210 / 260
6章 三学期。
198.「助けてくれるよね?」
しおりを挟む「桜木は……僕のもの…だよねぇ」
どうして振り向いてくれないんだろう。
ボクはこんなに桜木の事が好きなのに………
どれだけ願っても、欲しいものが手に入らない。
あの頃のスカートのような存在。
どんなに手を伸ばしたって、捕まえられなかった。
ーーー
(優馬side)
「あれっ?澪は?」
澪がまた具合が悪くなって保健室に来ていた。
放課後になったから迎えに来たのに………いない。
「行き合わなかったか?双葉なら今出てったぞ」
「えっ……そうなんだ、ありがとうございます」
行き違いになったらしい。
急いで来た方向と逆方向を探しに歩いた。
ーーー
階段を登っている澪が見えた。
(あ……いた)
教室は2階なのに何故か3階に行ったから、気になって呼び止めずあとを付けてみる。
澪が1人で向かったのは、3階のテラスだった。
いつも俺達が昼ご飯を食べている方のテラスじゃない、もう1つのテラス。
(なんだろ……風に当たりたい気分だったのか?)
なんて呑気に考えていると、
柵に手をついて向こうを向く澪が少し大きな声で言った。
「何してるの…?優馬。」
……バレてた…………
諦めて出て行く。
「ちょっとストーカー?」
「バレバレだよ………ストーカーになってない」
ヘラヘラ笑う俺に澪は呆れてため息をついた。
「……で?ここで何してんの?」
澪は躊躇わず教えてくれた。
「なんか………考え事してたらここに来てた。」
いつもそうらしい。
考え事をしていると風の当たるベランダやテラスに出ている癖。
たまに昼休みに2年生教室前のテラスに出ていたのはそういうことなんだと思った。
「………優馬。」
「おう?」
「僕、いつも通りに見える…?」
………?
なんだろう、その質問。
「別にいつも通りだよ?…あ、でもクマある!」
「…!そ、っか」
なんの質問だったんだろう。
(………厨二病に目覚め始めたかな。)
普通にそういう感じだと思ってた、
………けど、
「………えッ、…は!?」
急に澪は柵を登り始めた。
「澪!何やってんだよ危ないだろ!!」
そう言ったらやめてこっちに戻ってきてくれたけど………
「……ふぅん……びっくりするんだ。」
「はぁ………?澪、なんか変だぞ………」
澪は少し何かについて考えていた。
その時の表情がいつもの澪に見えなくて………
「澪……?」
「………ねぇ、僕のことが好きならさ」
澪は俺の目を見て、影のある微笑みを見せた。
「ちゃんと、助けてくれるよね?」
……………
………
……
ーーー
(郁人side)
「桜木、帰ろう?」
「あ…うん」
最近……莉音が怖い。
「ねえ莉音、澪達も一緒に…「…帰ろう?」………」
話を聞いてくれないっていうか………
澪の話になるとすごく嫌そうな顔をする。
「莉音………あの、聞いて」
「………」
珍しく耳を傾けてくれた、そう思ったのに………
「澪は、」
その名前を出した途端、莉音は少しだけ顔を動かした。
そして、
「………何それ、
うっざ………」
こっちを………睨みつけてきた。
「………ごめん……」
「……ねえ、」
嫉妬なのかな、とは何となく分かってた。
莉音の冷たい目が、近付いてくる。
それに怯んだ、次の瞬間、
「……………ッ!!」
いきなり壁に………押し付けられた。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる