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5章 冬休み。
171.愛情表現
しおりを挟む「ぁ"…ッ、やめ、痛い…痛い、ゆうひ…や"めて」
大人がいない場所で、毎日年下の従兄弟…優妃に殴られた。
「なるほどー、こんな感じなんだね、人の歪んだ表情って」
本人はただの好奇心だったらしい。
腹を蹴られて頬を殴られて、その度にずっと優妃は楽しそうに笑ってた。
「お兄さんが来てくれて本当に良かった!妹にはこんな事出来ないからさー」
優妃は喜んでた。
それと反比例して俺は精神を病んでいって、
ーーー
「お兄ちゃん……大丈夫ですか」
「…、うた」
優妃の妹のうたは、俺が殴られている間渚達を世話してくれていた。
「ガーゼとか持ってきたので先に消毒しますね」
「ありがと………」
ーーー
この家に来て、本当に生活が楽になった。
福島から大阪に来たから学校は変わったけど、ご飯は叔母が作ってくれるし、皆優しいし。
まぁ……何故か私立の小中高一貫校に通わされて、勉強がかなり大変になったけど。
「いい学校を出て損は無い!金ならある!」って感じだったらしい。
優妃からの暴力が終わってから毎日遅くまで勉強して、かなり視力が落ちた。
「えっと……ありがとうございます」
「いいのいいの!眼鏡をかけるのは勉強してる証拠なんだから!」
謎の理論を押し付けられたけど、眼鏡を買ってもらった。
「優妃も優馬以上に勉強しなきゃ駄目だからね」
「……分かってるよ」
そう言われた日の優妃はかなり不機嫌で、
「優妃……痛いってば、ほんとに、やだ、…ぅあ"ッ!」
暴力も酷かった。
「いいよねー、お兄さ……優馬は、よそ者だからあんなに優しくされてさー」
(……呼び捨てにされた)
等々、年上として見られなくなった気がした。
ーーー
「俺も来年はひなだちの生徒かぁ……」
来年から中学生になる優妃。
ちなみにひなだちは俺達が通っている学校のあだ名みたいなもので、
雛河大学附属小学校(ひなだしょ)
中学校はひなだち、高校はひなだこ。
雛河のひな、と大学のだ、とそれぞれ学校の頭文字で略されてる。
「てか優馬なんでそんな勉強してんの?ひなだこ試験無いでしょ?」
「……」
なんで俺の部屋に勝手に入ってるのかは知らないけど、
「うるさい、お前なんかと一緒にいたくないんだよ」
叔母さん達もうたも優しくしてくれるのは嬉しいけど、このまま優妃といるのは嫌で、
(それに……こんな怯えっぱなしな性格じゃ、同じ高校に行ってもまた浮くだけだ)
学校で1人でいて周りから何か言われているのも知ってる。
そんなのもう嫌だ。
皮肉なことに、俺は母譲りの演技の才能があった。
それをいいことにここじゃない高校に行って高校デビューする作戦。
「……優馬って面白いよねぇ」
「うるさいサイコパス野郎………」
……でも一体、どこの高校に行けばいいんだろ。
ーーー
「優馬お兄ちゃんはどこに住んでたんですか?」
うたと夕飯の後一緒に皿洗いを手伝っていた時。
「福島だよ、浜の方」
「なるほど……」
そのついでに別の高校に行きたいことを伝えてみると、
「それなら福島にいい高校がないか探してみたらどうですか?知らない土地よりそっちの方がいいでしょう」
「……!」
そう……言われて、
ーーー
1人で、福島に来てみた。
妹達はうたに頼んで、乗り換え含めて大阪から福島までの駅を降りる。
「……あれ」
一駅間違ってしまった。
(三坂……?あれ、南三坂じゃなかったっけ)
まあいいや、と駅を出てみる。
もしここで駅を間違っていなかったら、きっと今とは全然違う未来になってたと思う。
「………普通の街だな」
住宅街、川。
街路樹が並ぶ歩道を適当に歩いていると、
(………この辺ってどんな高校あるんだろ)
なんて思っていたら、角から曲がってきた人とぶつかった。
「……!すみません」
「いえ……、………!ねえ、君」
謝って終わり、じゃなかった。
「……ッ!?」
ぶつかってきた同じくらいの背の男に、いきなり手を掴まれる。
希望に満ちたようなキラキラした目。
俺とは反対の。
「もしかしてまだ高校決まってなかったりしない…!?」
………驚いた。
「なん……で、それを」
「俺見る目はあるんだよなー、な、良かったら紹介してあげようか?」
え………
こんな見知らぬ人にそんなこと、
「そんなこと…貴方が出来るんですか」
「なッ……俺一応生徒会の人間なんですけど」
喋り方によらずなかなか地位は高いらしい。
「俺の高校に勧誘してあげあげてもいいけど」
「え…と、」
なんでそんな上から目線なんだ………
(あ、)
とりあえず名前は聞いておこう。
「あの……名前は?一応聞いてもいいですか?」
そう言うと、その人は自信ありげに微笑んだ。
「三坂東高校1年、生徒会会計西原純也!」
………とまあ、なんとも漢字が多い自己紹介。
「1年で生徒会なんですね」
「3年になったら生徒会長に決まってる、こんなかっこいい生徒会長いたら入って損は無いと思うだろ?」
自分で言っちゃった。
「………あの、他にこの辺高校って「無い、田舎だからここしかない」えぇ……」
嘘だ絶対隠してる………
(まあでも………あの高校じゃなければどこでもいいし)
俺はただあの家を出てもう優妃と関わりたくないだけ。
別にどこだっていい。
「ちなみに男子校な、…学校まで連れてってやろうか?」
「あ……いえ、後でネットで調べてみます」
知り合ったばっかりの人と学校見学に行ける程俺は陽キャじゃない。
「ていうか……生徒会ってこういう……学校勧誘とかもしないといけないんですか?」
眉間にシワが寄りすぎて少し下がった眼鏡を元の位置に戻した後、聞いてみる。
「…ううん、父親にやってこいって言われただけ」
「えっ……と」
「校長先生やってるんだよ、うちの父親」
………ええ
「なんかとにかく高い地位にこだわる人でさー、一番上の立場じゃないと気が済まないみたい」
「めんどくさいよな」って少し眉を下げて笑う西原さん。
そしてすぐに話題が戻る。
「あ、それでさそれでさ!君はどこ住み?」
………
大阪に住んでいることを伝えて、そのついでに優妃からの仕打ちも一応話してみた。
「大阪なんですけど………ちょっと、いと…兄弟に暴力とか受けてて、だから家を出たいなって、昔住んでたこの辺に来てみたんです」
西原さんは「辛いね」とか、そんな労いの言葉は使わずにまず、
「じゃあさ家貸してやるよ、俺の隣の家新築の空き家なんだ」
………!
