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第四章 産み火
溝と、首
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本拠地の島の海向かいの島へと軍を進めたクナの軍は、その南半分を侵食した。
さらりと時を進めたが、サナが突如として異例の戦闘指揮を執りあり得ぬほどの勝利を収めたオオシマの争奪戦から、一年が経過している。クナが喫した負けは、回復にそれほどの時間を費やす程度のものであった。
裏を返せば、あれほどの負けから、よくも一年で再び軍を発するほどにまで回復したものだ、と見ることもできる。
いま、ヒコミコは、高台の杉の木の脇に腰掛けて、眼下にムラを見下ろしている。大陸式の軍袍こそ着ているが、甲冑も着けず、矛も持たず。 投げ出した片方の足が、退屈そうに揺れている。
三千の兵を三手に分け、点ではなく面で抑えてゆく作戦であった。軍師ユンは、本拠にあって何やら策謀を巡らせているため、随行していない。ユンの知略がなくとも、この草深い島のクニグニには大した軍組織もないから、制圧には苦労しないはずであった。
ヒコミコは眼下に広がるムラを見ながら、
「セイよ」
と傍らに立つ一番の側近に声をかけた。
「早く平らげるぞ。この分では、いつまで経ってもきりがない」
「少し、お疲れになりましたか」
と、このよく気がつく男は言った。
「この島を全て平らげるのは骨が折れますが、ここを抑えれば、オオシマ無くともヤマトの動きはある程度封じることができます」
「俺はな、セイよ。ヤマトの動きを封じることなど、眼中にないわい」
「分かっています。ヤマトをその火で焼く日まで、今少しの辛抱です」
セイはヒコミコに遠慮なく物の言える数少ない者のうちの一人であった。それだけ、心の繋がりは深いと見えた。
筆者の都合でさらりと時を進めたついでに、今度は時を戻してみたいと思う。
セイは、ヒコミコより少しだけ歳が下で、ヒコミコに付けられた側近団のうちの一人であったが、その側近団の最も力のある者が、ヒコミコがまだ十五になるかならぬかのとき、不興を買い、斬られた。ヒコミコとは、生まれつき、そういう気性であった。
そのとき、たまたま居合わせたセイが進み出てきた。セイは、その髪や肌の色などの容貌から、あまり周囲に馴染めないでいる様子であった。もともと無口で大人しい性格であったため、ヒコミコがセイの声を聴いたのは、そのときが初めてであった。
セイが、側近団の長の無惨な骸に近づいてゆく。
「おい、お前。何をするつもりだ」
セイは、答えない。
「口が利けぬのか」
「この骸を、片付けて参ります」
ヒコミコの顔も見ず、小さな身体でずるずると引き摺っていった。
しばらくして戻ってくると、どかりと胡座をすると、こんこんと説教を垂れだした。
「これは、一国の主たらんとする者のすることではありません。ヒコミコには、まだ他に次の主とならんとするご兄弟がおられます。彼らがヒコミコの非道を鳴らし、誅してしまうようなことになれば、どうするのです」
ヒコミコは、呆気に取られ、とりあえずセイと同じようにゆっくりと胡座の姿勢で座った。先王には可愛がられていたが、周囲からはその気性を恐れられ、周りに人が付かぬ。王位継承権を狙う他の兄弟が、そこに眼を付けぬわけはなく、セイはそのことを言っているらしい。
「重ねて申し上げます。このクナを治める主たるヒコミコの父は、武をもってこのアシハラナカツクニ――」
とセイはこんにちの我々が「日本」と呼称している地域の広域名称を持ち出した。ただし、この時代の「アシハラナカツクニ」と言えば、具体的にどこからどこ、という地域を指すわけではなく、「世界」という概念にも似た使われ方をした。後年になり研究者が、「どこ」を指すのかを特定しようとし、現在の大分県の中津であるとする説や、出雲地方であるとする説、または大和盆地であるとする説など、様々な学説が示されているが、例によってはっきりしない。
