ゆうみお

あまみや。旧

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6章 三学期。

222.友達 ※

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朝、狭い部屋で目が覚めて、持ってきてもらった薄味の朝ご飯を食べる。


その後に薬を飲んで、それからずっと部屋に引きこもっていた。


(お母さんもお父さんも褒めてくれてたのになぁ……)



でも、体調は戻らない。



もう学校に行けなくなって何ヶ月経つのか、それすら忘れていた。



(家に帰りたい)




家に帰ったらお母さんがいて、「おかえり」って言ってくれるから。


お父さんが仕事から帰ってきて一緒に遊んでくれたり、勉強を教えてくれたりするから。



だから、早く家に帰りたい。






……………






(……あれ………?)





お母さん…?お父さん……?



(家にいない、なんで?)




2人はどこに行ったの



夢の中のあの人達は誰



いつも怒鳴って殴ってくる人達は、



お母さんは、お父さんは、





(あれ……………?)






ーーー

「ではこちらでお薬出しておきますね、お疲れ様でした。」


ある日突然退院していた。

最近飲む薬が夜だけ増えた………なんて思っていたら。


隣には春樹兄さんがいて、悔しそうな表情を浮かべている。



「ごめん…ごめんね、澪、ごめん」




何故か春樹兄さんは謝っていた。





「苦しい思いさせてごめん………」




ぼーっとして何も考えられなかったけど。





ーーー


家に帰ってきて、夜になったら薬を飲まされた。


「ごめんね………耐えてね」



ぼーっとする頭じゃ何も考えられなくて、手渡されたカプセル錠の薬を飲んだ。


それからしばらくして、



「……兄さん、眠い」
「じゃあもう寝よっか、今日は何も考えなくていいからね」



酷く疲れたように体が重くなって、その日もすんなり眠ることが出来た。



「もう、何も心配することないから。」





ーーー


朝、目が覚めた。


……自分の部屋で。



あの夢も見ずに、起きることが出来た。



「え………なんで」
「あ、起きたの?おはよー」


兄さんが部屋に入ってくる。


「おはよ………」
「よく眠れた?」


頷くと、「それは良かった」と微笑んで、朝ご飯ができたことを教えてくれた。


ーーー

「いただきます」


美優が礼儀正しく挨拶をして、ご飯を食べ始める。


「ようやく3人で食べることが出来ましたね、澪が寝坊しないか心配でしたけど。」
「そんなのしないよ………子供じゃないんだから」



美優にはまだ少し違和感はあるけど、別にこれでもいいんじゃないかって思うようになった。



「じゃあ私学校行ってきます。」
「あ…うん、行ってらっしゃい」
「いってらっしゃーい」



ランドセルを背負う美優。





(そろそろ……僕も行けるかな)



もう何ヶ月も行っていなかった中学校。


………すごく緊張するけど、




ーーー

2日後、ようやく学校に行くことが出来た。



「あれ……澪じゃん」
「うっそ!久しぶりー」


クラス替えで変わったクラスメイトの顔は全員分からなかった。


でも、同じクラスに未来斗と郁人がいた。



「澪、初めは保健室登校でも………」
「ううん、大丈夫。参加出来るよ」



放課後未来斗がプリントを持ってきてくれたり、郁人がその日の勉強を教えてくれていたおかげで、授業には大体ついていけた。


問題は……………





ーーー


「はッ、っ…はぁ、ひゅ、ひ……あ、」


体育。

体力は明らかになくなっていて、少し走っただけでちゃんと息が出来なくなった。



「ちょっと見学してよっか、大丈夫だよ、ゆっくり……「何してる」……あ」



郁人が木陰に連れてきてくれた時に、先生がこっちに来た。



「すみません、ちょっと休…「そうか、お前は戻れ」」


そう言われて郁人は腑に落ちない表情で戻って行った。



「先生……」
「お前もこんなすぐにへばるな、情けない」



少しくらい多めに見てくれてもいいのにな、なんて思いながら体育座りして皆を見てた。


皆は半袖だけど、僕だけが長袖。



絶対にあの傷を見せたくなかったから。




ーーー

「じゃあ僕も長袖にしようかな~」
「お、じゃあ俺も!」


郁人も未来斗も、僕が出来るだけ目立たないように協力してくれたのが嬉しかった。


2人にはこれまでのことを全部話した。


あの日の夜のこと、まだ犯人が捕まっていないこと、



辛い夢を見るから眠るのが怖いことも、全部。




「じゃあさじゃあさ!俺達で一緒に寝ない?」
「え……?」
「春樹さんだっていない日あるだろ?その時は俺と郁人で澪の家でお泊まり会しようよ!」



郁人も頷いて、




「……っ」





そこまで思ってくれている友達がいた事が、素直に嬉しかった。








ーーーーー



個人的にぼーっとしてる澪の目にハイライトがなかったら良いな、という妄想です。


もうちょっと続きます…!



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