脱衣所に向かった佐藤は、あれよあれよと言う間に着ていた服を剥かれて風呂場へと押し込められてしまう。「お湯を張ったから早く入れ」とは松本の談。不本意でも自分一人ではお湯を溜めることはほぼないため、ブチブチと文句を言いながら湯船に浸かった。
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