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4章 二学期(2)。
153.言えない
しおりを挟む(海斗side 未来斗)
………………ああ、最悪だ。
(結局言えなかった……!!未来斗に!!)
郁人だけに転校する事を打ち明けてから2日。
今日は終業式。
何故か……澪と優馬は転校の事を知っていて、「「離れてもズッ友!!」」みたいな事言われたから少し安心したけど、
(未来斗だけには……言えなかった、タイミングも勇気もなかった)
俺の勇気が無いのも原因の1つだけど、ここ最近未来斗はよく教室からいなくなっていた。
図書室に行ったりトイレに行ったり、とにかく声をかける隙がない。
声をかけられた時も………逆に「勉強教えて!」とか「ていうか昨日さ!」って……話題を変えられて全く話が出来なかった。
わざとらしいくらいに…………
そして今は終業式中。
先生の話なんて1ミリも頭に入ってこない、だって……この後すぐ、HRがあるから。
HRで俺が転校する事を先生が言うから………本当に今困ってる。
(どうしよ………いっそ当たってくだけるか!?)
…………
(それすら、怖くて出来ない)
未来斗の事だからきっと、泣くか無理して笑う。
泣いて欲しくもないけど………無理して笑ってくれるのが、泣かれるよりも辛くて、
(…………嫌だ)
言いたくない。
行きたくない、ずっとここにいたい。
…………苦しい。
ーーー
終業式が終わって、教室に着いてしまった。
「っ……」
先生が来るまで、あとおよそ5分。
言うなら今…………今、今…………!!
「っみく……」
前の席に座る未来斗の名前を呼んだ。
…………けど、
「……海斗?ごめん、ちょっと頭痛くて。保健室行くって先生に伝えといてくんない?」
「え……、あ………うん」
ふらふらと、未来斗は教室を出ていった。
「ついてくよ」って言う前に…………
(未来斗……具合悪くて大変なのに、
少しだけ、まだ時間はあるって安心した自分がいる)
本当…………逃げ腰な自分が嫌になる。
ーーー
「というわけで宝条は3学期から東京の高校に転校する、あと3ヶ月一緒にいれないのは残念だが…………」
前に出て、ずっと空席、未来斗の机を見ていた。
ーーー
「海斗~!!転校なんて聞いてねえぞ!!」
「とりあえず写真!思い出写真撮るぞ!!」
放課後……思い出作りたがりなクラスメイト達に絡まれてしまった。
「ごめん……しばらく帰れそうにないから、またな!」
「分かった、また今度」
澪達3人には事情を説明して、
「あ……未来斗、体調悪くて保健室にいるから、後で俺が迎えに行くよ」
未来斗の事も話した。
「……じゃあまだ未来斗、知らないの?」
HR前から保健室にいることを伝えると、郁人がそう聞いてきた。
「うん、でもちゃんと言うから!じゃあまたな!」
ーーー
午後5時。
「失礼します」
ようやくクラスメイト達から解放されて、保健室に行くことが出来た。
「あ、海斗!」
「遅くなってごめん……具合大丈夫?」
保健室では保健の先生と未来斗が椅子に座りながら何か話しをしていて、机の上に食べかけのプリンとカフェラテのようなものがある。
未来斗が「もう大丈夫!」と笑って、リュックを背負う。
「またな先生!3学期会お!」
ーーー
「そしたら先生がプリンとカフェラテくれてさー、あの先生結構面白いよ」
「そうなんだ……、あの、未来斗」
あの事を言おうとしたけど、
「…………なあ、遊園地、いつにする?」
「え……、あ……えっと………」
言い出すタイミングが無かった。
「12月中の方がいいよな!だったらー…………」
…………言わないといけないのに、
(会話を遮る勇気がない)
「またな!」
「うん……」
結局、最後まで言えなかった。
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