ゆうみお

あまみや。旧

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6章 三学期。

216. 救われた ※

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前話の最後にもありますがここから先しばらく全年齢対象じゃなくなります!
苦手な方はタイトルの※が無くなるまで読むのはお控えください。

あらすじは終わった後に軽く説明させていただきます!


ーーー



「う"………、っぉ"ろ、う"ぇぇ"………」



あの日から、僕は何度も吐くようになった。




朝起きても何かしていてもフラッシュバックしてくるあの光景が、頭から離れようとしない。



(お葬式………行きたくない、お願い、もう許して)




あの人達を見るのが怖くてたまらなかった。




でも今日はお葬式の日。


休んでいたせいでしばらく着ていなかった学ランを着て、リビングに向かった。



ーーー



「あ………、おはよう、澪」



朝、食パンにバターを塗りながらこっちを見て微笑んだのは春樹兄さん。


しばらく大学を休んでこっちにいてくれるらしい。




「にいさ………、……ッ!!ぅ"」




咄嗟に口を抑えていた。



また………あの時の場面が強制的に頭に浮かぶ。




脱衣所に向かって、洗面器に吐いた。





「ふ……ッ、ッ……はー、は、かは、ッひ、ぁ」




息が苦しい。



もう思い出したくなんてないのに………あの様子が刻み込んだように脳に浮かぶ。




食欲なんて湧くはずもなく、そのうち痩せて成長が止まるほどにもなった。





「澪……無理しないで、今日は休んでても大丈夫だから」
「………でも、」
「こんな状態で行かせられないよ、澪は何もしなくていいから………あとは俺に任せて」



頼りたくなかった。




家に1人でいるのは怖かった。




誰かと一緒にいたかった。






「駄目……僕も、行く」
「でも………」





結局僕も、お葬式に行った。






ーーー




来るんじゃなかったと、本気で思った。



「あの子達………まだ上の子も中学生よ?これからどうするのかしら」
「引き取り手を探すんじゃない…?」



周りから聞こえてくるのは僕と美優への言葉。




「えぇ………うちは無理よ?子供が3人いるもの」
「うちだって無理よぉ………施設しかないわよね」



「ッ………!!」





施設なんて絶対に嫌だ。



学校に行けなくなる、そうしたら未来斗達にも会えなくなるんだと本気で思っていたから。


俯いて、ぎゅっと手のひらを握りしめた。


制服の裾を掴まれて、ハッとする。




「美優達………施設なの?」




不安そうな美優の声。表情。


着慣れない黒い服を着て、いつも髪型が変わる長い髪の毛は今日は下ろしている。



「そんなこと………ない、ないよ、大丈夫、僕も美優も、施設なんて………」



声が震えた。

そこに追い打ちをかけるような他人の声。



「どこも無理に決まってるわよ、あの子達は施設で決定ね。」





心臓がドクンと、落ちていく感覚がした。





(やだ……そんなの、絶対)




もうこれ以上無くしたくない




誰も………失いたくない








……………その時だった。






「澪君、美優ちゃん」



低い声に名前を呼ばれた。


声の方向は前で………顔を上げると、そこにいたのは、




「あ………叔父、さん」



春樹兄さんのお父さん、そして………ある親戚の人。



春樹兄さんのお父さんの隣には、春樹兄さんがいた。




「澪、美優、あのね。澪達はうちで預かるっていう事にした。」



その報告に思わず、少しだけ気が軽くなった。



「でも……うちは父さんも母さんも仕事が忙しい、だから引き取ることは出来ない」



春樹兄さんの言葉を、しっかりと、一言一句残さず聞いた。




「だから………俺が2人の面倒を見る。澪が中学を卒業するまでだけど………それから、この人達が資金援助をしてくれることになった。」



そこで親戚の人達が現れた。




「しきん……えんじょ」
「そう、だからお金のことは心配しなくていい。引っ越さなくてもいい」



唯一両親との思い出がある家から出ていかなくていい。



それを聞いた途端………どれだけ嬉しかったか。





「………そういうわけなので。」
「「ッ…!!」」



春樹兄さんはさっきまで施設施設と話していた人達を睨んだ。




「ふぅ………じゃあ通信制にしなきゃな……これはめんどくさくなりそう」





と頭を軽く掻きながらぶつくさ言う兄さんを前に、本当に少しだけ………気分が楽になったのを覚えてる。








けど、悪夢は終わらなかった。









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