「それは流石に………!」
「いいんだようち金あるから」
「え……校長先生って稼げるんですか?」
「あ、違う父親が趣味でやってる株で大稼ぎ出来て」
職業全く関係なかった。
「億はあるぞ~億……」
指を金の持ち方にしてにやにやする西原さん。
「……大丈夫です、両親の遺産があるので………」
こっちだって一応母親は女優。
金(遺産)なら……腐るくらいある。
すると西原さんはぷくぅ、と頬を膨らませて
「そんなの学費払ってたらすぐ無くなるだろ!いいから先輩に甘えろ!」
………ええぇ
「……ちなみにその家いくらですか」
「4670万」
「ッ……」
「4LDK一部屋は和室、どの部屋も大体8帖はあるぞ」
その他にも「内覧にでも行ったのか」ってくらいその家の情報を色々教えて貰った。
アイランドキッチンとか、ウォシュレット付きタンクレストイレとか、
正直意味が分からなかった。
「まあ、妹がいるならそれくらいの広さでいいだろ」
「いや…あの、でも」
こんな感じで決めていいんだろうか………
かなり不安だったけど、
「大丈夫だ、時期生徒会長が言う事だからな…!」
やけに自信ありげなその人に、従ってみることにした。
ーーー
「優馬、聞いたよ?ここ出るの?」
「……そうだけど」
帰って勉強をしている時に、優妃が部屋に入って話しかけてきた。
「母さん達には言ってたのに俺にだけ伝えに来ないのひどくない?」
「別にお前に言う必要ないしな」
あと数ヶ月。
あの高校に受かりさえすれば、こいつから解放される。
そう思うとペンを動かす手に力が入った。
………けど、
「………ッ!」
「ねえ、こっち向いてよ」
顔の向きを無理矢理優妃の方に向かされた。
銀色の目と、目が合う。
「優馬はね、俺から逃げられないんだよ?分かる?」
「そんなの……知らない」
優妃の目に光が無い。
いつもの楽しそうな顔じゃない、冷淡な表情。
「………あんな親達より、俺が一番優馬のこと愛してるのにさ」
………
「………は?」
優妃が……俺の事、愛してる……?
「ねぇ、ずるいよ。俺は無理矢理愛情表現の仕方狂わされたのに、どうしてあいつらの方ばっか見るの?」
意味が分からなくて、
けど頬を抑える細い指に、いきなり力が入った。
「あのね優馬、俺の親は俺が才能があるって分かったらいきなり扱いを変えたんだよ?
勉強ばっか強いられて、好きな事もさせてもらえない。あいつらは俺の事利用したいだけなんだよ
でも優馬は違うよね、頭が良くても血の繋がりがないから。良かったね、空っぽで中身のない愛情沢山貰えて」
震えが止まらない。
ずっと優妃と目を合わせているのが怖い。
「離せ……ッ「でも俺は違う、沢山愛情あげたでしょ?親からも愛してもらえなかった優馬に、たくさんたくたくさんあげたじゃん!!!」……ひッ………」
そんなの知らない。
こいつからは、暴力しか受けてない。
「あのね……優馬、ちゃんと俺の目…見て?俺は狂わされたの、あいつらに。
当たり前の感覚が無くなっちゃったんだよ
あいつらのせいで。」
これ以上は出来なかった。
「はな……、せッ!!」
勢いで優妃を突き飛ばす。
冷や汗も、動悸も、止まらない。
けど、
「………突き飛ばすなんて酷いよ」
優妃は、
「ぁが……ッ!!」
腹を殴ってきた。
何回も殴られて、立っていられなくなる。
「や"め……ッ、やだ、離せ、はなして」
怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
………ぐったりして動けない俺をしゃがんで見下ろして、愛おしそうに微笑んだ。
「優馬はねー、怯えてる顔が一番可愛いよ。それに、眼鏡をかけてる方が俺は好き」
それがあまりに怖くて、意識を手放した。
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