様々な観点から考証を重ねても未だアシハラナカツクニがどの地域を指す語であったのかハッキリしないのは、それが「概念」そのものであったためではないか。
「――アシハラナカツクニを統べようとなされております。その事業を継ぐことが出来るのは、ヒコミコ、貴方一人なのです」
セイは、まだ少年の年頃ながら、その人生で最も豊かと思われる論説を披露した。ヒコミコは小石が途端に生命を持ち跳ね回り、口を利いたような驚きと、興味を覚えた。
「この天と地を、俺のものに」
「だから、斬るのは、人であってはいけません」
「では、何を斬れと」
「敵をこそ」
と、この話題の要点が、観念的なものであることを示した。
「人は、敵ではありません。ヒコミコがクナの主となり、アシハラナカツクニを統べるのを阻む者こそが、敵です」
「人は、敵ではないのではない、か」
ヒコミコは、もはやこの論理の遊びが楽しくなっていた。由来、遊びとは楽しいものである。
「そうです」
「では、誰が」
「この世です」
「世?」
「この世を斬り靡かせ、天も地も草木の一本に至るまで、ヒコミコの威のもと治めてはじめて、世は世たり得るのです」
とセイは言い切り、このクニ――が国家になろうとしているまさにそのときである――に大陸よりもたらされた新しい価値観を指導した。
「そのために、人は使わねばなりません」
ヒコミコは、おもむろに立ち上がった。
その場にいた別の者どもはヒコミコがセイを斬るのではないかと肝を冷やしたが、もとの無口な若者に戻ったセイの方にずかずかと歩み寄り、
「おれを、佐けよ」
とその肩に手を置いた。
それからすぐの後、早くに平らげたクナのある島の中央にある「ヒ」というクニがかつて存在した地域にそびえる、「神が宿る」とされる山が、大地を揺らし火を吹いた。
ヒ、とは「火」であり、その山を崇め付けられた地域名称であること、クナの先王が既にその地域を焼き付くしたことは既に触れた。その神の山が噴き上げた火は、ヒの土地を焼き、灰がクナの地にも積もった。
ヒコミコは、自室から灰色に煤けた空を見ている。
「セイよ」
黙って、セイがするすると進み出てくる。
「やるぞ」
灰の降る中、兄弟の中で最も年長の者の居館に、二人で押し入った。
セイが急報を告げながら駆け入ったので、館の者は皆、噴火についてのことであろうと思った。
長兄は、居室で女を抱いていた。
この歳の離れた長兄は、既に妻を五人持ち、子も十二人いた。
長兄が抱いているのが、その妻のうちの誰であったのか、妻ではない妾であったのかは分からない。
交合の真っ最中に押し入られた長兄は、子供のようにきょとんとした顔をして、二人を見た。
この頃は、交合の際も着衣を取らぬことが普通であり、男女ともスカートのような下衣をまくり上げてことに及ぶ。現代において、それはある種の趣のある行為として楽しまれることがあるが、この頃はそれが普通であった。
長兄は、女から身体を離した。
奇しくも、王はヤマトの地を平らげるための遠征のため、不在である。
「何用じゃ」
と言い終わるのが早かったか、ヒコミコの剣が長兄の首を跳ねるのが早かったか。
セイが水のように動き、さらに女の胸を刺し貫こうとした。
「待て」
セイの剣が、止まる。
ヒコミコはまず、時間をかけて女を犯した。
その後、女も殺し、長兄の妻や妾の全てを犯し、殺した。手向かってくる館の者は、全て斬った。
そして次には、居館の前に長い穴を掘り、その前に長兄の子達を座らせて並べた。
両端にヒコミコとセイが立ち、順に首を落としていく。
落ちた首は、その穴の中に転がり込んだ。埋め戻された穴の前には、首のない死体がそのまま転がされていた。
