絵本作家は砂糖菓子の夢を見る

宮野愛理

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第七話

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 モヤモヤとした気持ちを抱えたまま、それをどうこうすることも出来ずに寝入った佐藤は夢の世界で頭を抱えてしまう。

「サトー? どうした、体調が悪いのか?」
「いやほんと、なんでもないです……」

 いつもと変わらない姿で、いつものようにドアを開けてくれたブライクに心が痛んだ。
 牧歌的な雰囲気に合うような襟ぐりのゆったりとした生成りのシャツに、草木から染めたという少し茶の入った緑色のボトムス。どちらも大きめに作られているはずなのに、ブライクの体には少し窮屈そうに見える。襟ぐりや二の腕からはフサフサの毛がはみ出ているし、服の上からでも筋肉質な体がわかる。

(前まではなんとも思わなかったのに……!)

 とてつもなくエロティシズムを感じてしまった。これはもう佐藤の心持ちが変わったからであって、ブライクに非はない。非はないが、もっとゆったりした服を着て貰いたい。
 ちなみに、佐藤の服も似たようなシャツとボトムスに変わっている。手持ちのものなのでもう少し近代的な縫製だが、素っ裸やパジャマ姿ということはない仕様だ。
 フレイウェルへは寝るたびに来ているわけではない。自分で行く、行かないは決められず、ふっと「今日は行くかも」と夢うつつで向かう場所。モヤのような霧のような、そんなところを抜けるとだいたいブライクの家の前へと辿り着いている。以前は毎晩のように来ていたが、徐々にその頻度は下がっているかもしれない。

「今日はゆっくり出来るのか?」
「はい。ようやく仕事が落ち着いたので大丈夫だと思います」
「そうか」

 目を細めたブライクが佐藤の頭を器用に撫でた。
 手のひらは人間のような五本指だが、不思議なことに肉球がある。全体に毛が生えていたら物が掴みにくいからだろうな、とのことだ。そして爪は動物と同じ鋭利なものが生えている。
 ブライクはその爪が当たらないように、最初の頃はおっかなびっくりで佐藤に触れていた。

「少し顔色が悪い。ゆっくり出来るなら、ベッドを用意するから横になってくれ」
「え? いや、それはちょっと……」
「私を安心させると思って欲しい」

 切れ長な目尻を緩めてそうお願いされると、佐藤は断ることが出来ない。ついでに頬だって赤くなったような気がする。
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