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4 連れ出してあげる
しおりを挟むでも、少しだけ。
本当に少しなんだ。
外の世界に、行ってみたい。
「ご馳走様でした。」
「はーい、じゃあ俺、これ片付けて仮眠とるわ、昨日徹夜でゲームしてたら眠くてさー」
「はい、分かりました。おやすみなさい。」
午後は誰も相手をしてくれる人がいないな。
「さて、続き読むかー」
そう言って、読んでいた本を手に取る。
(早くご主人様、帰ってこないかな。)
たくさん、好きって言いたいな。
ーーー
「ここか……」
来てしまった。
初めて、授業をサボった。
あれから俺はおかしくなった、彼の事が忘れられなくなったのだ。
(授業中も苦しくて苦しくて……俺にはあの人がいないと駄目なんだ。)
恋すると、人はこんなに駄目になってしまうのか。
いや、俺だけだろうなーーこんなに馬鹿になるのは。
階段の所まで行って、彼にバレないように様子を伺った。
「……いた!」
彼は昨日と同じように本を読んでいた。
(可愛い顔………)
でも、どこか寂しそう。
(……せめて、笑って欲しいな。)
どうやったら笑ってくれるかな。
(どうしたら………)
そして俺は、思い付いた。
「外の世界を、見せてあげよう。」
うん、若かった。
「そうとなれば……」
俺は勇気を出して階段を2、3段おり、相手が気付くように手を振ってみた。
(気付いてくれ……!)
10秒くらいして、やっと気付いてもらえた。
彼はものすごく驚いて、いや誰だこいつみたいな顔をした。
まぁ、当たり前だよな。
「開けてくれ」
そう口パクで伝えた。
彼は少し戸惑っていたけど、決心したのか窓を開けてくれた。
「こ、こんにちはー、はじめまして」
少しカタコトだが、伝わったはず。
彼はまだ、ぽかんとしていた。
そして、言った。
「貴方……誰ですか。」
まぁ、予想通りだな。
「俺は……多分お前のクラスメイト!隣の席!黒瀬悠太って言うんだけど!!」
こんなんで伝わるかなーー通報されないかなーー
しかし、彼の目が少し輝いたのが見えた。
「ふぇ……?くらす、めいと………?」
どうやら、クラスメイトという言葉に反応したようだった。
「ああ、お前だよな?梓川夏帆って。」
「う、うん!僕が梓川夏帆だよ!」
可愛い……。
「そ、そっか、会えて嬉しいや、夏帆、今から遊びに行かない?」
俺のだらぶち野郎。
どこのナンパ野郎だよおれぇぇぇぇぇ!!!
(断られるよな……流石に、通報されるかも。)
当たり前だ、クラスメイトと名乗る見知らぬ男に急に遊ぼうなんて言われて、通報しない方がおかしい。
goodbye 俺の青春☆
でも、彼はそうしなかった。
「外に連れ出して、くれる…の………?」
「……ッ!」
そう言って、目を輝かせる。
(かわいい………)
「……あ、でもご主人様が。」
「ご主人様?」
「うん、外に出ちゃ駄目なんだ。約束。」
……なんで?
体が弱いとか?特別な病気とか?
ていうか、ご主人様って……何?どういうこと?
「そう、なんだ……」
「だからごめん……僕、その………」
そんなの、知らない。
どうだっていい。
「じゃあ俺達だけの内緒だ!行くぞ夏帆!!」
「へ、ぇぇぇっ!!!?」
俺は無理矢理、夏帆を外に連れ出した。
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