ゆうみお

あまみや。旧

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5章 冬休み。

177.2人で

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「未来斗………、なんで、ここに………?」


簡単に来られる場所じゃないのに………




久しぶりに見る未来斗は、少しだけ大人っぽくなっていて、けどすぐにまた見慣れた表情で笑った。




「ないしょ、海斗………




俺と、してほしい!」







………………………えっ







「か……かけおち…!!?あ、ていうかその前に、ここ2階だぞ?!どうやって…………」
「よじ登った」ドヤ
「傍から見れば完全に泥棒………」


…………




「で…、かけおち、って…………」


未来斗は迷いなく言った。





「ここから逃げる。それが出来なくても………

せめて、今日………1日だけでも、俺は海斗と一緒にいたい」




………!




「……でも、俺………「お願い、今日しかいられないから」………」



本当なら今すぐにでも頷きたい。

けど、こんなことしてるのが父さんにバレたら………



「………っ……」



目を逸らして俯く俺を、しばらく未来斗は黙って見ていた。




…………そして、




「海斗はどうしたい?」

「…………」





そんなの、決まってる。








「行きたい…!俺は未来斗といたい!」








顔を上げた途端、強く両手首を掴まれた。






「じゃあ、行こう………!」










ーーー


「降りられない………」

第一関門。



「んー…あ、そうだ毛布!」
「え?」


未来斗は俺の毛布を指さした。



「あれをクッションにしよう!海斗が良ければだけど………」


……毛布で着地時の痛みを和らげようってことか。



「分かった。けど大丈夫かな………」
「大丈夫、俺に掴まって?」


不安しかない………けど、






「うん…!」




差し出された手を、迷いなく掴んだ。






ーーー



毛布を移動させている時。



「海斗……誰かいるの?さっきから声が………」


兄さんが部屋に入ってきた。


「兄さん……!ごめん、俺ちょっとかけおちしてくる!」
「あ、分かった。気を付けて………、…え?」



未来斗と目が合ってすぐ理解したのか、





「そっか………、分かった。



父さんのことは任せて!…頑張ってね、2人とも。」






「「………!」」




兄さんは味方でいてくれた。






「うん…!」
「はい!」




声が重なった。





ーーー



兄さんが廊下を見て父さんを見張りながら、

 
「あ、お風呂行ったかも。今だよ!」



そう合図した時に、



「海斗……、大丈夫。外に行ったら何しよっか」
「え、と………とりあえず、寿司!」



「っ……あはは!じゃあ絶対逃げ切らなきゃな!」




怖くないように手を握って………、2階のベランダから飛び降りた。








ーーー



強く瞑っていた目をゆっくりと開く。


毛布の上に未来斗が横になって、俺も覆いかぶさっていた。



「いたた……大丈夫?海斗」
「なんとか………」




繋っぱなしの手を離さずに立ち上がって上を見た。



ベランダから兄さんが見ていて、




「毛布の回収は任せて、あとこれ、忘れないでね!」




そう言って財布を落とされた。




「海斗、早く行こう。結構音がしたから」
「う、うん……、兄さんありがとう…!行ってくるね……!」



すぐに、走り出した。






「うん………、行ってらっしゃい。」








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