絵本作家は砂糖菓子の夢を見る

宮野愛理

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第十五話

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 佐藤がゴホゴホと咽せるのが落ち着いてから、改めて「で?」と聞いてくる松本はうやむやにするつもりがないようだ。

「と、とりあえず……」

 さてなんだろう? と佐藤は首を傾げた。
 読み物としては面白かったように思う。ただそれを書けるか、と考えると難しい。

「嫌悪感とか羞恥心とか、あった? あのシーンで終わる系しか読んでなさそうだけど……つか佐藤が昔読んでた純文学のほうが、結構アレなシーン多くなかったか?」
「あー……そう考えれば、確かにそうかも?」

 当時はあれこれと考えずに読んでいたから読めただけで、思い返せばなかなかハードだったかもしれない。そして、全体的にぼやかした書き方だったから文学表現として読むことが出来た。

「でも直裁的な書き方はなぁ……」
「自分にも付いてるモンじゃねぇか、俺にだって付いてるし。……お前、修学旅行の時ってどうしてたっけ?」
「知恵熱出して、部屋のシャワーだけにした。いや、銭湯とかは行ったことあるし、心配しなくても男にはシンボルが付いてることはわかってるってば」

 その言い回しに松本がテーブルに突っ伏す。

「シンボルって……お前、いつの時代の人間だよ……」

 突っ伏す時、器用に弁当の空き容器を避けているのがすごい。そしてもう食べ終わっているのもすごい。佐藤はまだ半分くらいしか食べていないが、そろそろ腹が苦しくなってきた。
 箸の動きを横目に見た松本が「そのほうれん草だけでも食べなさい」と指摘してきて、なんとかそれだけを食べきる。

「ん、お粗末さま。残りはくれ」
「ごちそうさまでした。……よく食えるな」

 食べさしがどうこうではなく、単純に量の問題だ。最初からそのつもりだったとは言え、焼き肉弁当のボリュームは多かった。食べきった後に満腹を感じたっておかしくないのに、松本の食べる勢いは変わっていない。

「さすがに高校の時よりは食べる量減ってるぜ? そうじゃなくて、佐藤の食べる量が少ないだけの話。幕の内弁当なんて、じーさんばーさんも食べきれる量だぞ?」

 そう言われてしまうと耳が痛い。ついでに「せめて三食しっかり食べてしっかり寝ろ」とお小言までちょうだいしてしまう。
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