夜になり、その死体に薄く灰が積もってもその行為をやめず、王の子で遠征に随行していない者の全ての館で、同じことをした。また、遠征に主が随行している館でも、同様の惨劇が起きた。
その一連の作業が終わったときには夜が明けており、灰を被った陽が、空に寒々と浮かび上がっていた。
ヒコミコは、王の館に上がり込んだ。
そこで館の者に、火の神の神託により長兄が首魁となって兄弟がクニを奪わんとしていたことを知り、その一族全て葬ったことを宣言した。
この降り積もる灰は、火の神の怒りの現れであるとした。
このとき、「火の神を宿すヒコミコ」が誕生した。
あまりに急で、荒唐無稽な話であるが、全身を血に染め燃えているよりも赤くなったヒコミコに皆従った。
そして王が遠征先での戦いが上手くゆかず、突如として病を発し、帰国してきた。
王、そしてそれに随行していた他の兄弟、軍師ユンもあまりの事態に驚愕した。
「なんということを――」
と言った王の身体が、がくりと垂れた。
背後から貫き通したセイの剣があった。
「ヒコミコ(この場合、王のこと)は、病により命を落とされた」
手向かおうとした兄弟と、その軍を相手に、二人で火を吹いたように戦った。
百人は斬ったか、と思った頃、セイが声高に言い放った。
「ヒコミコはもう亡い。これ以上手向かい、クナをも無くすか、今より生まれる新たなクナを共に創るか、選べ」
それで、攻撃は止み、皆武器を伏せ、王に対する礼をもってしてヒコミコにひれ伏した。
「お前は、どうする」
と震え上がる軍師ユンに、ヒコミコは問うた。
「ヒコミコのもとで、新たなクナを創るため、我が力をお使いください」
この大陸渡来の切れ者にすれば、王はあくまで自分の才能を表現する道具であり、それさえ叶えば、その道具があらたな入れ物に変わったとしても一向に差し支えなく、忠誠心などのために命を落としては、たまったものではなかった。
「よかろう、使ってやる」
だいぶ薄くなったとは言え、まだ灰は降っている。
それを被りながら、ヒコミコは言った。
さらりと時を進めたが、サナが突如として異例の戦闘指揮を執りあり得ぬほどの勝利を収めたオオシマの争奪戦から、一年が経過している。クナが喫した負けは、回復にそれほどの時間を費やす程度のものであった。
裏を返せば、あれほどの負けから、よくも一年で再び軍を発するほどにまで回復したものだ、と見ることもできる。
いま、ヒコミコは、高台の杉の木の脇に腰掛けて、眼下にムラを見下ろしている。大陸式の軍袍こそ着ているが、甲冑も着けず、矛も持たず。 投げ出した片方の足が、退屈そうに揺れている。
三千の兵を三手に分け、点ではなく面で抑えてゆく作戦であった。軍師ユンは、本拠にあって何やら策謀を巡らせているため、随行していない。ユンの知略がなくとも、この草深い島のクニグニには大した軍組織もないから、制圧には苦労しないはずであった。
ヒコミコは眼下に広がるムラを見ながら、
「セイよ」
と傍らに立つ一番の側近に声をかけた。
「早く平らげるぞ。この分では、いつまで経ってもきりがない」
「少し、お疲れになりましたか」
と、このよく気がつく男は言った。
「この島を全て平らげるのは骨が折れますが、ここを抑えれば、オオシマ無くともヤマトの動きはある程度封じることができます」
「俺はな、セイよ。ヤマトの動きを封じることなど、眼中にないわい」
「分かっています。ヤマトをその火で焼く日まで、今少しの辛抱です」
セイはヒコミコに遠慮なく物の言える数少ない者のうちの一人であった。それだけ、心の繋がりは深いと見えた。
筆者の都合でさらりと時を進めたついでに、今度は時を戻してみたいと思う。
セイは、ヒコミコより少しだけ歳が下で、ヒコミコに付けられた側近団のうちの一人であったが、その側近団の最も力のある者が、ヒコミコがまだ十五になるかならぬかのとき、不興を買い、斬られた。ヒコミコとは、生まれつき、そういう気性であった。
