ゆうみお

あまみや。旧

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4章 二学期(2)。

151.コントロール

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人間っていうものは、どんなものでも案外簡単に操れてしまうらしい。




ーーー

(李世side 真冬)


「李世!先生呼んでたよ!」
「え、ありがとう黒木!」


ある日の昼休み、友達に教えて貰って真冬との話を一旦中断しようと席を立った。



「真冬、ここで待っててね」
「……、……え」




いつも通りだとすれば、ここでは真冬は頷いて読んでいた本の続きを読み始める。


けどどうやら、今日は「いつも通り」ではないらしい。



「……わぁっ」


パーカーの裾を掴まれたと思ったら………その掴んだものの正体は、真冬の指。



「どうしたの?」
「……!」



真冬は自分でやった癖にかなり驚いていた。


次の瞬間、ぱっと指が離れる。



「…?何かあったら黒木に言っててね、すぐ戻ってくるから」
「……」コクン




……………







ーーー


「てわけで進路考えとけよちゃんと、行ってよし」
「はーいっ!では!」
「なんか……テンション高いな」



やけにテンションが高いボクに、先生が不思議に思ったのか呼び出した用事以外の質問をしてきた。


まあ、ボクはそんなつもりなんてないけど、



「そうですか?まあ……最近楽しい事があるって言うのは事実ですからね…っ!」



正直に言って、いつも通りの媚び売りな笑顔を向けた。





ーーー



教室に戻る途中………廊下を歩いていたガラの悪い先輩にぶつかってしまった。


「チッ小さくて見えねーんだよ」
「あ、すみません……」

「ハァ!?もっと誠意見せて謝れよ!!」



……………うわ、めんどくさい。








「すみませんでした………」
「舐めてんのかテメェッ!!!」




一応ちゃんと謝ったつもりだったんだけど………駄目らしい。


早く教室戻りたいんだけど………





「……すみません、友達待たせてるので行きますね」
「オォイ!!!逃げんなァァァ」

「ッ……!」



鼓膜破れる………





困っていた、その時。






「……わあ!」




また……誰かに、今度は手首を掴まれた。



「……真冬!」


やっぱりそれは真冬で、



「………授業」



すごい力で教室の方に引っ張られた。



「!おいてめぇ逃げんな……、ッひ………」



怒鳴った生徒が、何かを見て怯む。

生徒の目線の先は真冬。




すごい形相で………生徒を睨んでいた。








ーーー




「ごめん、助かった………」
「………」


教室に着いた途端に手が離れて、袖越しでも握られていた手首が少し赤くなっていた。



(びっくりしたー………こんな強い力で引っ張られたの初めてかも)



「………李世」
「ん?」  




今日はボソボソではあるけどよく喋ってくれるなー、なんて呑気に思いながら真冬を見た。






「………いなくならない、で」








……………………








「分かった!」



いつもと同じように、媚び売りの笑顔を向けた。





ーーー



……ああ、楽しい。


ほんと……最近楽しいなぁ。




(予想以上だよ、真冬)





真冬がなかなか素直になってくれないから、素直になってくれるように少しコントロールしてみたんだけど、



予想以上に素直になってくれたなぁ…………






……あ、コントロールって何したか、気になる?



別にそんなに難しいことではないんだけど…………、





とりあえずボクは真冬の気持ちを利用させてもらった。


真冬が未来斗先輩よりボクの方が好きだってバレバレだから分かってたし、真冬みたいな人間ってどうしても依存しないと生きていけないから、ボクがいないと駄目だって事も分かってたし、利用した。



散々甘やかして優しくして、ボクも真冬の事が好きだって勘違いさせて、




そこでボクが「真冬の事嫌い」って言えば、真冬は嫌でもボクに気に入られるために無意識に努力する。




そしてボクは、貰ったものだけ同じ量返してあげる。



真冬から貰った愛情…?みたいなやつも、ちゃんと返してあげてるつもりだし。



真冬はそれを知ったら勿論焦ると思う。だって「あげ尽くしたらもう二度とかえってこない」から。



そうなったらもう…………変な意地なんか関係なく、ボクに与え続けなきゃいけない。



そしてやっとこの前、それが出来た。




真冬は無意識にボクを満たしてくれるようになった。それが思っていたよりもすごくて………最近はボクも満たされてて、楽しい。




(ねぇ……あとどれくらいくれる?何日ボクを満たしてくれるの?)




満たしてくれた分ちゃんと返してあげるからさ、








そんなすぐ、終わらないでね?













ーーーーー


李(主導権持ち)←←←←←←真





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