この世界に唾を吐く

やまげん

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ヤンギャルの屁

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 マユミがテーブルの上に電源が入ったまま置いてある俺のパソコンをいじり始めた。俺はアダルト動画でも流したままだったのか、程度にしか思わずほおっておいた。が、違った。

「彫師のホブソンが言った。あの三人組にも聞いてみなよ、みんな好き物だから。俺は立ち上がり、三人組の男女の所へ行って、声をかけた。バツって分かる?三人組の」そこまでマユミが言った所で、俺はとっさにパソコンを奪った。マユミが笑う。「ダイチウケる~。小説家志望じゃもんねぇ、ウチの大好きなダイチちゃんは~。アハハハ」どうやら、アダルト動画を見ていたんじゃなく、小説を書いていたらしい。きっと、覚せい剤をキメて。俺はシラフじゃ書かない。と、いうよりも書けない。どうしても、自分の文章に自信が持てないからだ。書いてて、辛くなる。かと言って、キメた状態の俺の文章に光るものがあるのかと言えば、そうでもないだろう。光るものがあれば、今頃、ヤクザの腹を刺すなんて事、していないはずだ。だが、面と向かって文章を笑われて、猛烈に腹が立った。俺とマユミの立場をここで、もう一度はっきりさせとく必要があるみたいだ。俺はマユミの髪をわし掴みし、一発顔面に食らわせた。「痛い!」鼻から一筋の血が流れる。その光景を見たサユリは驚愕の目をする。

「おぃコラマユミ。シャブがキマっとるけぇって、えぇ気になるなよ」うんうんとマユミが頷く。ナンバーワンキャバ嬢だかなんだか知らないが、俺をこけにする奴に容赦はしない。俺はテーブルの上のシャブを砕いて、鼻から吸った。それから、穿いているジーンズを脱ぎ、下着も脱いで、マユミに言った。「しゃぶれ」マユミは無言で俺のチンポを吸い始めた。「サユリは好きなだけ炙っとけや」目まぐるしく移り行く光景に驚いているのははっきり分かった。ただ、サユリはうんと頷く。サユリが一人で炙る姿を見るマユミの目は、怒りに満ちていた。
 しばらくマユミにしゃぶらせていると、サユリが俺に聞いてきた。「トイレに行きたいんですけど」
「ションベンか?」
「ハイ」
「そこでせぇ」俺はベランダを指さし言った。
「え?そこですか?」
「おぉ。お前のションベンするところ見せろ」
「嫌ですよ・・・」しゃぶるのをストップして、マユミが口を挟む。「えぇじゃん、エスのお礼せんと」笑っている。義理堅いのか、サユリは悩むそぶりを見せる。
「じゃぁ・・・」そう呟き、サユリはベランダに裸足で出る。スウェットのズボンとパンツを脱ぐ。恥なんて言葉、シャブの効いた人間には存在しない。
ベランダに出て、下半身を丸出しにして、サユリがしゃがみ、小便を出そうとする。が、出ない。「出、ん」小便が出にくくなる症状は、ケミカル系のドラッグ、特にMDMAを摂取すると起こる。だが、覚せい剤を摂取しても起きる事がある。俺もだ。ここ最近は、残尿感が多々ある。小便を出し終えたと思いパンツを穿くと、尿道に残った小便がパンツに多量に染み込む。
小便を出そうと踏ん張り続けるサユリ。唐突に、ぷー、と音がした。りきみ過ぎて、サユリが屁をこいた音だった。それを見てマユミは大爆笑だ。その笑いに、友情なんて微塵も感じなかった。
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