この世界に唾を吐く

やまげん

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初めての体験

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「・・・凄い・・・」目が点になっている。サユリも覗いているが、いまいち何が何だかピンときていない様だ。俺は冷蔵庫を閉めて、二人をリビングに向かうよう促した。マユミを迎えに行く前にキメたシャブの塊をテーブルの上に置く。「たちまちキメるか」「うんっ!」マユミが期待に満ちた目つきをして俺を見た。そして乾いた唇を舌で舐めて湿らせる。
「サユリは?」マユミが聞いた。
「え、ウチは・・・」
「怖がらんでえぇんよ、ただのエス。これは」
マユミが諭す。その目は、共犯者を作ろうとする、似非ジャンキーの目だった。俺は黙っていた。ただ、まだ10代だと思われるのに、豊かに育った豊満な胸に注目していた。いったい何歳なんだ?
「じゃあウチもヤろうかな。マユミちゃんもするんでしょ?」怯みながらも、マユミに気を使って同調している風だった。
「当然っ」
俺は台所へ行って、アルミホイルを適当な長さに切って、リビングに戻った。アルミホイルを丁寧に折りたたみ、太いストローを用意した。炙りの準備だ。マユミは炙り派だし、初めてのサユリも炙りの方が良いと思っての事だ。
 
 アルミホイルの上に適量のシャブの結晶を乗せ、ストローをマユミに渡した。「やり方見せるけぇ、ちゃんと見とくんよ」マユミがサユリに言った。俺はアルミホイルの下からライターの火で結晶を熱した。すぐに結晶は溶け、白い煙があがった。煙を無駄なくストローで吸うマユミ。何度か繰り返し、マユミが言った。「イイ感じにアガったんですけど~」そしてストローをサユリに渡す。「ほら、吸ってみんさい」差し出されたストローをサユリが受け取り、くわえた。俺がアルミホイルの下から同じ様に火をかざそうとしたら、突然サユリが聞いてきた。「あの、ウチももらって良いんですか?」なかなか礼儀正しいガキだ。「えぇよ、気にすんな」そしてサユリも白い煙を吸った。
 数分後、サユリは今まで味わった最高の気分を何倍にもした様な感情に覆われて、なんとも言えない、満足しきった顔になっていた。まさに、恍惚としている。「エス、超凄い!」この世界にまた一人の覚せい剤中毒者が生まれた瞬間だった。よく学べ。快楽の後には、必ずツケが回ってくるんだ。
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