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6章 三学期。
202.ずっと一緒に
しおりを挟む次の日。
「おまたせ!双葉ちゃん」
待ち合わせ時間ジャスト、明日香さんが現れた。
「こんにちは………、……!」
いつものオタサーの姫のような格好じゃない、今日は大人っぽくて可愛い私服。
髪を下ろして毛先が軽く巻かれていて、そして……
「明日香さん……まさか、お化粧してます…?!」
明日香さんは得意げに頷いた。
「ふふーっ!明日香だってこれくらいできますからね!……綺麗…かな」
………!
「はい、とても………!」
お姫様に見えた。
ーーー
服屋で服を見て、可愛い飲み物を飲んで、
友達らしい事をした。
(いつから……この人の事、苦手じゃなくなってたんだろう)
前まであんなに苦手だったのに。
「あの………明日香さん」
「なに?」
「手を繋いでもいいですか?」
意味を理解した明日香さんは途端に赤くなった。
「………?寒いからですよ?」
「え…あ、……そ、そっかぁ~…!」
何と勘違いしたんだろう。
………
「明日香さんって子供体温なんですね」
「そ…そうかな……初めて言われた」
まだ雪が残るレンガの道路。
手を繋いで歩き続けた。
ーーー
(李世side)
「ラティッシュって言うんですね…!初めて見ました~!」
お仕事体験中です。
飲食店で刺身やラティッシュの切り方を教えて貰ってる。
「そうそう、こんな感じで皮に切込みを………」
「……」ザクッ
1つのお店につき2人か3人。
というわけで勿論ボクは真冬といる。
「高山さん上手いね」
「ありがとうございます…っ!」
店長と会話をするのはボクの役目。
真冬はボクの隣で黙々と作業して………気が付いたら指が血で赤く染まってた。
「なにやってんの真冬………」
「……」唖然
ラティッシュの皮の赤に、それよりちょっと濃い赤が重なった。
「……舐めれば治る」
「やめなよそんなの……ってうわほんとに舐めた」
顔を少し下げて指の血を吸う真冬。
舐めるのは良くないけど頭を下げて触覚で横顔が隠れるのはなんか………
「もー、水で流しなって!」
「……」
店長がずっと何も言わず微笑んで見ていた。
ーーー
(美優side)
「っあ"~~…!よ"か"っだぁぁ"………ほんっどにないた!!」
滝と言わんばかりにどばどば涙を流す明日香さん。
ドキュメンタリー映画の感動も、私の分まで泣いてくれる明日香さんのお陰で私は泣きはしなかった。
「化粧取れますよ」
「直してくる………」
ーーー
(明日香side)
化粧を直して出てくる時、男子トイレからも人が出てきた。
「………え、澪?」
「…ッ!?」
なんで双葉ちゃんのお兄さんがここに……………
制服で来てるのがなんとも言えない。
「なんで澪が制服でここに?」
「いや…あの、これは」
特に追い詰めてはいなかったけど、簡単に澪は本当の事を言ってくれた。
「美優が危ない目に遭わないか偵察………、……ッあ、違うよ?!1日中見張ってた訳じゃなく学校終わって、なんとなく買い物に来たら……!」
ここ、隣町なのに………
(嘘下手だなぁ………)
「別にいーけど、良い子はお家に帰る時間だよ?」
「子供扱いしないで………年下の癖に。」
ーーー
「……」
とりあえず澪はそのまま放置しておいたけど、見られてたと思ったら途端に嫌な感じがした。
(というか澪も大概シスコンだよねぇ………)
………仕方ない。
「明日香さん、遅かったです……えっ…!?」
「行くよ!双葉ちゃん!!」
帰ってくるなり双葉ちゃんの腕を掴んで走り出した。
「あ………明日香さん!!?」
白いコートに厚底の靴。
そんな双葉ちゃんを走らせるのは悪いけど………
「ストーカーに追われてるの!」
「なッ………」
まあ間違ってはいない。
野外ショッピングモールの中を、階段を登って……2階廊下を走って、
そのうちに段々………楽しくなってきた。
(……このままずっと、2人でいたかったな。)
けど、途端に寂しくなった。
走り続けて気が付けば………人気の少ない場所に着いていた。
立ち止まって、振り向く。
「明日香さん………?」
「……双葉ちゃん」
これが最後だなんて思いたくない。
また同じ学校に通って………2人で遊びに行きたいのに、
「………もう学校では会えないんだよね。」
「明日香さん……どうしたんですか?」
高校に受かったら、入学したら、もう一緒にはいられない。
「どうして………違う高校になっちゃったのかなぁ………。」
苦しい
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