ゆうみお

あまみや。旧

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6章 三学期。

226.その下

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「………」



縫ったあと、まばらな跡。



………気持ちが悪い。



半袖の中にまで伸びる傷の跡は、まだ痛々しかった。




「………」
「あの…そんなにジロジロ見ないで」




気持ち悪いならそう言ってくれていいし、引くなら引くで構わない。



でも演技だけはやめて欲しい。




「………澪が」



視線を変えないまま、話し始めた。




「澪がずっと隠してたこと、知れてよかった」




………



「気持ち悪くなんてないよ、むしろ………、……あ」



それは言いかけてやめた。




「優馬…?」
「ごめん……なんか、変な感じがするんだ」



なにか変な感じ。



「………やっぱり、気持ち悪い?」
「ううん、違うよ………むしろその逆だって、思う自分が怖くて、」



その逆………、




「俺……やっぱり頭がおかしいのかも。だって、その傷が………



きれ「おかしい訳ないよ」……あ」





「優馬はおかしくない、少なくとも僕はそう思うから」



優妃さんとは違うから




「………大丈夫だよ、だって優馬…ただの馬鹿じゃん」



そう言って笑った。



「ッ……!馬鹿じゃないし!!せめてそこにイケメンをいれてくれ!!」
「えー……」




もう重たい空気はやめようと、和ませてみた。



冗談を言ってしばらく笑った後、




「……戻ろっか。」
「そうだな…!」






ーーー

(郁人side)



「はぁ………澪がとうとう優馬に……」
「まぁまぁ、そんな落ち込むなよ……」



といいつつぼんやりしている僕と未来斗。


ちなみにずっと澪達の話を部屋の前で聞いていた。




「子供が巣立ったような感じ………」
「いや、これは息子を嫁に取られた姑の気持ちだな……」


未来斗は何故か経験があるかのように語ってた。



「ていうか、言わなくていいの?本当のこと」



………



「……言わない方がいいよ、それが澪の為だと思う。それに……優馬に言うのも気が引けるっていうか」



僕が転校した本当の理由は、




「でも無理があるって気付くと思うぞ?郁人のお父さん小説家だしお母さんはパート、仕事の都合なんて有り得ないだろ」

「いいの、僕は親の仕事の都合で転校した。それでいいから」







「………犯人の名前も分からない。苗字だけしか載ってなかった、どこにも」
「今もどこかにいるんだよな………」
「うん……でももう関係無いよ、澪は僕が守るし」


未来斗が「俺も守るぞ!!」って言うから「お願いね」と言っておいた。




「にしても……やってる事優妃さんと変わらないんだよなぁ……、レベルは全然違うけど」
「優妃…?誰それ」





ーーー

(優馬side)



図書室に戻ってきた時、何故か未来斗も郁人も息が荒かった。


「何?運動でもしてた?」
「うんまぁちょっと………」


澪はまたカーディガンを着て、眠たそうに目を擦っている。


………次の瞬間、




「っ………澪!!」


隣にいた俺にぽすん、と寄りかかってきた。


と思ったらそのまま眠ってしまっていて、



「そんなに疲れたかな………」
「……なんかそれ、あれみたい」


あれ……?



「……何?」
「……病院行った方がいいかも。」



そう言う郁人に、思い出したかのように話しかけた。




「そういえば俺…!澪の昔あったこと聞いた!」
「……そうなんだ」



思ったより驚かれなかった。



…………けど、




「…………あのさ優馬、もしこれから澪に色々な事が起きても、一緒にいてあげられる?」



そう聞かれて、



「うん…勿論」



そう答えたら、





「そっか………、……じゃあ、お願いね。澪のこと。」




…………なんて言われて、





「え………」
「何……応援してるんだけど」
「えっ、あっ」



それってつまり………


一瞬動揺したけど、すぐに気を引き締めた。




「あ…あの、郁人さん…!!」
「っ…!はい…?」


名前を呼ばれて少し驚いた郁人に、




「だ…………大事にするので、澪さんを俺に下さい…!!」





…………とまぁ、両親への結婚の申し込みみたいな事を堂々と言った。





「…………何それ、僕親じゃないし」
「そうかな………、…郁人お母さん?」
「しかもお母さんかよ…、まぁ………



僕が親なら、優馬は澪の…………




こ、




恋人に、なってあげて。」






...





「………………えっ」
「~っ……」




郁人が、背中を押してくれた。




「……ッ、待って…ちょっと待ってやめろよ嬉しいだろ…!!」
「し…知らないし!!赤くなんな馬鹿!!!」







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