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5章 冬休み。
181.先輩
しおりを挟む初めてあの人に反抗出来た。
それは嬉しいけどすごく不安にもなって、
(どうしよう……これから)
財布も持たず、スマホしか持ってきていない。
薄着だから夜になったら寒いだろうし………どうすれば、
困りながら人通りのある道に出た、その時。
「あれ………?君」
聞き慣れたような声がした。
(この声……少し前までよく全校集会とかで)
その声の方に振り向くと、
「……!生徒会長!」
去年の生徒会長……西原先輩がいた。
………大きい先輩も一緒に。
「どうしたのそんな薄着で?ていうかなんでここに………」
もう今はこの人達を頼るしかない。
「………あの、」
ーーー
軽く事情を説明したら、寒いからって先輩の車に乗せてもらった。
「二階堂先輩、免許取ったんですね……」
「ああ、まだ慣れないから少し運転するのは不安だけどな」
運転席に二階堂先輩、助手席にせいとか…西原先輩。
(西原先輩の方は免許取ったのかな………)
まあ、それはともかく
「いや~、なんかちょっと気まずいねー、あんまり海斗君と関わり無かったからさ……」
「あ…えっと、お気遣いなさらなくても」
「いいよ、さっきの話詳しく教えてくれる?」
それが目的で車に乗せられた。
駐車場に止まった車、他人の車だったからかなり緊張してた。
「えっと……それで、」
話がまとまらないまま話す俺の話を、2人はずっと真面目に、たまに相槌を打ちながら聞いてくれた。
話し終わった途端、
「………なるほど、君って影薄いと思ってたけど割と面白い事するね」
「えっ」
さりげなく貶された?
「……純也はたまに気に触ることを言うが、気にしなくていいからな」
「あ……はい」
「りゅーきひどい」って頬を膨らませる西原先輩。
「何が酷いだ、自分の事を詳しく知らない相手に猫を被るのはやめろ」
「いーじゃん別にー」
………なんか仲良いな。
西原先輩が俺の方を向いた。
「でもさ、すごいと思うよ?よくそんな育てられ方した父親に反抗なんて出来るよね」
経験があるかのように……思えた。
「……ま、俺も反抗してやった側だけどな!」
あ、やっぱり経験あるんだ………
「反抗って……どんなですか?」
「えっと…なんだっけ、あ、確か13歳になった時の誕生日プレゼントに参考書を貰ったんだよ」
誕生日まで勉強で流石に疲れてしまったらしい。
『やだ……参考書もテキストもいらない、自由がほしい!』
………って、
「子供ながら面白い事言うよねー、まぁお陰でテストで1位をキープしてれば好きにしていいって言われたんだけど」
………なんかすごい。
「まあ、うちの父親は結果さえ良ければ後はどうでもいいタイプだから、海斗君と似てると思ったけど……違う?」
西原先輩と俺の境遇はよく似てる。
………けど、
「俺は……俺の父さんは、自分が作ったレールから子供が1ミリでも外れる事を許しません。過程も、結果も全部あの人の決めたとおりにやってるんです」
まあ……兄さんはそれを外れて、結構好き放題やってるけど。
西原先輩は「ふーん、なるほどねぇ……」と言って、
「……まあ俺がなにかしてあげられる訳では無いんだけどさ」
苦笑いしてみせた。
「はい……分かってます。」
やっぱりそう簡単じゃないことは分かってる。
だって俺は、従う事が当たり前だと思って生きてきたから。
「……でもどんな苦難でも変えられることは出来るからな!おかしいと思ったら反抗していいんだぞ?」
………!
(……一瞬、未来斗に見えた)
やっぱり従兄弟同士で似ているからなのか分からないけど、
「はい……ありがとうございます……!」
ーーー
「いいねー…この純潔具合……李世達にも見習って欲しいわ………」
「……駄目なものは駄目だ、諦めろ純也」
「いやあいつらはなんであんな不純なの………?」
考え事をしていて2人の会話は聞いていなかったけど、西原先輩が、
「そういえばりゅーき、頃合いじゃない?」
「は…?何がだ」
なんだろうと思っていると、
「ほら、前に言ってたじゃん!俺とりゅーきが高校生になる前に初めて会った時の話!」
………えっ
「き、気になります……!」
何故かすごく気になってしまった。
「ほら、後輩も気になってるよ?」
「……なッ」
この2人は高校で知り合ったのかと思ってた。
「俺、そんなこと言ってないぞ……?」
「いやいや、番外編見てみなよ。『もしもの生徒会』でそのシーンあるから」
え、何の話………
「俺ずっと気になって夜も眠らなかったんだよ?」
「いつもぐっすり寝てただろ………、それに、そんな大した話でも」
……あ、でも
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「「え……ッ」」
ーーー
とりあえず一息ついてそれから、
「……そういえば俺達はこれから三坂に行くんだが、えと…お前はどうする?」
「海斗でいいですよ、……えっと」
婚約も破棄できて父さんにも言い返せた。
正直もう……迷いは無い。
「俺も……連れて行ってくれませんか?」
あの人のところへ行く覚悟は出来た。
「おっけー、じゃあ運転しながらりゅーきの話を聞きましょう!!」
完全に二階堂先輩が話さなきゃいけない空気になった。
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