そのとき、たまたま居合わせたセイが進み出てきた。セイは、その髪や肌の色などの容貌から、あまり周囲に馴染めないでいる様子であった。もともと無口で大人しい性格であったため、ヒコミコがセイの声を聴いたのは、そのときが初めてであった。
セイが、側近団の長の無惨な骸に近づいてゆく。
「おい、お前。何をするつもりだ」
セイは、答えない。
「口が利けぬのか」
「この骸を、片付けて参ります」
ヒコミコの顔も見ず、小さな身体でずるずると引き摺っていった。
しばらくして戻ってくると、どかりと胡座をすると、こんこんと説教を垂れだした。
「これは、一国の主たらんとする者のすることではありません。ヒコミコには、まだ他に次の主とならんとするご兄弟がおられます。彼らがヒコミコの非道を鳴らし、誅してしまうようなことになれば、どうするのです」
ヒコミコは、呆気に取られ、とりあえずセイと同じようにゆっくりと胡座の姿勢で座った。先王には可愛がられていたが、周囲からはその気性を恐れられ、周りに人が付かぬ。王位継承権を狙う他の兄弟が、そこに眼を付けぬわけはなく、セイはそのことを言っているらしい。
「重ねて申し上げます。このクナを治める主たるヒコミコの父は、武をもってこのアシハラナカツクニ――」
とセイはこんにちの我々が「日本」と呼称している地域の広域名称を持ち出した。ただし、この時代の「アシハラナカツクニ」と言えば、具体的にどこからどこ、という地域を指すわけではなく、「世界」という概念にも似た使われ方をした。後年になり研究者が、「どこ」を指すのかを特定しようとし、現在の大分県の中津であるとする説や、出雲地方であるとする説、または大和盆地であるとする説など、様々な学説が示されているが、例によってはっきりしない。
様々な観点から考証を重ねても未だアシハラナカツクニがどの地域を指す語であったのかハッキリしないのは、それが「概念」そのものであったためではないか。
「――アシハラナカツクニを統べようとなされております。その事業を継ぐことが出来るのは、ヒコミコ、貴方一人なのです」
セイは、まだ少年の年頃ながら、その人生で最も豊かと思われる論説を披露した。ヒコミコは小石が途端に生命を持ち跳ね回り、口を利いたような驚きと、興味を覚えた。
「この天と地を、俺のものに」
「だから、斬るのは、人であってはいけません」
「では、何を斬れと」
「敵をこそ」
と、この話題の要点が、観念的なものであることを示した。
「人は、敵ではありません。ヒコミコがクナの主となり、アシハラナカツクニを統べるのを阻む者こそが、敵です」
「人は、敵ではないのではない、か」
ヒコミコは、もはやこの論理の遊びが楽しくなっていた。由来、遊びとは楽しいものである。
「そうです」
「では、誰が」
「この世です」
「世?」
「この世を斬り靡かせ、天も地も草木の一本に至るまで、ヒコミコの威のもと治めてはじめて、世は世たり得るのです」
とセイは言い切り、このクニ――が国家になろうとしているまさにそのときである――に大陸よりもたらされた新しい価値観を指導した。
「そのために、人は使わねばなりません」
ヒコミコは、おもむろに立ち上がった。
その場にいた別の者どもはヒコミコがセイを斬るのではないかと肝を冷やしたが、もとの無口な若者に戻ったセイの方にずかずかと歩み寄り、
「おれを、佐けよ」
とその肩に手を置いた。
それからすぐの後、早くに平らげたクナのある島の中央にある「ヒ」というクニがかつて存在した地域にそびえる、「神が宿る」とされる山が、大地を揺らし火を吹いた。
ヒ、とは「火」であり、その山を崇め付けられた地域名称であること、クナの先王が既にその地域を焼き付くしたことは既に触れた。その神の山が噴き上げた火は、ヒの土地を焼き、灰がクナの地にも積もった。
