ゆうみお

あまみや。旧

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6章 三学期。

223.もう二度と ※

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「一発芸やります!田中先生のモノマネ~」


春樹兄さんのいない日の夜は、必ず郁人と未来斗が家に来てくれるようになった。


「似てる似てるー、たまにビブラートつけて喋るよね、あの先生」
「会ってみたいです……その先生」


僕の部屋で美優も呼んで、4人で寝るまで話す。

それが休日なら日付が過ぎても話し続ける、なんてこともあった。


そして気付けば寝落ちしている。



だから春樹兄さんから「絶対飲んで」と言われている薬を忘れてしまうことも多くて、



「や"…、やだ!!やだ、ッごめんなさい、ごめんなさい!!」



その日は決まって夢にあの2人が出てくる。


体の一部が無い血塗れの2人が殴りながら責めてくる。



その夢を見ている時はいくら呼んでもなかなか目覚めなかったらしい。



「ぅ"……、ひく、ッえぅ"」
「大丈夫だよ、大丈夫、僕達がいるから………」



皆にどれだけ迷惑をかけたんだろう。



夜中に何回も目が覚めては郁人達も起こしてしまっていた。



ーーー



そんなある日のこと。

体育の時間だった。


「今日暑いね………」



その日はすごく暑くて、皆勿論半袖。


僕も半袖にしたかったけど、傷は痕になっても痛々しく残っていた。



(これ一生消えないのかな………)



なんて思っていたら名前を呼ばれて、顔を上げたら先生がいた。



「……!先生」
「今日は暑いのに長袖なんて着るな」



長袖なことを注意された。



「すみません……でも、」


ちなみに郁人と未来斗は長袖だけど腕までまくってる。


だから怒られないのかな、なんて思いつつ俯いた。



「暑苦しいんだ、脱ぎなさい!!」
「ッ…!やめ、やめてください…!!」



無理矢理脱がされそうになって、抵抗したけど勝てなかった。


「澪…!」
「やだ、やだ、やだやだ」



チャックを降ろされて、上着を無理矢理脱がされた。



「っあ………」




先生が一度手を止める。



傷を見ていた。





「は………?」






周りの生徒も皆、こっちを見ていた。



ずっと………一瞬の事なのに、それが永遠に感じて、




「あ……」




周りからの視線が冷たい。



「ッ……」




ひそひそと話し声が聞こえる。





笑っている人、嫌な顔をしている人。





「……気持ち悪い。」





そう聞こえて………サーっと、青ざめていくのを感じた。





「………」


俯いていると、





「澪!」



誰かに腕を掴まれて、ぐい、と引っ張られた。


「あ………」
「行こ、あっちで休もう……?」



そう言って郁人があの人達から遠ざける為に俯く僕を連れていってくれた。





ーーー


校舎内のトイレ。



「もう大丈夫だよ、ここなら誰もいない」


個室の鍵を閉めて、2人きりでチャイムが鳴るまでそこで過ごした。




「………ごめん、僕のせいで、ごめんなさい」
「…ああもう泣かないで?澪のせいじゃないよ」


袖を濡らして泣きじゃくる僕に郁人はあやすように微笑んだ。



「僕は味方だから、…それに未来斗も。……大丈夫、こんな思いさせないから」




でもそう言った時に郁人が何を考えていたのか、




その時も今も、まだ分からない。









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