ゆうみお

あまみや。旧

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5章 冬休み。

180.反抗

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「あの…海斗様、いきなりお父様が部屋に入ってくるということは………」
「無いと思いますよ、多分部屋にお客さんが来てる時は部屋にも入ってこないかと」



「それなら良かった」と言って桜庭さんは髪を結び始めた。



「普段は結んでいるんですか?」
「プライベートだけです。身内からあまりよく思われていないので。」


わざわざコテまで用意して、長い黒髪を2つに結ぶ。


毛先をコテでくるくるさせたら、また雰囲気が変わって可愛くなった。



「………本当なら服も着替えたいんですけどね」


お嬢様らしい服似合うとは思うけど………



「桜庭さんって普段どんな服着てるんですか?」


興味本位で聞いてみた。





「………じ……」
「え?」



すると、





「じ……地雷系…よ」





……………え?



「地雷系って……歌舞伎町とかにいる人ですか?!」
「それは偏見すぎよ!!どこにでも居るから!」



なんか……急に声質が変わったような。



「も…もう私だって完璧な地雷女なんだから」
「え……どんな感じなんですか?何か…地雷系の用語、聞いてみたいです」



すごく興味本位。





「……、」



桜庭さんは少し恥ずかしそうに俯いた後、ばっと上を向いた。






「よ………、





よいちょ……。」








………



……………





「なんですかそれ…!どっこいしょみたいな感じですか!?」
「違うわよタコ…!!」



ちょっと可愛かった。





「……調べてみたんですけどそれギャル用語じゃないですか?」
「えっ、でもホストが出てくる漫画で………」




ーーー


(陸斗side)



………なんか楽しそうだな。


気になってドア越しで声だけ聞いてるけど、笑い声も聞こえてくる。



「………」


楽しいなら……いいんだけど。






ーーー


「あ、こんなサイトありますよ!地雷系になる為の……」
「ふむふむ………」


俺のスマホで地雷系について調べていると、


「……あっ」


間違ってホーム画面に戻ってしまった。



「………っあの、」
「……へぇ」



ホーム画面の待ち受け、澪達と遊んだ時に撮った写真だった………


改めて見られるの恥ずかしい。




「……誰が好きなんです?」
「……!」




「えっと………、この人」



迷いなく未来斗を指差す。
昨日のことを思い出して少し胸がチクッとした。



「あら……カマをかけたつもりでしたのに、本当に居たのですね」
「なッ……!」

「でも……この方って男性じゃ」


………!


まあ、確かにそうだけど、でも





「俺は、恋愛に性別なんて関係ないと思ってて。」


そう言って微笑むと、桜庭さんも少し微笑んだ。





「そう…ですわね。」






ーーー



夕方になった。


「もう夕食の時間ですわね。」
「はい、行きましょうか」


桜庭さんが髪を解いた。



「え……なんで」
「清楚でなければ悪い印象を与えてしまいます」
「……そっか………」



そんなの関係ないと思うんだけど………



(ツインテールも、可愛かったし)




ーーー



「ご馳走様でした。」



桜庭さんは当たり前のように食事も完璧だった。



「……すごいね、海斗」
「うん…すごい」


上品でしっかりしていて何事も上手くこなせる。



本当に………すごいと思った。





「桜庭さん。先にお風呂どうかしら?」
「お義母様。……はい、有難く。」


桜庭さんと目が合った。


「分かっているな」と言わんばかりの桜庭さんの目。





まだ抵抗はあったけど、しっかり頷いた。




ーーー


俺は一旦部屋に戻る。
兄さんもついてきた。


「あれ……海斗、どこ行くの?」
「脱衣場。」
「え、まだ桜庭さんが………」
「いいんだ、作戦のうちだから」


俺は着替えを持って脱衣場へ向かう。


兄さんはポカンとしていた。






桜庭さんが風呂に行ってから20分後。



………作戦決行の時間。









ーーー

(陸斗side)



「きゃあぁぁーーーー…ッ!!!」



「え……?!」


海斗の部屋で帰りを待っていたら、脱衣場の方から桜庭さんの悲鳴が聞こえてきた。




急いで脱衣場に向かうと、





「なッ………」




そこにいたのは服を着ない(タオルは巻いてる)桜庭さんと、あと、



「え……、あっ………」
「何してるの…!?海斗!」



海斗がいた。

少し慌てている様子で、




「っ……いや、あの、まだ入ってるとは思わなく「嘘言わないでください!!ノックはしていた筈ですわ!!」」



……!


