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6章 三学期。
196.スカートは
しおりを挟む「莉音は進路どうすんの?」
テラスに移動してご飯を食べてる時に優馬が莉音に聞いた。
莉音はお弁当のミニトマトを口に入れてから数秒後に、
「……就職、かな。メイクアップアーティストになりたくて。」
めい……?
「……?」
「……まあ、美容系だよ」
ちょっと素っ気なく教えてくれた。
「未来斗は?」
「え、と……俺は………」
こっちはお弁当のメンダコウィンナーを食べている時に話しかけられたから少し驚いて、
「……まだ決めてない。」
ちょっと下を向いて答えた。
「そうなんだ……ていうかそのウィンナー何…?」
「これは……母さんが好きなメンダコのウィンナー」
メンダコ………?
ーーー
チャイムが鳴った。
「……莉音!」
少し気になったことがあって、直接莉音のところに1人で行った。
「何……?」
「あの……どうやって進路見つけたのかな……って」
実はまだ進路に悩んでいて、参考になりそうなことを聞きたかった。
………それだけだった。
「………別に、ていうかこの時期になって決まってないの?」
………!
「………決めてはいるけど、自信なくて」
「そんなの僕だってないよ、ていうか最初から自身なんてあるわけないじゃん」
……………なんか……冷たいような。
(僕なにかしたっけ………)
「……そうだよね」
「うん、じゃあ僕授業の課題あるから」
あまりに素っ気ない態度で、莉音は自分の教室に戻って行った。
「澪?あいつになんかしたの?」
「いや……分かんない」
ーーー
(莉音side)
澪のことを嫌いになった。
単純に嫉妬。僕の持っていないものを沢山持ってるから。
それに、あの純粋さが見ていて辛くなるから。
………それだけ。
学校に帰って部屋に入って、
「………」
クローゼットの服を見た。
(僕がこの服を着れるのは努力したからだ。食事制限して、睡眠時間を減らして、出来るだけ成長しないように)
それなのに澪は何もしないであの小柄な体型。
(桜木からも、何もしなくたって好かれてる)
僕は努力してるのに、
(可愛い顔立ちに低い背、全部……全部僕の理想)
努力してようやく手に入れたものに対して、何も努力しないでそれより優れている。
………澪の事が大嫌いだ。
ーーー
次の日。
「おはよ、莉音」
「桜木…!お…おはよ」
朝、たまたま桜木に会った。
教室に行くまで一緒にいたけど………桜木のクラスに先に来た澪がいて、それを見つけた桜木が
「………じゃあまたね、莉音…!」
無意識なのかすごくすごく嬉しそうに手を振って、
そこから僕は1人で教室に向かって、
さっきまでいた人が隣にいないのが、寂しくて悔しくてたまらない。
(自分勝手だって、八つ当たりだって分かってるのに)
澪を憎まずにはいられない………
心の中だけに溜め込んだ気持ちが、爆発してしまいそうだった。
ーーー
『せんせい!見て!折り紙おったの!』
ふと、幼稚園の時のことを思い出した。
女の子の友達と2人で、折った折り紙を見せに行く。
ピンク色の折り紙で作った、花の折り紙。
『まぁ……上手だけどねぇ、男の子は普通青や緑を使うのよ』
あの頃は理解出来なかった。
ピンクのお弁当の包み。選ぶクレヨンはピンクや可愛い赤。
連絡帳も靴も服も、ピンクばかり。
それのなにがいけなかったのか、
その場面がフェードアウトされて次の場面に移り変わる。
記憶はいつの間にか夢になっていた。
………小学生低学年の冬休み。
「リコちゃん、スカート可愛い!」
中学生になってから疎遠になった、幼稚園からの幼なじみが1人いた。
ふわふわのスカートがよく似合う、リコちゃんという子。
親同士で仲が良くてよく一緒に出かけていた。
「可愛いでしょ~!ママが買ってくれたの!」
本当によく似合っていて、可愛い。
リコちゃんは長い髪をハーフで二つ結びして、女の子らしい顔立ちをしていた。
(僕も……リコちゃんみたいになりたいな)
「僕もスカート……履いてみたい。」
そう、呟いただけだったのに、
「まぁ……何言ってるの?莉音くん」
リコちゃんのお母さんにそう言われた。
「…?もしかして幼稚園の時にお遊戯会で着た女の子のドレス、よっぽど気に入ってたのかしら」
それに母が返して、
「でもスカートは女の子が履くものだもんね、莉音くんったらおかしい~」
クスクスと笑いながら僕を見てる。
……………怖くて、わからなかった。
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