ヒコミコは、自室から灰色に煤けた空を見ている。
「セイよ」
黙って、セイがするすると進み出てくる。
「やるぞ」
灰の降る中、兄弟の中で最も年長の者の居館に、二人で押し入った。
セイが急報を告げながら駆け入ったので、館の者は皆、噴火についてのことであろうと思った。
長兄は、居室で女を抱いていた。
この歳の離れた長兄は、既に妻を五人持ち、子も十二人いた。
長兄が抱いているのが、その妻のうちの誰であったのか、妻ではない妾であったのかは分からない。
交合の真っ最中に押し入られた長兄は、子供のようにきょとんとした顔をして、二人を見た。
この頃は、交合の際も着衣を取らぬことが普通であり、男女ともスカートのような下衣をまくり上げてことに及ぶ。現代において、それはある種の趣のある行為として楽しまれることがあるが、この頃はそれが普通であった。
長兄は、女から身体を離した。
奇しくも、王はヤマトの地を平らげるための遠征のため、不在である。
「何用じゃ」
と言い終わるのが早かったか、ヒコミコの剣が長兄の首を跳ねるのが早かったか。
セイが水のように動き、さらに女の胸を刺し貫こうとした。
「待て」
セイの剣が、止まる。
ヒコミコはまず、時間をかけて女を犯した。
その後、女も殺し、長兄の妻や妾の全てを犯し、殺した。手向かってくる館の者は、全て斬った。
そして次には、居館の前に長い穴を掘り、その前に長兄の子達を座らせて並べた。
両端にヒコミコとセイが立ち、順に首を落としていく。
落ちた首は、その穴の中に転がり込んだ。埋め戻された穴の前には、首のない死体がそのまま転がされていた。
夜になり、その死体に薄く灰が積もってもその行為をやめず、王の子で遠征に随行していない者の全ての館で、同じことをした。また、遠征に主が随行している館でも、同様の惨劇が起きた。
その一連の作業が終わったときには夜が明けており、灰を被った陽が、空に寒々と浮かび上がっていた。
ヒコミコは、王の館に上がり込んだ。
そこで館の者に、火の神の神託により長兄が首魁となって兄弟がクニを奪わんとしていたことを知り、その一族全て葬ったことを宣言した。
この降り積もる灰は、火の神の怒りの現れであるとした。
このとき、「火の神を宿すヒコミコ」が誕生した。
あまりに急で、荒唐無稽な話であるが、全身を血に染め燃えているよりも赤くなったヒコミコに皆従った。
そして王が遠征先での戦いが上手くゆかず、突如として病を発し、帰国してきた。
王、そしてそれに随行していた他の兄弟、軍師ユンもあまりの事態に驚愕した。
「なんということを――」
と言った王の身体が、がくりと垂れた。
背後から貫き通したセイの剣があった。
「ヒコミコ(この場合、王のこと)は、病により命を落とされた」
手向かおうとした兄弟と、その軍を相手に、二人で火を吹いたように戦った。
百人は斬ったか、と思った頃、セイが声高に言い放った。
「ヒコミコはもう亡い。これ以上手向かい、クナをも無くすか、今より生まれる新たなクナを共に創るか、選べ」
それで、攻撃は止み、皆武器を伏せ、王に対する礼をもってしてヒコミコにひれ伏した。
「お前は、どうする」
と震え上がる軍師ユンに、ヒコミコは問うた。
「ヒコミコのもとで、新たなクナを創るため、我が力をお使いください」
この大陸渡来の切れ者にすれば、王はあくまで自分の才能を表現する道具であり、それさえ叶えば、その道具があらたな入れ物に変わったとしても一向に差し支えなく、忠誠心などのために命を落としては、たまったものではなかった。
「よかろう、使ってやる」
だいぶ薄くなったとは言え、まだ灰は降っている。
それを被りながら、ヒコミコは言った。
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