まさか海斗が覗き………いやでも、あの海斗がそんなことするわけ、




「どうした!?何の騒ぎだ!?」



父さんと母さんも来てしまった。






「そんな方だとは思っていませんでしたわ………見損ないました、婚約どころではありませんね!」





………その言葉で何となくわかってしまった。



(あれ……もしかして、これ)




………2人を婚約させなくするための作戦?





「……ッ桜庭さん」



父さんが焦った顔で、桜庭さんと目合わせず言った。







「………すまなかった。



ちゃんと教育するから、婚約破棄だけは………」






………父さんだって譲らない。





(もう……解放してあげてよ)






「っ…嫌です、正気ですか!!?」





知らない人が見れば完全に襲おうとしていたような現場。



桜庭さんが演技じゃなくて本気で言ったんだと思った。




「頼む…!いや、お願いします!!」


母さんも父さんと同じように床に土下座した。



「私からもお願いします……!お願いします!」









………………なんでそこまで、







(もう………………)








俺達を、縛り付けないで。









ーーー


(海斗side)



明日話し合うことになった。


桜庭さんは空き部屋に移動して、そこから家の空気は最悪だった。



(……別にいい、汚名を着せられようがなんだろうが)



作戦は上手くいってる。




(俺も桜庭さんも、ちゃんと好きな人と幸せになれるなら、それで構わない)




その時だった。



「……失礼します」


桜庭さんが入ってきた。



「海斗様、申し訳ありません。あれしか思い付かなくて………」
「いえ……でも今の調子なら無事破談に進みそうですね!」



部屋着の白いワンピース。
少し申し訳なさそうな表情。



「このまま破談に向かわせましょう。俺と桜庭さんの為にも」




………あ、




「それと……作戦とはいえ女性の肌を見てしまい申し訳ありませんでした、配慮出来ず本当にごめんなさい」



やっぱり、不可抗力とはいえ少し視界に入ってしまったことは謝りたい。


真面目に謝ったつもりだったけど、桜庭さんは笑ってた。




「貴方のような方、あんな役にさせてしまって本当に申し訳ないですわ。…貴方って本当に素晴らしい方なのね。」


ふにゃ、と笑う桜庭さん。


素晴らしい方と言われてこっちはこっちで褒められて恥ずかしくなってしまった。




「ここにいることがバレたら全て水の泡です、おやすみなさい。海斗様」




ーーー


翌朝。




「………という事で、残念ですが今回の話はなかったことにして下さい」


桜庭さんの両親が来て、桜庭さんを真ん中にしてソファに3人で座っている。


桜庭さんはずっと俺と目を合わせないように俯いていた。




父さんと母さんが深く頭を下げて謝る。


勿論俺もさせられた。






(いいんだよな……これで)





これなら、桜庭さんに迷惑はあまりかからない。



これで良かった。





ーーー


帰る為に廊下に出る直前、桜庭さんがこっち……父さんを見た。




「ッ……!」
「お義父様………いえ、宝条和翔様」




父さんの名前を呼んで、それから







「貴方はもう少し柔軟な考えをお持ちになった方がいいかもしれません。



……恋愛に、縛りはないのですから。」






その場の誰もが見とれてしまうような、



すごくすごく………綺麗な笑みで、それだけ言い残して去って行った。





「………っ!」







ーーー


桜庭さんが帰ってから、



「…ぃぎッ!!」



父さんの怒りは尋常じゃなかった。


それは勿論俺に対してて、ぶつけられるのも俺。


頬をすごい強さで叩かれて、少しだけ体のバランスがぐらついた。




「父さん…!やめてよ、海斗は悪くな「黙れ!!上手くいっていたのに……全部お前のせいだ!!」」




………全部。




「ッ……このろくでなしが、どうしてそんなに出来が悪いんだ………」





別に、なんて言われようが構わない。



(そっか、やっぱり父さんにとって俺はただの道具)






そう思ったら全部ふっ切れた。






「………父さん」
「ッ…呼ぶな!!お前なんか」







こんな人に従う義理なんてない。





「出て行け!!この恥晒しが!!二度と俺の前に顔を……「……ってやるよ」」



最初に小さく呟いて、もう一度、






「何…?」
「…ああ、分かったよ。








こんな家、出てってやるよ!!!」








初めて、この人に向かって怒鳴った。



あんなに怖かったのに、吹っ切れたら簡単で、






「お前!!誰に口を聞いて「お前なんか父親でも家族でも何でもない…!」ッ…!!」




鬱憤を晴らすように怒鳴り続けた。







「この………、糞野郎!!!!」










家を、飛び出した。








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