5 / 35
第五話
しおりを挟む
せっかくのオードブル――とはいえ佐藤は酒が駄目なので飲んでいるのはお茶だが――の味がわからない。
「ふぅん? そのネーム見せてくんない?」
「やだ」
「佐藤くん?」
「……」
保証人をしてもらっている恩義はある。入院費だって一度立て替えてもらっている。つまり、佐藤は松本に逆らうことなど出来ないのだ。苦渋の思いでネームとも言い切れないようなラフを手渡すと、松本の眉間に皺が寄った。
「こういう感じだと、そっちのジャンルのほうが……って話で……」
「なるほどねぇ」
佐藤の口から〝ボーイズラブ〟という単語が出て来た時から嫌な予感はしていた松本の疑念は、確信へと変わる。
「ブライクさんのこと、好きなんだな?」
的確に言い当てられ、佐藤の顔が赤く染まる。そんな自分の変化にあたふたとしてしまい、松本の「ポッと出のやつに……」という言葉を聞き逃した。
「まぁ、チャレンジするなら止めないけどさ。佐藤の文体だと原作者って流れになりそうだから、そうなってくるともうちょい話を盛り込まないと無理だと思う」
「盛り込む?」
「佐藤って漫画はあんまり読んで来なかったんだっけ?」
松本が言うには緩急が必要なんだそうだ。絵本にだってあるものだが、漫画や小説に比べるとページ数が極端に少ない。そのぶんエピソードも削っているから、そこを補充しないとならないらしい。
「わかりやすく言うなら、キスとかセックスとか」
「セッ……!?」
一話完結にするにしてもせめてキスくらいは入れ込まないと駄目だと言われて、佐藤は目を回した。
「キス……」
「接吻でも口づけでもベーゼでも良いけど」
「全部同じ意味だよ!!」
まったくもう、と顔を覆う佐藤を見て松本は少しだけホッとした。この様子ならまだ淡い想いだろうし、むしろ男同士への嫌悪感が薄れたのなら自分にもチャンスがある。
「ふぅん? そのネーム見せてくんない?」
「やだ」
「佐藤くん?」
「……」
保証人をしてもらっている恩義はある。入院費だって一度立て替えてもらっている。つまり、佐藤は松本に逆らうことなど出来ないのだ。苦渋の思いでネームとも言い切れないようなラフを手渡すと、松本の眉間に皺が寄った。
「こういう感じだと、そっちのジャンルのほうが……って話で……」
「なるほどねぇ」
佐藤の口から〝ボーイズラブ〟という単語が出て来た時から嫌な予感はしていた松本の疑念は、確信へと変わる。
「ブライクさんのこと、好きなんだな?」
的確に言い当てられ、佐藤の顔が赤く染まる。そんな自分の変化にあたふたとしてしまい、松本の「ポッと出のやつに……」という言葉を聞き逃した。
「まぁ、チャレンジするなら止めないけどさ。佐藤の文体だと原作者って流れになりそうだから、そうなってくるともうちょい話を盛り込まないと無理だと思う」
「盛り込む?」
「佐藤って漫画はあんまり読んで来なかったんだっけ?」
松本が言うには緩急が必要なんだそうだ。絵本にだってあるものだが、漫画や小説に比べるとページ数が極端に少ない。そのぶんエピソードも削っているから、そこを補充しないとならないらしい。
「わかりやすく言うなら、キスとかセックスとか」
「セッ……!?」
一話完結にするにしてもせめてキスくらいは入れ込まないと駄目だと言われて、佐藤は目を回した。
「キス……」
「接吻でも口づけでもベーゼでも良いけど」
「全部同じ意味だよ!!」
まったくもう、と顔を覆う佐藤を見て松本は少しだけホッとした。この様子ならまだ淡い想いだろうし、むしろ男同士への嫌悪感が薄れたのなら自分にもチャンスがある。
0
――匿名での感想や絵文字も受付中です――
wavebox
wavebox
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる