ゆうみお

あまみや。旧

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6章 三学期。

192.共依存

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「李世…!」


いつから居たのか、澪と真冬が李世のところへ駆け寄ってきた。


「っ……あ、」


真冬を見るなり李世は少し身をすくませていたけど、



「……李世」



真冬が李世の名前を呼んで、その後は俺達に聞こえないくらいの音量で李世の耳元で何か言っていた。



「……李世のこと、1人にしない。

どんなに壊れても愛してあげるから、




だからもっと……依存してね。」






………何を言ったのか俺達は分からないけど、




「……うん、分かった。」





李世が頷いた。






「………ていうか澪、なんでここ分かったの?」
「なんか……真冬のリスが教えてくれて」
「え、リス?」



ーーー


……翌日。



「おはよーございますっ!先輩!」




今日もまた、廊下で李世達に会った。


((いつもの李世だ………))


俺も澪も同時に思ったと思う。



「李世、もう大丈夫そう?」

澪が聞くと、


「はいっ!先輩のお陰です……っ!」


そう言っていたので、まあ多分もう大丈夫なんだろう。



「……ふふ、ボクのことを気にするのもいいですけど、澪先輩も早く素直になった方がいいですよ~?」


……え?



「……?李世、なんのこ………」


俺も澪もちんぷんかんぷんだった。




「だから………



早くくっついちゃってくださいってことです!



………もう先輩方、卒業なんですよ?」




………!




「言われてみれば……もう1月だしな………」
「あっという間だったね……つい最近西原先輩達が卒業した感覚だったのに。」



意外と時間は早く過ぎるもの。

卒業したら俺と澪も会えるかどうか分からない。



(今のうちだよな………)




なんて考えて少し顔が赤くなりそうだった俺の横で澪は、





「……………」






すごく………苦しそうな表情を浮かべていた。






ーーー


(未来斗side)



「ねぇ未来斗、最近一緒にお昼も食べてないけどどうしたの?」


いつもとは明らかに様子が違う俺を、郁人は毎回昼休み教室に来ては心配りしてくれていた。



「ごめん…ちょっと、忙しくて」
「また倒れるよ?……うわ、また勉強してる」


「未来斗って大学進学とかじゃなかったよね?」と言われて、ペンを動かす手が止まった。



「………」
「ねぇ……まさかなんだけどさ、未来斗……



海斗と同じ大学に行こうとしてない?」





……………。



返事が出来ずずっと視線は問題集に向かっていた。


それを郁人は肯定と思ったのか、



「………やっぱりね。未来斗……あそこは簡単じゃない」



分かってる。

俺が少し頑張ったところで手の届かないところだって。




(でも………決めたから、海斗と同じ立場に立つって、立って、認めてもらうんだって。)



海斗がいるうちなら何年浪人しても構わない。



一緒にいたいだけじゃない、対等な立場でありたいという気持ちもある。



「もし行けたとしても卒業した後はどうするの?中退ってことも有り得るからね、



誰かの為にとか、そんな気持ちで目指してるんじゃないんだよ、皆。」




………分かってる。


その先の事だって中退の可能性だって考えてる。



あの大学を受ける人は俺みたいな目標じゃなくて、将来の為に目指している人達だって。



分かってはいるのに、




「だって俺……これしか思いつかない。」




どうすれば認めてもらうことが出来るのか、



海斗のお兄さんとその恋人みたいに学歴が同じレベルなら出来るのかなって思ったけど………



「駆け落ちとか……したくないんだ、海斗を辛い目に合わせるのだけは嫌だ。


俺も努力すれば…海斗が辛い目に合うことはないだろうから。」




………苦しい。



ずっと嫌っていたもの勉強に向き合うのは。



頭も痛い、疲れやすくもなる、お腹だって痛くなる。




でもそれは意味があるからで、







「辛い思いしてでも一緒にいたい人がいるんだよ。」






間違いく刻まれているはずだ。







「未来斗……」


郁人は少し眉を下げて、それから




「……でも、これは幼なじみとしての意見だけど、……僕は未来斗にそんな顔して欲しくない」



………どういう顔なんだろう。



「そんな……今にも倒れそうなくらい辛そうな顔しないで………」




………




未来斗には笑ってて欲しい、そう付け足された。


郁人のその言葉を聞いて、海斗ばっかり見ていて周りのことが見えていなかったんだと気付いた。



………そんな心配させたくなかった。




「………なんて、


大丈夫だよ!別に人格が変わったわけじゃないんだし!


……俺は俺だから。」



そう言って笑ってみせた。



「大丈夫、今年中に受験するわけじゃないし。今からじゃ間に合わないからな……」



受験するのは来年。


それまでひたすら勉強する。





(そして………海斗と同じ大学に行くんだ。


ずっと、一緒に居るんだ………)





俺が頑張るのは、あの人の為。





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